相続財産の分け方4種類|現物・代償・換価・共有を比較

相続財産の分け方4種類|現物・代償・換価・共有を比較

分け方には、現物・代償・換価・共有の四つがあり、組み合わせることもできる。家と預金の両方を、全員が同じ割合で持つ必要はない。

以下は、四つの方法を比べる、架空のきょうだいの話だ。人物・金額は、説明のための仮定である。

父の財産を並べた長女の美咲は、実家の価額と預金残高を見て、三人で同じ額を取る案を考えた。弟の航は実家で暮らし続けたい。妹の恵は住む予定がなく、教育費に使える現金を希望している。母はすでに亡く、相続人はこの三人だけだ。

遺産分割は、引き継いだ財産を誰が取得するか、具体的に決める手続だ。財産の利用と権利を整理するために行う。

三人は「三等分」と決める前に、遺言、相続人、財産と債務、価額、各自の希望を、同じ資料で確かめることにした。債務は、借金等、支払いなどをしなければならない義務をいう。

同じ取り分でも、分ける形は違う

「公平に分けたい」と思っても、何を公平と考えるかは、人によって違う。

さらに、家と現金では、分けられる形も違う。先に、財産の種類と利用の希望を調べよう。

民法906条は、遺産の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身状態・生活状況その他一切の事情を考慮して分割すると定めている。法定相続分(法律で決められた相続の割合)は相続人の取り分の基準になるが、個々の財産を必ずその割合で切り分けなければならないわけではない。907条に基づく協議は相続人全員で行う。

つまり、全員が合意できれば、財産の性質や各人の事情に応じた分け方を選べる。その選択肢が、現物・代償・換価・共有の四つだ。

四つの方法を並べて見る

方法 向く場面 主な確認
現物 財産の種類・価値を調整できる 評価差、取得後の利用、特別受益・寄与分・遺留分等の調整
代償 不動産・事業資産を集約したい 代償金を払うためのお金、評価、税務
換価 現物利用者がいない、金銭で分けたい 売却条件、費用、譲渡所得
共有 当面は共同保有が必要 管理・売却・費用・解消方法

現物分割:財産をそのまま分ける

家は配偶者、預金は子、株式は事業を継ぐ人、というように、財産をそのまま取得するのが現物分割だ。

土地を分筆し、各人が別の土地として取得する方法も含む。分筆は、一つの土地を、登記上いくつかに分けることだ。

ただし、財産の種類が違うと、価額がそろわないことがある。家一棟と預金500万円が同じ価値かは、評価を確かめなければ分からない。

特別受益や寄与分があれば、取り分の調整も調べる。特別受益は、遺贈や一定の生前贈与等の特別な利益、寄与分は、故人の財産を維持・増加させた特別の貢献に応じた取り分だ。遺留分との関係も確かめよう。

「財産をそのまま渡す」という単純さの裏に、評価の差をどう処理するかという問いが残る。その差を誰かが飲み込む形で合意するのか、別の財産で埋めるのか。現物分割を選ぶ前に、その答えを出しておく必要がある。

実家2,400万円と預金1,200万円、合計3,600万円を、分割時の価額としよう。遺言・債務・受益・寄与等の調整はなく、三人とも1,200万円を取ることを目指す例だ。

航が家を取り、美咲と恵が預金600万円ずつを取るだけでは、航2,400万円、美咲600万円、恵600万円となる。同額にはならない。

別の土地等を割り当てられるなら現物で調整する余地があるが、この例にはない。評価の目的と時点をそろえてから、不足分を代償金(遺産を多く受け取る人から、ほかの相続人へ渡す調整のお金)で補うか、売却するかを比べる。相続税評価額と分割時の価額は、同じ数字とは限らない。

代償分割:多く取る人が現金で調整

不動産や非上場株式(証券取引所に上場していない会社の株式)を一人が取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法だ。事業用資産を分散させたくない場合や、配偶者が自宅に住み続けたい場合によく使われる。

先に、家等を取る人が、代償金を払えるかを確かめよう。評価額が高くても、手元に現金があるとは限らない。

支払期限、分割払いにするか、担保を付けるかを決め、協議書に残す。取得を決めてから「払えない」とならないよう、資金の見込みを調べる。

税務面では、相続税の課税価格の計算について国税庁No.4173を確認する。協議書には代償分割であることを明記する必要がある。代償金の評価基準日と評価資料も協議書に残しておく。詳しい税務の扱いは代償分割の相続税・譲渡所得も参照してほしい。

この例なら、航が家、美咲と恵が預金600万円ずつを取る。その上で、航が自己資金から、二人へ600万円ずつ払う案がある。

航の差引きの取得も1,200万円となるが、別に合計1,200万円を払うお金が要る。家の価額は、そのまま支払いに使える現金ではない。

家を残す案と、必要な支払資金

本文の仮定。相続人は美咲・航・恵の三人だけ。実家2,400万円、預金1,200万円で、遺言・債務・受益・寄与等の調整はなく、各1,200万円を目指す例だ。

航:家を取って代償金を払う

家:2,400万円
自己資金から:1,200万円を支払う

差引きの取得 1,200万円

美咲・恵:それぞれ受け取る

遺産の預金:600万円
航からの代償金:600万円

一人あたり 1,200万円

航が用意する1,200万円は、遺産の預金をもう一度使う計算ではない。家の価額があっても払えるとは限らず、税・修理費、支払期日や担保等も確かめる。税額や売却後の手取りを示す図ではない。

航は自己資金と融資見込み、取得後の税・修理費も並べた。美咲と恵が分割払いを検討するなら、期日と遅延時の扱い、担保等を確認する。約束を守らなかったことだけで、成立した分割を一方的に解除し元へ戻せるとは考えない。

