借地権の相続税評価|借地権割合・定期借地権・使用貸借

借地権の相続税評価|借地権割合・定期借地権・使用貸借

借地権の相続税評価は、亡くなった人が持っていた権利の種類と契約の実態を確認してから計算する。普通借地権、定期借地権等、一時使用目的、使用貸借で取扱いが違う。

架空の家族で考えよう。父を亡くした圭介は、父名義の家を引き継ぎたい。敷地は、他人の所有だった。

妹の沙織は、土地を持っていないなら、その部分の相続税はないのではと考える。母の静子は、借地権の値段より、今までどおり住めるかが心配だ。

契約書の表題は「土地賃貸借契約書」だった。ただし、その名前だけでは、税の計算方法まで決まらない。

期間、更新、権利金、地代、土地・建物の所有者と使い方を調べる。税の評価と、住み続ける条件は、分けて確かめることにした。

計算式を選ぶ前に、契約書のどこを見るか

国税庁「借地権の評価」は、旧借地法・借地借家法上の普通借地権と、定期借地権、事業用定期借地権等、建物譲渡特約付借地権、一時使用目的の借地権を区分している。名称が似ていても、終了方法・更新の有無・残存期間の扱いがそれぞれ異なる。

確認する項目を先に並べる。

  • 契約の種類(普通借地権か定期借地権等か、一時使用目的か)
  • 権利金・保証金の授受の有無と金額
  • 地代の水準(固定資産税相当額以下か、相当の地代か)
  • 更新の定めと実際の更新履歴
  • 無償返還の合意・届出の有無
  • 課税時期(亡くなった日)における残存期間
  • 土地・建物の登記と実際の利用状況

先に計算式だけ決めると、後で種類の判定から、やり直すことになる。

契約書、更新契約書、覚書、地代台帳、権利金・保証金の支払記録を集めよう。無償返還の届出、定期借地権等の設定日・終了日の資料も、手元へ並べる。

普通借地権:自用地価額に借地権割合を掛ける

普通借地権の価額は、原則として、次の式で求める(財産評価基本通達27)。自用地価額は、自分で使う土地としての税の評価額だ。

借地権の目的となる宅地の自用地価額 × 借地権割合

自用地価額は、路線価方式または倍率方式で計算する。路線価方式では、路線価に地積を掛けるだけでなく、奥行・不整形・間口・角地といった補正を反映した後の数字が自用地価額になる。路線価に割合を掛ける前に、この計算を先に済ませる。土地の評価手順は相続税の不動産評価も参照してほしい。

借地権割合は、相続等の年分の、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べる。路線価図の記号は、A90%、B80%、C70%、D60%、E50%、F40%、G30%だ。倍率地域は、評価倍率表を確かめる。

これは、売却価格の割引率ではない。相続税の評価のために、地域ごとに定める数値だ。

普通借地権でも、相当の地代を払っている場合や、無償返還の届出がある場合は、この式をそのまま使えないことがある。

契約と支払いの実態を確かめてから、計算方法を選ぼう。

評価額と、使える現金を分ける

父の権利は普通借地権で、相当の地代等の特殊な扱いはないとする。補正後の自用地価額6,000万円、借地権割合60%という、説明用の仮定だ。

借地権の価額は、6,000万円×60%=3,600万円となる。父の建物や預金等は、別に評価して合わせる。

土地の所有権がなくても、借地権という財産が課税対象になる。ただし、評価額3,600万円が、手元の預金や、実際に売れる価格になるわけではない。

母の住まいとして持ち続けるなら、納税や、沙織への代償金に使える現金も、別に確かめる。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。

沙織は、父の財産には、土地を借りて使う権利があったと分かった。

圭介も、税の評価額を出すことと、家族が住む権利や契約の手続を調べることは、別の作業だと確かめた。

借地権の評価額は、手元の現金ではない

本文の普通借地権の仮定例。相当の地代等の特殊な扱いはない。

税の評価を計算する

補正後の自用地価額
6,000万円
× 借地権割合 60%
↓
借地権の評価額
3,600万円

家族の暮らしも確かめる

静子が住み続ける条件
+ 納税に使える現金
+ 沙織との分割・代償金

評価額が、そのまま預金や売却価格になるわけではない。

父の建物・預金等の評価は別だ。定期借地権や使用貸借等へ、この60%をそのまま使わない。

定期借地権等は、別の方法で評価する

「定期借地権」と書かれていても、評価額がゼロに近いとは限らない。反対に、普通借地権と同じ割合で計算できるとも限らない。

定期借地権等は、原則として、課税時期に借り手へ帰属する経済的利益と、権利が続く期間を基に評価する(財産評価基本通達27-2)。相続の場合の課税時期は、故人が亡くなった日だ。

