未成年の相続人がいても、必ず特別代理人が必要になるわけではない。親と子、子同士で取り分等が対立する「利益相反」に当たるかを確かめる。
必要な場合は、家庭裁判所へ、子のための特別代理人を選ぶ申立てをする。
架空の家族で考えよう。夫が亡くなり、幸子は14歳の優介と10歳の晴斗と暮らしている。幸子は家を自分の名義にして、子には預金を分けたい。
銀行から協議書の準備を求められたが、自分が子二人の分も署名してよいのかと、手が止まった。
子が自分で判断できない間も、利害の対立から子の利益を守るための制度だ。
幸子が子のためを思っていても、自分の取り分を決めながら、子二人の分まで同時に代表できるとは限らない。誰がどの立場で話合いへ参加するかを、先に整理しよう。
協議の時の年齢と、親権者を確認
民法4条では、18歳で成年となる。亡くなった時だけでなく、協議や申請をする時の年齢も確かめる。
相続が始まった時は17歳でも、協議の時には成年なら、未成年の子の代理と同じ扱いで進めるわけではない。
子の財産の管理や、財産に関わる法律行為では、親権を行う人が代表するのが基本だ。ただし、利益相反なら民法826条の特別代理人が問題になる。
誰が親権を行うか、後見人はいるか、親権に関する審判等はないかも、資料で確かめよう。
幸子は、夫の出生から死亡までの戸籍、自分と子の関係、他の相続人の有無を確認する。家族が三人だと思っていても、協議に参加すべき人が全員かは別に調べる。確認の土台は法定相続人(法律で相続人になると決められた人)の範囲と照らし合わせる。
親子で分ける時は、利益相反に注意
幸子、優介、晴斗が同じ遺産を分けるなら、母の取り分が増えると、子の取り分は減る関係にある。
親に悪意があるかではなく、その行為自体から、利害が対立するかを判断する。親子が仲良くても、この問題は残る。
裁判所も、同じ人の遺産を相続する母と未成年の子が、遺産分割をする場合を例に挙げている。
特別代理人は、家庭裁判所が選び、審判で決めた行為の範囲で子を代理する。親が親族へ口頭で頼んだだけの代理とは違う。
例えば祖父の相続で、父が先に亡くなり、未成年の子一人が、父に代わって相続する場合を考えよう。母自身は相続人でなく、子との利益相反もなければ、母が親権者として代表できる場合がある。
未成年の相続なら、親は原則何もできない、という説明では広すぎる。
子二人の利益も、別々に確かめる
一人の親が子二人の分を代表して分けると、一方の子が多く取れば、もう一方は少なくなる。
民法826条2項は、同じ親が親権を行う、子同士の利益相反も対象にする。
| 例 | 代理の確認点 |
|---|---|
| 幸子も子二人も相続人 | 親子間と子間の利益相反を確認し、各子について適切な代理人を確保する。 |
| 母は相続人でなく、子一人だけが代襲 | 他の利益相反がなければ、母が親権者として代表できる場合がある。 |
| 母は相続人でなく、子二人が代襲 | 母が一方を代表しても、他方には特別代理人を選任するなどの対応を確認する。 |
未成年の子の人数と、特別代理人の人数が、いつも同じとは決めつけない。
誰が相続人か、誰が親権を行うか、何の行為かを整理する。幸子の例では、子二人の利益をそれぞれ適切に代表できる人を、具体的な協議案とともに考えよう。
子の取り分と、支払える資金を示す
対象の財産と評価、法律で決められた割合、実際の取得額を示す協議書案を作る。
子の取り分を極端に減らしても、将来面倒を見ると説明すれば埋め合わせになる、とは考えない。
夫の遺産を家3,600万円と預金2,400万円の計6,000万円、相続人を幸子と子二人とする。遺言、借金等、特別受益等の調整はないと仮定する。
家の価額は3,600万円。
法律上の割合による目安は3,000万円。家は600万円上回る。
受け取る預金は、各1,200万円とする案だ。
目安の各1,500万円まで、一人300万円ずつ足りない。
幸子が自己資金から、子へ各300万円、計600万円の調整のお金を払う等の案を考える。これを「代償金」という。
裁判所がこの案を認めると決めた例ではない。子の利益、支払時期と実現できる資金を示す。家の価額や税の評価は、そのまま使える現金ではない。
代償金は、いつ、どの方法と資金で払うかを考える。家を持ち続ける維持費も必要だ。
相続税の評価額と税額は別に計算する。家族が合意した価額だけで、税まで決めない。
子の住所地の家裁へ申し立て
親権者や利害関係人が、子の住所地の家庭裁判所へ申し立てる。
検認や相続放棄等で使う、故人の最後の住所地という基準と混同しない。
- 申立書
- 未成年者と親権者等の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
