婚姻届をしていない内縁のパートナーは、民法上の配偶者として法定相続人にはなりません。
財産を残すには遺言、生命保険、死因贈与などを生前に設計します。住居が被相続人所有か賃借か、相続人がいるかで居住保護の根拠は変わります。
内縁の配偶者に法定相続権はない
民法739条は婚姻が届出により効力を生ずると定め、同法890条の「配偶者」は法律婚の配偶者を指します。共同生活の長さだけで法定相続人になるわけではありません。
内縁解消を死亡による場合まで離婚時の財産分与と同様に扱い、遺産を分配することについても、最高裁第一小法廷平成12年3月10日決定(民集54巻3号1040頁)は財産分与規定の類推適用を否定しています。
財産を残す方法は遺言・保険・死因贈与
代表的な手段は、公正証書遺言による遺贈、受取人を指定した生命保険、死因贈与です。遺言を作る場合は、法律婚の配偶者や子などの遺留分、遺言執行者、受遺者が先に死亡した場合の予備条項も確認します。
生命保険金は契約内容が重要です。最高裁第三小法廷昭和40年2月2日判決(民集19巻1号1頁)は、第三者のためにする生命保険契約の受取人が、契約の効力発生と同時に、被保険者死亡を条件とする自己固有の保険金請求権を取得するとしました。もっとも、国税庁の案内のとおり、保険料負担者・被保険者・受取人の組合せで、相続税、所得税、贈与税のいずれが課されるかは変わります。
相続人が受け取る保険金について、最高裁第二小法廷平成16年10月29日決定(民集58巻7号1979頁)は原則として特別受益ではないとしつつ、共同相続人間の不公平が到底是認できないほど著しい特段の事情があれば、民法903条を類推適用して持戻しの対象となり得るとしました。これは内縁の受取人一般を直接扱った判例ではありません。
居住保護は所有建物と賃借建物で違う
被相続人が所有する建物
所有権は相続人へ移るのが原則です。最高裁第三小法廷昭和39年10月13日判決(民集18巻8号1578頁)は、具体的な経緯や双方の事情のもとで、相続人から内縁の妻への明渡請求を権利濫用として認めませんでした。内縁の配偶者に一般的・永久的な居住権を与えた判決ではなく、個別事情に基づく判断です。
被相続人が賃借する建物
相続人がいる場合、賃借権は相続人が承継します。最高裁第三小法廷昭和42年2月21日判決(昭和40年(オ)1435号、民集21巻1号155頁)は、内縁の妻が相続人の賃借権を援用して賃貸人に居住を主張できるとしましたが、内縁の妻自身が共同賃借人になるとはしていません。
相続人がいない場合は、借地借家法36条により、事実上の夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者が、建物賃借人の権利義務を承継する場合があります。場面を混同せず、賃貸借契約と相続人の有無を確認します。
特別縁故者と相続税の注意
法定相続人がいない場合には、内縁のパートナーが特別縁故者として財産分与を申し立てられる可能性があります。ただし、自動取得ではなく、民法958条の2に基づく家庭裁判所の判断が必要です。
相続税基本通達19の2-2は、内縁関係にある人が配偶者の税額軽減の対象外であることを明記しています。また相続人以外が取得する死亡保険金には、死亡保険金の非課税限度額が適用されません。遺言作成時に納税資金まで確認してください。
公正証書遺言は作り方と証人の要件、相続人がいない場合は清算人と特別縁故者の流れも参照してください。
よくある質問
長期間同居していれば内縁の配偶者も相続人になりますか
なりません。民法890条の配偶者は婚姻届をした法律婚の配偶者であり、同居期間だけで法定相続権は生じません。
遺言があれば全財産を内縁のパートナーへ残せますか
遺贈は可能ですが、法律婚の配偶者や子などに遺留分がある場合は侵害額請求の可能性を検討します。
内縁のパートナーを生命保険金受取人にすれば遺産分割は不要ですか
契約上の受取人が固有の請求権を持つのが原則ですが、指定できる範囲は保険会社の取扱いを確認し、税務も別に検討します。
内縁のパートナーは住み続けられますか
建物が所有か賃借か、相続人の有無、契約関係、これまでの経緯で異なります。判例上の保護は個別事情に依存し、一般的な永久居住権ではありません。
※本記事は一般的な情報提供です。内縁関係、居住権、保険契約、遺留分、税務の結論は個別事情で変わるため、契約資料をそろえて弁護士・税理士等へ確認してください。