課税上の弊害がない等の条件を満たせば、別の所定の方法も使える。設定時の経済的利益、土地の通常の取引価額、設定期間、残る期間を使う方法だ。

その計算には、基準年利率による「複利年金現価率」という係数を使う。普通借地権割合を、そのまま掛ける計算とは違う。

一般定期借地権、事業用定期借地権等、建物譲渡特約付借地権では、終了方法や、残る期間の扱いが違う。

「定期」という言葉だけで、同じに扱わないようにしよう。設定日、終了日、課税時期に残る期間を、契約書で確かめる。

一時使用は、期間だけで決めない

契約期間が1年や2年でも、それだけで、一時使用目的の借地権に当たるとは限らない。

確認するのは、契約の目的だ。一時使用目的は、通常の借地権割合での評価が適当でないため、国税庁は、雑種地の賃借権の評価に準じるとしている。

雑種地は、宅地等のほかの区分に当たらない土地の区分だ。期間の長さだけで決めず、契約目的、建物の種類、更新の予定、使い方を調べよう。

使用貸借は、支払いの実態も調べる

親の土地へ子が家を建て、地代は払わず、固定資産税だけ負担している場合を考えよう。

普通借地権の計算をする前に、無償で借りる「使用貸借」に当たるかを確かめる。

国税庁の使用貸借通達は、個人間で建物所有を目的として土地を使用貸借した場合、その使用権の価額を零として扱う。土地の所有者側は、貸宅地ではなく原則として自用地価額で評価する。

固定資産税等の公租公課に相当する額以下のやり取りだけなら、使用貸借に当たり得る。

ただし、形式上は無償でも、権利金や、そのほかの経済的利益等があれば、実態を調べる。地代の有無、人の関係、金額、その支払いが土地を使う対価かを確かめよう。

「無償だから評価ゼロ」と即断する前に、実際に何かやり取りがあったかどうかを記録と照らし合わせる。

個人間の使用貸借で、自用地価額6,000万円の親の土地を、子が無償で使っているとする。

子の使用権3,600万円、親の土地2,400万円と分ける計算ではない。原則として、使用権はゼロ、親の土地は自用地として評価する。

借り手の使用権がゼロでも、土地所有者の相続財産まで、なくなるわけではない。

地主側の貸宅地は、借地権評価とは別の話

今回の相続では、借りていた人の権利を評価するのか、地主の土地を評価するのか。

ここを取り違えると、使う計算方法が変わる。

借り手の「借地権」と、地主の「貸宅地」は、別の財産だ。

通常の権利金を受け取って設定した借地権の目的となる貸宅地は、原則として、次の式で評価する(財産評価基本通達25)。

自用地価額 − 自用地価額×借地権割合

国税庁「貸宅地の評価」では、定期借地権等や区分地上権等で、別の計算も示している。

相当の地代や無償返還の届出がある場合も、個別の扱いを調べよう。地主側の評価については底地・貸宅地の評価も参照してほしい。

故人は、借りていた人か、地主か。まず、誰のどの財産を評価するかを確かめよう。

評価前にそろえる資料

種類の確定と計算のために、次の書類を手元に集める。

  • 土地賃貸借契約書・更新契約書・覚書
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 課税年の路線価図・評価倍率表
  • 権利金・保証金・地代の支払記録
  • 無償返還届、相当の地代に関する届出・計算資料
  • 定期借地権等の設定日・終了日・課税時期の残存期間

契約書は、表題だけでなく、本文と実際のお金のやり取りまで確かめる。

特に、権利金、地代、期間と更新の三か所を順に見よう。評価の種類を決める手がかりになる。税理士へ依頼するときも、この順で資料を渡すと、事情を伝えやすい。

圭介と沙織は、契約と支払記録を集め、静子の住み続ける希望も記録した。申告する財産と価額、契約上の立場、家族への精算を、分けて考える。

通常の相続税の申告・納付は、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内だ。契約の確認が長引いても、期限は自動で延びない。

ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

借地権は自用地価額に割合を掛ければよいか

普通借地権の基本式だが、定期借地権、一時使用、相当の地代、無償返還などは扱いを分ける。

定期借地権の価額はゼロか

原則として課税時期に帰属する経済的利益と存続期間から評価する。契約内容と設定・残存期間を確認する。

親の土地を無償で使う場合は借地権か

個人間の使用貸借なら、使用権は原則として零、土地所有者側は自用地として評価する。地代に代わる経済的利益の授受があれば実態を確認する。

借地権者と地主は同じ額で申告するか

借地権と貸宅地は別の財産だ。それぞれの権利、契約と評価方法を確認する。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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