- 協議書案など、利益相反に関する資料
- 利害関係人が申し立てる場合、その関係を示す資料
裁判所から追加の資料を求められる場合もある。候補者の戸籍だけで足りると決めず、公式の必要書類に沿ってそろえよう。
入手できない戸籍等は、申立ての後に追加で出せるか、申立先へ相談する。
候補者に、特定の資格が一律に必要なわけではない。裁判所が、子との関係、利害関係、仕事を適切に行えるかを判断する。
祖父母やおじ・おばを挙げても、必ず選ばれるとは限らない。今回の分割に利害を持つ人を、形だけの第三者として扱わない。
印紙代と、依頼費用を分ける
収入印紙は子一人につき800円で、連絡用の郵便料等は別だ。子二人にそれぞれ申立てが必要な例では、印紙は計1,600円となる。
専門家へ頼む費用、資料の取得費、郵送費等は含まれない。
必ず何週間で終わる、子二人なら手間は二倍、とも決めつけない。足りない資料、候補者や協議案、裁判所の審理で日程は変わる。
申告・納税や登記の期限から逆算し、申立先で今の見込みを確かめよう。
幸子は、申立て、資料の追加、選任の確認、協議、銀行と登記の実行を順に並べた。
申立費用と、子の取り分となる各1,500万円等、納税額を、別々の欄で管理することにした。
審判で決めた範囲で、正式に協議
特別代理人が代理できるのは、家庭裁判所の審判で決められた行為だ。
選ばれたからといって、子の財産全部を自由に管理したり、別の契約まで結んだりできるわけではない。その行為が終われば、任務も終わる。
協議書案から配分や条件を大きく変えるなら、審判で決めた代理の範囲に合うかを確かめる。
申立てのための案と、正式に成立した合意は違う。適切な当事者と代理人で手続を行おう。
幸子は、協議後の預金が子ごとの口座へ入ったか、登記の名義と持分が合意どおりかを確認する。署名がそろっただけで実行を終えず、子の取得が分かる資料を残す。戸籍の準備は相続人調査の方法も参照できる。
相続放棄の代理と期限は、別に確認
分割で何も受け取らないことと、家庭裁判所で相続放棄することは違う。借金も含めて引き受けない必要があれば、放棄が必要かと、原則3か月の判断期間を確かめる。
未成年の子は、民法917条により、法定代理人がその子のために相続が始まったと知った時を基に、期間を考える。
裁判所は、相続人の母が子だけを放棄させる場合や、一部の子だけの放棄を代理する場合も、利益相反の例に挙げている。
特別代理人が必要かを調べるのであって、親が相続を受け入れたら、子は絶対に放棄できない、という意味ではない。
母自身も放棄するか、子全員が同じ選択か、どの順に手続するかを伝えて相談しよう。
調査が終わらなければ、期間内に、期間を延ばす申立ても考える。子の財産を売ったり使ったりする前に、その行為が放棄へどう影響するかを確かめる。
協議の準備中も、申告期限を確認
相続税の申告が必要なら、分けていなくても期限は自動的に延びない。子の代理と日程を調整し、誰の申告か、いつから期間を数えるか、何で納めるかを確かめよう。
未分割の税の計算と、配偶者の軽減や小規模宅地等の特例を、最初の申告で使えるかは、別に判断する。
後から分けて特例を考えるなら、分割見込書、分ける時期、更正の請求等の条件を調べる。
幸子は、家を受け取りたい希望、納税のお金、子の取り分を、一つの数字で済ませないことにした。それぞれの手続を並行して進めよう。
確認に使える公的資料
ほかにも確認する手続がある場合は、遺産分割・調停・紛争の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
未成年者がいると必ず特別代理人が必要か
利益相反の有無で確認する。親も子も相続人の分割や、子同士で利益相反となる場合と、相反しない代理を区別する。
誰を特別代理人の候補にできるか
特定の資格が一律に必要なわけではないが、子との関係や利害関係、職務の適性を裁判所が判断する。候補者が必ず選ばれるとは限らない。
なぜ協議書案を用意するのか
親と子、子同士の利害の対立と、子の取り分を示すためだ。どの財産を、いくらで評価し、誰がいくら受け取るか、調整のお金を本当に払えるか等を明らかにする。
子二人なら必ず代理人も二人か
親自身の相続人資格と、子間の利益相反、誰が何を代理するかで異なる。人数だけで決めず、具体的な協議の関係を確認する。
親が承認すると子は相続放棄できないか
放棄自体が一律に禁止されるわけではない。親が子だけを放棄させる場合等は利益相反となるため、特別代理人と子の熟慮期間を確認する。
本記事は一般的な情報である。具体的な代理、協議、放棄、税務は、年齢、親権、相続関係、財産等を確認して判断する。



