共有不動産の管理行為とは?過半数・全員同意・単独でできる範囲

兄弟で相続した空き家に雨漏りが見つかった。業者には早く直した方がよいと言われたが、兄は返事をしない。応急処置だけなら自分で頼めるのか。ついでに内装も直して貸し出すなら、同じように決めてよいのか。

共有不動産では、何人が賛成したかだけでなく、何を変えるのか、持分はいくらか、使っている人にどんな影響があるかを確認する。雨漏りを止める修理と、賃貸用に全面改装する工事は、同じ「修繕」でも必要な同意が違い得る。

基本は、重大な変更は全員同意、管理・軽微な変更は持分価格の過半数、保存行為は各共有者が単独でできるという区分だ。ここでは、通常の共有不動産について、具体的な工事や契約でどう確認するかを整理する。マンションの共用部分など、区分所有法等の特別な規律があるものは別途確認が必要になる。

管理・変更・保存の違い

行為の区分 基本となる決め方 確認する内容
形状・効用を著しく変える変更 共有者全員の同意 取壊し、大規模な造成、用途への大きな影響等
管理・軽微な変更 持分価格の過半数 利用方法や、形状・効用を著しく変えない改良等
保存行為 各共有者が単独で可能 現状や権利を維持し、損傷等を防ぐための行為

この区分は、工事業者が付けた「リフォーム」「修繕」という名前では決まらない。施工前後の状態、規模、必要性、用途への影響を図面や見積書で確認する。

2023年4月施行の改正では、形状・効用を著しく変えない変更を過半数で決められることなどが明確になった。「少しでも変更なら全員同意」という理解のままでは、現在のルールとずれる。

過半数は、人数ではなく持分の価格で数える

兄が2分の1、妹が4分の1、弟が4分の1を持つとする。妹と弟の二人が賛成しても、合計は2分の1。三人中二人が賛成したから管理行為を決められる、とはならない。

過半数は、2分の1を超えることだ。兄一人も2分の1なので、その人だけでは過半数にならない。兄と妹なら4分の3となる。登記事項証明書や取得経緯を確認して、どの持分を基に計算するのかを確かめたい。

もっとも、過半数があればどんなことでも決められるわけではない。そもそも全員同意を要する行為ではないか、既存の使用者への特別の影響がないかも確認する必要がある。

雨漏りの修理と、全面改装を一つの契約にしない

共有物の損傷を防ぐための必要な応急修理は、保存行為として一人でできる場合がある。放置すれば室内へ被害が広がる雨漏りの補修などでは、現況写真、必要性、見積り、施工内容を残しておきたい。

一方で、間取りを変える、用途を変える、広範囲に設備を入れ替える工事まで、全部「保存」として進めてよいとは限らない。管理または重大な変更に当たる部分がないかを分けて確認する。

緊急工事と、後から検討できる改良を分けて発注することも選択肢になる。必要性の説明や金額の記録があれば、他の共有者との精算もしやすくなる。単独で発注できることと、請求した費用が全額当然に認められることは別だ。

保存行為には、登記上の権利を守る請求もある

保存行為は、建物の補修だけではない。実体に合わない登記によって共有者の権利が妨げられている場合に、登記の是正を求めることも問題になる。

高松高裁1974年5月1日判決は、共同相続した不動産につき一人が単独名義の登記をし、さらに第三者へ仮登記がされた事案で、他の共有者の一人が、当初の単独登記名義人の持分を除く部分について仮登記の更正を求め得るとした。

これは、共有者なら常に登記全部を一人で消せるという意味ではない。誰の持分が有効で、どの部分が権利を妨げているかを確認し、請求の相手と範囲を決める必要がある。

建物を貸すなら、「3年以内」だけでは足りない

民法252条4項は、一定期間を超えない賃借権等を管理のルールで設定できると定めている。期間は、樹木の栽植・伐採を目的とする山林が10年、その他の土地が5年、建物が3年、動産が6か月だ。

ただし、契約書に「2年」と書いた普通借家契約なら、必ず持分価格の過半数だけでよいということにはならない。借地借家法による更新や存続の保護があるため、期間内に終了するとは限らず、原則として全員の同意が必要と考えられる。

3年以内の定期建物賃貸借など、所定の期間で終了する契約であれば、管理のルールで設定できる場合がある。ただし、定期借家としての契約や事前説明の要件、既存の使用者への影響も確認する。単に「更新なし」と書けばすべて済むわけではない。

