複数の人が亡くなり、誰が先だったか明らかでないときは、同時に死亡したと推定する。この場合、その人たちの間では互いに相続しない。同じ日に亡くなったら必ずこの扱いになる、という意味ではない。
事故で父の修と長男の健が亡くなり、長女の美咲と健の娘の結が残されたとする。母はすでに亡く、健に配偶者はいない。「兄が父の財産を受け取ってから結に渡るのか」。美咲は、死亡の順序が分からない場合の考え方を調べることになった。
同じ日かどうかより、前後が明らかかを見る
民法32条の2は、数人が死亡し、一人が他の人の死亡後になお生存していたことが明らかでないときに、同時死亡と推定する。事故の場所や死亡日が同じかだけで決める制度ではない。
死亡診断書や死体検案書、事故・救急の資料などから前後関係が明らかなら、短い時間差でも順番に相続が始まる。反対に順序が分からない場合、推測だけで「年長だから先」「発見された順」として手続を進めない。
これは証拠がない状況でも、財産の帰属を決めるための規則である。推定なので、死亡の前後が明らかになる証拠が出れば結論が変わり得る。死亡の記録と戸籍の記載をそろえ、必要に応じて専門家と確認する。
父と子が同時死亡でも、孫の代襲相続はあり得る
修と健が同時死亡と推定されるなら、健がいったん修の財産を相続し、その分が健の遺産に入るという順番にはならない。ただし、健の子の結が、健に代わる代襲相続人になることはあり得る。
この例でほかに子や配偶者等がおらず、放棄等もないとすると、修の相続人は美咲と結となる。法定相続分はそれぞれ2分の1だ。修の遺産を6,000万円と仮定すると、法定相続分を基にする額は各3,000万円になる。実際の取得は遺言や分割等も確かめる。
一方、健自身が生前持っていた財産についても別の相続が起きる。修の財産と健の財産を足して一つの遺産分割にするわけではない。誰の財産を扱う書類かを最初に分けたい。
夫婦が同時死亡した場合は、それぞれの相続人を調べる
夫婦が同時死亡なら、夫が妻を、妻が夫を互いに相続する扱いにはならない。夫の遺産についての相続人、妻の遺産についての相続人を、それぞれ確認する。子がいない夫婦では、各人の父母や兄弟姉妹等の確認が必要になることがある。
夫婦で財産の額が違う場合や、片方だけに前婚の子がいる場合などは、死亡の前後によって最終的な取得者や割合が変わり得る。共有名義の家なら、それぞれの持分を各人の遺産として確認する。
「夫婦の財産だから、残った親族で半分ずつ」とまとめない。名義、資金の出どころ、持分、各人の相続関係を分けて図にすると、確認すべき資料が見えやすくなる。
遺言と保険は、別に条件を確かめる
遺言に「配偶者へすべて相続させる」とあっても、その配偶者が同時死亡となる場面の財産の行き先まで、当然に決まるとは限らない。先に、または同時に亡くなった場合の次の取得者を決める予備的な遺言が備えになる。
死亡保険金も、受取人の指定、被保険者との死亡の順序、約款を確認する必要がある。民法上の遺産分割の割合だけで、保険会社に請求する人を決めない。相続税の申告も、各人の相続について資料を分けて確認する。
美咲は、修と健の財産一覧を二つ作り、死亡の資料と家族関係を並べた。結が修の財産を取得する根拠は「健からもらうから」なのか「修を代襲相続するから」なのかを、同じ言葉で済ませず説明できるようにする。
関連する手続は、法定相続人の範囲と順位|配偶者・子・親・兄弟姉妹・代襲相続からも確認できる。
よくある質問
同じ日に亡くなれば同時死亡か
同じ日かだけでは決まらない。一人が他の人の死亡後に生存していたことが明らかかを確認する。
同時死亡なら孫は祖父の財産を受け取れないか
孫の代襲相続が成立する場合がある。同時死亡した親子間での相続と、孫の代襲相続は区別する。
後から順序が分かれば変わるか
同時死亡は推定であり、前後関係を示す証拠によって扱いが変わり得る。手続済みなら影響を個別に確認する。
確認に使える資料
2026年10月21日時点の一般的な説明である。登場人物と金額は説明用の架空の例で、実際の相談事例ではない。具体的な判断は資料と事情を確認して行う。



