- 判断能力があるうちに受任者と代理権を決める
- 公証人が公正証書を作成し登記する
- 判断能力低下後に家庭裁判所へ監督人選任を申し立てる
- 監督人選任後、契約で定めた代理権が発動する
任意後見は、認知症の診断と同時に全国の銀行口座が法律上一律に凍結されるという前提の制度ではありません。本人が選んだ受任者へ、将来必要となる特定の代理権を事前に契約しておく制度です。
公正証書で契約する
任意後見契約に関する法律2条・3条により、任意後見契約は法務省令所定の公正証書で締結します。日本公証人連合会の案内で、本人の意思・判断能力の確認と契約内容の相談方法を確認できます。
契約時と発効時は別
裁判所の任意後見監督人選任案内によれば、判断能力が不十分な状況となった後、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者等が申し立て、家庭裁判所が監督人を選任した時に契約の効力が生じます。
| 段階 | 立場 | できること |
|---|---|---|
| 公正証書作成後・監督人選任前 | 任意後見受任者 | 任意後見契約自体の代理権は未発効 |
| 監督人選任後 | 任意後見人 | 契約の代理権目録に定めた法律行為 |
代理権目録で範囲を具体化する
- 預貯金・証券の管理と支払
- 不動産の管理、賃貸、必要に応じた処分
- 介護・福祉サービス、施設入所、医療費支払等の契約
- 税務、行政、訴訟等に関する手続
実際に可能な行為は代理権目録の記載で決まります。本人の身分行為、遺言、医療行為への同意など、本人だけが決める性質の事項まで当然に代理できるわけではありません。
法定後見・家族信託・財産管理契約との違い
| 制度 | 開始 | 中心的な機能 |
|---|---|---|
| 任意後見 | 事前契約+監督人選任 | 本人が選んだ人による契約範囲の代理 |
| 法定後見 | 家庭裁判所の審判 | 判断能力に応じた代理・同意・取消し等 |
| 家族信託 | 信託契約等 | 信託した特定財産の管理・承継 |
| 財産管理委任 | 当事者間の契約 | 判断能力がある段階の事務委任 |
任意後見人には法定後見の成年後見人と同じ取消権が当然に付くわけではありません。信託外財産や身上保護も残るため、目的別に組み合わせます。家族信託との比較は家族信託のメリット・デメリットを参照してください。
契約前に決める事項
- 財産・収支・生活・医療介護の希望
- 任意後見受任者と予備的な連絡先
- 代理権目録と定期報告
- 報酬、費用、重要財産の処分条件
- 見守り・財産管理委任・遺言・信託との整合
監督人の選任申立てには、公正証書写し、後見登記事項証明、診断書、財産資料等が必要です。契約を作ることと、必要時に発効させる運用を一体で準備します。
よくある質問
任意後見契約はいつ効力が生じますか?
契約を公正証書で作っただけでは任意後見人の代理権は発動しません。本人の判断能力が不十分となり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時に効力が生じます。
任意後見人は本人の契約を取り消せますか?
任意後見は契約で定めた代理権を行使する制度で、法定後見の成年後見人に認められる取消権と同じ権限が当然に生じるわけではありません。
任意後見人に医療同意を任せられますか?
医療行為そのものへの同意など本人だけが決める性質の行為は、一般的な財産管理・療養看護契約の代理権とは分けて考えます。病院、家族、専門家と事前に確認します。
家族以外を任意後見受任者にできますか?
資格を一律に家族へ限定する制度ではありません。信頼関係、財産管理能力、継続性、報酬、利益相反を確認し、家族・専門職・法人を比較します。
本記事は一般的な制度の説明です。単純承認、相続放棄、任意後見の効力、代理権、必要資料は個別事情で変わります。財産を動かす前、または契約を作る前に、条文、裁判所・公証役場の最新案内と専門家の確認を併用してください。