土地でも、駐車場として貸す場合と建物所有を目的とする借地では事情が違う。募集を始める前に、用途、契約の種類、期間、終了条件を具体化したい。

住んでいる共有者には、別の確認が必要になる

共有者間の決定に基づいて一人が住んだり使ったりしている場合、その人に特別の影響を及ぼす管理事項を決めるには、その人の承諾も必要になる。

例えば、皆で了解していた住まいの利用を変え、居住者に大きな不利益を生じさせる場合だ。変更の必要性や合理性と、その人の不利益を比較して判断することになる。

一方、誰かが事実上使っているというだけで、常に全員同意が必要となるわけでもない。従来の合意、使い始めた経緯、利用料の有無を調べる。反対する人の荷物を勝手に出す、鍵を交換するといった実力での解決は避け、必要な請求や手続を確認する。

所在不明と、返事をしない共有者は別の制度で考える

誰か、どこにいるか分からない場合

共有者やその所在を知ることができない場合、裁判所の決定を得て、その人以外の共有者によって一定の変更や管理を決められる制度がある。

重大な変更なら残りの共有者全員の同意、管理なら残りの持分価格の過半数というように、決め方も異なる。裁判で特定された行為が対象であり、今後すべての行為からその人を外せるわけではない。登記・戸籍・住所の調査等の結果と、行いたい工事や契約を具体的に示す必要がある。

住所は分かるが、賛否を明らかにしない場合

相当の期間を定めて管理事項について賛否を明らかにするよう催告しても、回答しない共有者がいる場合には、その人以外の持分価格の過半数で管理事項を決められる旨の裁判を求める制度がある。

手紙に回答期限を書くだけで、期限後に勝手に除外できるわけではない。裁判所の手続が必要だ。また、明確に反対している人は、賛否不明の人とは違う。

この制度は管理事項についてのものだ。無回答を理由に持分を売却したり、全員同意が必要な重大な変更を自由に行ったりできる制度ではない。東京地方裁判所の案内も、所在等不明の場合と賛否不明の場合の書式を分けている。

売却や共有解消は、管理の多数決だけではできない

不動産全体を任意に売却するには、原則として各共有者が持分を移転するための合意・手続が必要だ。管理行為の過半数を満たしても、反対者の持分まで当然に売れるわけではない。

自分の持分だけの売却は別だが、第三者が共有者に加わるなど、その後の利用関係が変わる。不動産全体の売却と持分売却の違いを確認してから判断したい。

共有そのものを解消したい場合は、遺産共有と通常共有に応じた解消手続を検討する。遺産分割前か、分割で共有取得を決めた後かによっても手続が異なる。

発注や契約の前に残しておく記録

  • 共有者、持分、取得原因が分かる登記等の資料。
  • 工事前の写真、図面、施工範囲、見積書。
  • 管理・変更・保存のどれに当たるかを検討した根拠。
  • 提案内容、賛否、催告と回答、決定日。
  • 発注者、支払方法、費用負担と報告方法。

民法253条は、各共有者が持分に応じて管理費用等を負担することを定めている。それでも、不要な工事だった、見積りより高いと争われると精算が難しくなる。必要な保存を急ぐ場面を除き、事前に資料を共有して合意できる点を残すことが大切だ。

分筆を伴う案なら測量・分筆の費用、マンションの売却を予定しているなら登記・管理費等の確認も必要になる。判断に迷う工事や契約は、発注後ではなく、図面・見積り・持分がそろった段階で相談したい。

公的資料・根拠

よくある質問

三人中二人が賛成すれば管理行為を決められますか

人数ではなく持分価格の過半数で判断する。二人の持分合計が2分の1なら、過半数に達しない。

雨漏り修理は一人で発注できますか

損傷を防ぐ必要な保存行為なら単独でできる場合がある。全面改装等を一緒に含めず、範囲・必要性・費用の記録を残す。

2年の普通借家契約なら過半数で足りますか

期間を2年と書くだけでは足りない。更新や存続の保護がある普通借家は、原則として全員同意が必要と考えられる。

返事がない共有者を除いて決められますか

勝手には除外できない。所定の催告をしても賛否不明の場合、裁判所の決定を求める制度がある。明確な反対とは区別する。

管理の過半数で不動産全体を売れますか

管理の多数決だけでは他の共有者の持分まで売れない。全体の任意売却、持分売却、共有解消はそれぞれ別に確認する。

本記事は一般的な情報提供です。個別の対応は、相続開始日、財産・家族関係の資料を示して弁護士・税理士等へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

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