賃貸を使う相続対策。評価・経営・納税資金を確認

賃貸を使う相続対策|土地・建物の評価と経営・納税資金の確認

賃貸不動産を相続対策に使うなら、税の評価額が下がる可能性と、経営を引き継ぐ負担を、一緒に確かめる。

税が減っても、空室、修繕、返済で現金が減れば、家族が引き継ぎやすくなるとは限らない。

架空の家族で考えよう。信夫は、所有地へアパートを建てる提案を受けた。相続税の評価を抑えられると聞き、関心を持っている。

妻の洋子は、老後資金の減少が心配だ。長女の真理は遠方に住み、次男の亮は、自分だけが管理を引き受けるのかと迷っていた。

信夫家は、まず評価の仕組みを調べ、その後に家賃収入、費用、借入れ、受け取る人を比べることにした。

建てると決めてから、節税の説明を後付けしないようにしよう。

土地の利用による制約を反映した評価と、実際の売買価格・家賃収入は別である。 賃貸マンションの相続税評価|貸家建付地・空室・特例の計算で詳しく確認できる。

建物の評価額と、建築に出す自己資金・借入額は、別の数字だ。土地と建物の評価を、それぞれ確かめよう。

空室についても、税の評価でどう扱うかと、毎月の家賃が入らない資金不足を、分けて確かめる。

賃貸を始める前に、購入・建築・借入れをしない案とも比べよう。

評価の減額、経営の収支、納税・代償金に使える現金を、別々に試算する。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。

貸付用の特例には、条件がある

敷地が「貸付事業用宅地等」に当てはまれば、小規模宅地等の特例で、200平方メートルまで、相続税へ算入する価額を50%減らせる。

ただし、相続・遺贈で取得したか、使い方、取得した親族が事業を引き継いで続けること、申告期限までの保有等、条件を確かめる必要がある。

相続開始前3年以内に、新たに貸付事業へ使った宅地等は、原則として対象外だ。

ただし、故人等が、相続開始まで3年を超えて続けた「特定貸付事業」に使ったもの等には例外がある。特定貸付事業は、相当の対価を得て継続するだけの準事業を除いた貸付事業をいう。

建てて3年待てば必ず使える、直前なら必ず使えない、という決め方はしないようにしよう。

自宅の「特定居住用宅地等」は、330平方メートルまで80%減額だ。ただし、貸付用と一緒に使う場合は、所定の面積調整がある。

自宅330平方メートルと賃貸敷地200平方メートルのすべてへ、無条件にそれぞれの減額を使えるわけではない。

特例には、原則として対象財産の分割と、相続税の申告が必要だ。特例を使って初めて税額がゼロになる場合も、申告を確かめよう。

誰が土地を取得し、誰が貸付事業を続けるかを、分割案を考える段階から決めていく。

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借金の控除と、返済を分けて考える

建設ローン等は、故人が亡くなったときに存在する、確実と認められる故人の債務かを調べる。債務は、借金等、支払わなければならない義務だ。

条件を満たせば、相続税の計算で債務控除を考える。ただし、土地の路線価や建物の評価額自体を、引き下げる計算ではない。

借入れで税の計算が変わっても、元金・利息の返済は別に残る。契約、名義、担保、保証、返済条件、保険の有無を確かめよう。

家族だけで返済する人を決めても、貸主等の債権者との関係が、自動で変わるわけではない。

収支表には、家賃総額だけでなく、空室、管理費、固定資産税、保険、修繕、借入返済を入れる。

所得税で計算する所得と、実際に残る現金も違う。元金返済と、建物等の価値を使用期間に応じて費用とする減価償却費の違いも、確かめよう。

信夫家の年間家賃を600万円、現金で払う運営費を180万円、元金・利息の返済を300万円と仮定する。所得税等や大型修繕を入れる前の、現金差額は120万円だ。

家賃が2割減り、ほかの支出は同じなら、その120万円がなくなる。所得税額を計算した例ではない。

家賃が減ると、残る現金はどう変わるか

信夫家の仮定で、家賃以外の支出を同じにして比べる。

家賃が年間600万円なら

家賃 600万円
− 運営費 180万円
− 元金・利息返済 300万円

↓ 現金の差額
120万円

家賃が2割減ったら

家賃 480万円
− 運営費 180万円
− 元金・利息返済 300万円

↓ 現金の差額
0円

所得税等や大型修繕を入れる前の差額だ。所得税の所得や税額、自由に使える最終的な現金を示すものではない。

管理・分割・次の相続も比べる

亮が物件を受け取り、真理へ代償金を払う案、売って現金を分ける案、共有する案では、必要な現金と、その後の役割が違う。

共有でも、管理、変更、処分の内容によって、必要な合意が変わる。何でも一人で決められるわけではない。

共有にするなら、家賃、費用、修繕、意思決定、将来の売却についても検討する。「管理は亮、収入は半分」という言葉だけで、負担と精算が決まったとはいえない。

洋子へ集める案なら、配偶者の税額軽減だけで決めないようにしよう。洋子が既に持つ財産、今後の家賃と生活費、次の相続の家族構成も比べる。

最初の相続で税が少ない案が、次の相続まで含めて、最も実行しやすいとは限らない。

信夫は、建築前に、家族の希望を確かめることにした。真理は売却の選択肢、亮は管理を外部へ任せる費用を知りたいという。

事業を続ける意思を確かめず、評価額だけで将来の管理者を決めないようにしよう。

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実行前に、三つの試算を並べる

  1. 建てない・購入しない場合を含む、財産全体と相続税の試算。
  2. 空室や修繕を増やした場合を含む、経営の現金収支。
  3. 受け取る人、代償金、納税資金と将来の管理を含む、家族の分割案。

相続が起きた後は、通常、故人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内の、申告・納付に備える。

分割が終わらなくても、期限は自動で延びない。未分割での申告と納付、分割見込書、分割後に税を払い過ぎていれば更正の請求等の手続を確かめよう。

信夫家は、税の試算、収支表、家族の希望を見てから、建築が必要かを判断することにした。

賃貸を使うかは、減額率だけで決めるものではない。暮らしに使える現金と、引き継ぐ人が続けられる運営まで、確かめて進めよう。

評価の式と空室の取扱いは国税庁No.4614、特例はNo.4124で確認できる。

ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

あわせて確認できる説明

よくある質問

アパートを建てれば相続税は必ず下がるか

一律には決まらない。実際の土地・家屋評価、貸付状況、他の財産や債務、特例等を含めて比較する。経営の収支も別に確認する。

分割が終わっていなければ申告できないか

未分割でも法定相続分等に基づく申告・納付を検討する。通常の期限は自動的には延びず、特例の後日適用には決められた手続が必要になる。

複数の相続人で物件を分けられるか

共有、代償分割(一人が家などを受け取り、ほかの相続人へ調整のお金を払う分け方)、売却して分ける方法等を検討する。管理や将来の処分に必要な合意、代償金と税金も比較する。

ローンは相続税から控除できるか

亡くなった時に存在する確実な債務かなど、債務控除の条件を確認する。借入金を税額から直接差し引く制度ではなく、返済義務も別に検討する。

早く貸し始めれば特例を使えるか

貸付開始時期だけでは決まらない。3年以内貸付宅地等の除外と例外、事業の引継ぎ・継続、保有、分割と申告等の条件を確認する。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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