換価分割:売って代金を分ける

財産を売却し、売却代金から費用を精算して分ける方法だ。現物を誰かが使い続けるわけではない場合や、代償金を払うためのお金を用意できない場合に選ばれやすい。

売却前に、名義人、最低売却価格、引渡しの時期を決める。仲介手数料、登記費用、測量費、税等を誰が負担し、精算するかも確かめよう。

税の申告を担当する人も決めておく。「いくらで売れるか」だけを先に詰めると、代金を分ける段階で意見が分かれることがある。

税務では、相続した土地建物の取得費と取得時期の扱いを国税庁No.3270で確認する。売却益が出た場合、相続税額の一部を取得費に加算できる制度があり、No.3267で条件を確かめる。相続税だけで税負担が終わるわけではなく、譲渡所得税等が生じる場合がある。

実家が2,400万円で売れ、売却関係費用が150万円だったとしよう。預金1,200万円と合わせると、3,450万円が残り、三等分で各1,150万円となる。

ただし、税を引く前の仮計算だ。所得税等、転居費、各人固有の支出まで差し引いた最終手取りではない。費用150万円も例であり、一律の相場ではない。

恵に現金が必要な期日があっても、その日に売れるとは限らない。航の転居先、売出条件、売れない場合の見直し、代金の保管と分配を決める。売却担当者へ入金されたことと、三人への分配が終わったことも区別する。

共有分割:一緒に持ち、管理を決める

持分を定めて共同所有を続ける方法だ。代償金も売却もすぐには用意できない、という場面で選ばれることがある。

共有の持分を決めても、使い方や管理の条件まで決まるわけではない。

誰が住むか、貸すか、修理費や固定資産税をどう分担するかを決める。管理の決め方、持分の売却、共有物分割の手続、次の相続が起きた場合も考えよう。

共同利用などの目的がある共有も選択肢だが、結論を先送りするだけなら、後の売却や費用で再び意見が分かれ得る。共有を選ぶなら、運用と将来の解消方法・時期の見通しも残す。記載すれば紛争が必ずなくなるわけではない。

三人で家を共有するなら、航の居住、税・修理費の分担、報告、買取りを見直す時期も確かめる。

家全体の売却は原則として全員の同意が要る。一方、保存行為は一人ででき、管理は原則、持分の価格の過半数で決める。著しい変更等は条件が違う。

保存は財産の状態や権利を守る行為だ。何でも人数の多数決、または全員一致で決まるわけではない。

協議書に書き残すこと

どの方法を選んでも、合意の内容を協議書に残す。登記や金融機関の手続、後日の証明のために必要だ。書き残す項目は次の五点になる。

  • 財産の特定、評価基準日・評価資料
  • 受け取る人、売却担当、代償金、支払期限
  • 税金・登記・売却費用・収益の精算方法
  • 後から判明した財産・債務の扱い
  • 約束を守らなかった時の対応、必要な担保

代償分割の場合は代償分割であることを明記する。換価分割の場合は売却条件と費用負担の合意を書いておく。共有分割の場合は解消方法と時期の見通しを残しておく。

協議で合意できなければ、家裁の遺産分割調停・審判等を検討する。協議・調停・審判は決める手続で、現物・代償・換価・共有という財産の分け方とは別の区分だ。

相続税の申告・納税が必要なら、分割が終わらなくても、原則、相続が始まったと知った日の翌日から10か月以内に対応する。

相続登記の原則3年と、施行前の相続の経過措置も確かめる。特別受益・寄与分についても、10年経過後のルール、例外、経過措置がある。各期限は、亡くなった日等の事情に即して調べよう。

財産と資金を調べて、実行できる案を選ぶ

三人は、家を残すなら航が1,200万円を払えるか、売るなら航の住まいと税をどう見込むかを並べた。

方法の名前を決めるだけでは、実行できない。代償金の資金、売却名義、費用分担等を、具体的に確かめる必要がある。

方法を先に決めるのではなく、手元にある財産の一覧と評価額、各相続人の資金状況と利用希望、期限の確認を先に揃える。固定資産税の納税通知書、通帳の残高、登記事項証明書、株主名簿。これらを並べて初めて、どの方法が現実的かが見えてくる。

一人では整理しきれない場合や、評価の取り方や税務の扱いに迷いがある場合は、手元の資料と現在の状況を専門家に伝えることで、判断の材料が揃いやすくなる。

三人はまだ方法を決めていないが、誰が何を希望し、どの額と資料が未確認かを残せた。美咲が一覧を更新し、航が資金見込みを確認し、恵が必要な時期を伝える。方法の名前だけで結論を出さず、各人が実行できる案へ具体化していく。

ほかにも確認する手続がある場合は、遺産分割・調停・紛争の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

各財産を法定相続分の割合で分ける必要があるか

取り分の基準と財産の分け方は別に考える。全員の合意により、取得する財産と代償金を組み合わせることができる。

代償分割なら現金の準備は後でよいか

代償金と税金を支払える見込みを先に確かめる。金額、期限、分割払や担保、約束を守らなかった時の扱いを協議書に残す。

共有にすれば問題を解決できるか

持分を決めても利用、費用、売却と次の相続の問題は残る。運用と解消の方法まで検討する。

換価分割では相続税だけ払えばよいか

売却益があれば譲渡所得税なども問題になる。亡くなった人の取得費・取得時期、売却費用、取得費加算の条件を確認する。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

TOP

電話でお問い合わせ LINEで簡単お問い合わせ