相続税の不動産評価|路線価・倍率・補正・家屋の計算

相続税の不動産評価|路線価・倍率・補正・家屋の計算

相続税の不動産評価は、土地を路線価方式または倍率方式、家屋を固定資産税評価額を基礎に、死亡日の現況と権利関係に応じて計算します。

売却査定額や固定資産税評価額をそのまま土地の申告額にはしません。地目、評価単位、形状補正、借地・賃貸関係を確認し、小規模宅地等の特例は評価方法と分けて判定します。

土地・家屋は相続税法上の時価を評価通達で計算する

相続税法22条は、原則として財産取得時の時価で評価すると定めています。実務では、納税者間の公平と予測可能性のため、国税庁の財産評価基本通達に沿って土地・家屋を評価します。

不動産会社の売却査定、固定資産税評価額、地価公示、路線価は目的と基準時点が異なります。「不動産の価格」という同じ言葉でも、そのまま相続税申告額へ転記できるわけではありません。

土地はまず路線価地域か倍率地域かを確認する

国税庁「土地家屋の評価」によると、宅地は主に次の方法で評価します。

方式 対象 基本計算
路線価方式 路線価が定められた地域 正面路線価 × 奥行価格補正率等 × 地積
倍率方式 路線価が定められていない地域 固定資産税評価額 × 評価倍率

国税庁の財産評価基準書 路線価図・評価倍率表で、課税年と所在地を選びます。相続開始が1月ならその年分、12月でも同じ年分ですが、参照年を取り違えないようにします。

登記の筆ごとではなく利用単位で評価する場合がある

土地は登記簿上の1筆ごとに評価するとは限りません。宅地は原則として1画地の宅地、農地・山林も通達が定める利用単位で評価します。複数筆を一体利用している、1筆の一部を別用途で利用している、道路・水路で分断されている場合は評価単位を確認します。

地目も登記簿だけでなく、原則として課税時期の現況で判定します。固定資産税課税明細、登記事項証明書、公図、地積測量図、住宅地図、賃貸借契約、現況写真をそろえます。

路線価方式は土地の形状・接道に応じて補正する

国税庁「路線価方式による宅地の評価」では、奥行価格補正をした路線価を基礎に、二方路線・側方路線の加算、不整形地、間口狭小、奥行長大、がけ地などを反映します。

  • 正面路線は単純に道路幅や玄関の位置だけで決めない
  • 間口・奥行・想定整形地・かげ地割合を図面から測る
  • 私道、無道路地、セットバック部分、都市計画道路予定地を確認する
  • 利用価値が著しく低下する個別事情は、通達・国税庁質疑応答に照らす

補正率は課税年・地区区分・奥行等で変わります。売りにくいという感覚だけで任意の減額率を置かず、計算根拠と図面を申告資料に残します。

貸宅地・貸家建付地・借地権は権利関係を反映する

被相続人が土地を他人へ貸していた、貸家の敷地として利用していた、借地上に建物を所有していた場合は、自用地と同じ価額にならないことがあります。借地権割合、借家権割合、賃貸割合、契約内容を確認します。

親族へ無償または低額で使用させている土地は、契約名だけで貸宅地になるとは限りません。使用貸借か賃貸借か、地代、権利金、固定資産税負担、実際の利用を確認します。

家屋は固定資産税評価額が基本

国税庁「家屋の評価」では、自用家屋を固定資産税評価額に1.0を乗じて評価します。課税明細の「課税標準額」ではなく「価格・評価額」欄を確認します。

貸家は、自用家屋価額から借家権割合と賃貸割合に応じた額を控除します。建築中の家屋、門・塀等の附属設備、庭園設備、区分所有マンションは別の確認が必要です。マンションの区分所有補正は2024年1月1日以後の相続等から適用されるため、課税時期を確認します。

小規模宅地等の特例は評価後に適用を判定する

小規模宅地等の特例は、一定の居住用・事業用・貸付事業用宅地について、限度面積まで50%または80%を減額する制度です。路線価や倍率で土地を評価する手順そのものとは別の特例です。

土地の用途だけでなく、被相続人との関係、取得者、同居・保有・事業継続、申告期限までの分割、申告書への添付書類などを確認します。「自宅なら誰が相続しても330平方メートルまで80%減」とは限りません。

通達評価と時価が違うだけで通達6項を使うわけではない

最高裁第三小法廷令和4年4月19日判決(令和2年(行ヒ)283号、民集76巻4号411頁)は、相続直前の多額の借入れと不動産購入、租税負担軽減の認識・期待などの事実関係のもと、鑑定評価額による課税が平等原則に違反しないと判断しました。

判決は、「市場価格と路線価に差があれば常に鑑定評価」「通達評価が低ければ必ず否認」としたものではありません。原則は通達による画一的評価であり、通達評価を形式的に使うことが実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合に、総則6項の適用が問題になります。

路線価計算は路線価方式の計算、雑種地は雑種地の評価、賃貸マンションは貸家建付地と貸家評価も参照してください。

よくある質問

土地は固定資産税評価額で相続税評価できますか

倍率地域では固定資産税評価額に評価倍率を乗じます。路線価地域では路線価方式を使うため、固定資産税評価額をそのまま申告額にはしません。

路線価は実際の売却価格の80%ですか

公示価格水準の80%を目途に評定されますが、個別の売却価格に一律80%を掛けた金額ではありません。形状・接道・市場時点等で差が生じます。

家屋は固定資産税の課税標準額を使いますか

通常は固定資産税評価額(価格)に1.0を乗じます。軽減後の課税標準額と取り違えないように課税明細や評価証明書を確認します。

自宅の土地なら必ず80%減額できますか

必ずではありません。取得者、同居・保有、申告期限、分割、面積等の要件を満たし、申告書に必要書類を添付する必要があります。

※本記事は一般的な情報提供です。評価単位、補正、権利関係、特例、通達6項は課税時期と個別資料で変わるため、課税年の資料を用いて税理士等へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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