遺産分割で不動産を分けるとは、土地や建物を「誰が取得するか」「売ってお金で分けるか」「共有のまま残すか」を、相続人全員の協議で決める手続きです。不動産は現金のように等分できないため、評価額・代償金・売却同意・登記まで一体で考える必要があります。
結論として、不動産の遺産分割では、安易な共有を避け、まず「住み続ける人がいるか」「代償金を払えるか」「売却に全員が同意できるか」を順番に確認するのが実務的です。協議が止まる場合は、早めに遺産分割調停を見据えて資料を整えます。
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この記事で先に確認するポイント
遺産分割で不動産が問題になるときは、いきなり「誰がもらうか」を決めるのではなく、次の順番で整理します。
- 不動産の評価額、住宅ローン、固定資産税、収益性を確認する
- 取得したい相続人がいるなら、代償金を払えるかを確認する
- 売却するなら、相続人全員の同意と売却後の税務を確認する
- 共有で残すなら、将来の売却・管理・次の相続まで見込んで判断する
共有状態そのものが争点になっている場合は、相続不動産が共有名義で売れない場合の整理、売却同意で止まっている場合は 共有不動産と全員同意の考え方 もあわせて確認してください。
実家の土地と建物、兄弟でどう分ければいいのか全然わからない。住む人もいるし、売りたい人もいるし、共有にすれば丸く収まるのかな……。
遺産分割で不動産が揉めやすい理由
遺産分割で不動産が含まれると、話し合いは一気に難しくなります。理由は単純で、不動産は現金のように「きれいに割る」ことができないからです。
たとえば、預金が3,000万円で相続人が3人なら、原則として1,000万円ずつ分ける発想ができます。しかし、実家の土地建物が3,000万円相当だとしても、家を3分割して使うことはできません。誰かが取得するのか、売るのか、共有するのかを決める必要があります。
民法906条は、遺産分割について、遺産の種類・性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活状況その他一切の事情を考慮すると定めています。つまり、不動産の分け方は「法定相続分どおりに数字だけで割れば終わり」ではありません。住んでいる人、代償金を払える人、売却に反対する人、将来管理する人の事情まで見ます。

不動産の分け方は主に4つある
不動産の遺産分割では、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有」の4つを比較します。どれが正解かは、家族構成と不動産の性質によって変わります。
1. 現物分割:土地を分けられる場合の方法
現物分割は、遺産そのものを分ける方法です。土地を分筆して、それぞれの相続人が別々の土地を取得するようなケースが典型です。
ただし、建物がある土地、接道が限られる土地、分筆すると価値が大きく下がる土地では、現物分割が現実的でないこともあります。土地の形状や建築制限によっては、分けた後の土地が使いにくくなる点にも注意が必要です。
2. 代償分割:誰かが不動産を取得し、他の相続人にお金を払う方法
代償分割は、特定の相続人が不動産を取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法です。実家に住み続ける相続人がいる場合や、事業用不動産を承継する場合に検討されます。
国税庁も、代償分割を「共同相続人などのうちの一部が相続財産を現物で取得し、その取得者が他の相続人に代償財産を交付する方法」と整理しています。不動産を残したい場合の重要な選択肢です。
ただし、代償金を本当に支払えるかが最大の問題になります。支払期限、分割払いの可否、担保、遅延時の扱いを協議書に書かないと、分割成立後に別の紛争が起きます。
代償分割を深く確認する場合は、代償分割のやり方と注意点も参考にしてください。
3. 換価分割:売却してお金で分ける方法
換価分割は、不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。誰も住まない実家、維持費だけがかかる土地、相続人全員が現金化を望む場合に向いています。
換価分割では、売却価格、仲介手数料、測量費、解体費、譲渡所得税、確定申告の有無まで考える必要があります。また、売却には原則として相続人全員の協力が必要になります。売却に反対する相続人がいる場合は、先に協議や調停で分割方針を固めることになります。
4. 共有:いったん共有名義にする方法
共有は、一つの不動産を複数の相続人が持分で取得する方法です。一見すると公平に見えますが、実務上は慎重に考えるべき方法です。
共有不動産は、売却・大規模な変更・長期利用などで共有者の同意が問題になります。法務省の共有制度の説明でも、共有物の変更には原則として共有者全員の同意が必要で、管理行為は持分価格の過半数で決するという民法251条・252条の基本構造が示されています。
さらに、共有者の一人が亡くなると、その持分が次の相続人に移ります。時間が経つほど関係者が増え、売るにも貸すにも連絡調整が難しくなります。共有は「今すぐ決めなくてよい」方法ではありますが、「将来も困らない」方法とは限りません。
判断の順番:住む人・払える人・売れるかを先に見る
不動産の遺産分割では、次の順番で判断すると混乱しにくくなります。
- 不動産を使い続ける人がいるか
- その人が代償金を払えるか
- 相続人全員が売却に同意できるか
- 売れない場合や同意できない場合に、調停で何を求めるか
住み続ける人がいて、代償金を払えるなら、代償分割が候補になります。誰も住まない、または維持費が重いなら、換価分割が候補になります。どちらも難しい場合に、共有を残すか、調停・審判で整理するかを考えます。

評価額で揉めるときは、複数の数字を分けて考える
不動産の評価額には、固定資産税評価額、相続税評価額、実勢価格、不動産会社の査定額などがあります。どの数字を使うかで、代償金や取り分が大きく変わります。
相続税申告では相続税評価額が重要になりますが、相続人同士の公平な分け方では実勢価格や査定額も問題になります。代償分割をする場合は、どの評価額を基準に代償金を決めたのかを協議書に明記しておくべきです。
評価額のズレが大きい場合は、不動産鑑定士の鑑定、複数社査定、固定資産税通知書、名寄帳、登記事項証明書などをそろえ、感情論ではなく資料で整理します。
売却に反対する相続人がいる場合
相続人の一人が売却に反対している場合、他の相続人だけで遺産分割協議を成立させることはできません。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。
この場合は、反対理由を分けて確認します。価格に不満があるのか、実家を残したいのか、代償金を求めているのか、単に感情的に協議を拒んでいるのかで、次の対応が変わります。
話し合いが止まる場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。調停では、不動産の資料、相続人関係、遺産目録、評価資料、これまでの協議経過が重要になります。調停の準備は、揉めてから始めるより、協議が詰まり始めた段階で進める方が現実的です。
相続登記と税務の期限も同時に見る
不動産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成し、相続登記まで進めます。2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
また、相続税の申告が必要なケースでは、相続開始を知った日の翌日から10か月以内の申告期限も問題になります。小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、代償分割の課税関係などは、誰が何を取得するかと密接に関係します。
不動産の遺産分割は、法律・登記・税務が同時に動きます。弁護士、司法書士、税理士のどこに相談すべきか迷う場合でも、まずは「何が決まっていて、何が決まっていないか」を紙に書き出すと相談しやすくなります。
実務で先に集める資料
不動産の遺産分割を進めるなら、最低限、次の資料を先に集めます。
- 登記事項証明書
- 固定資産税通知書または名寄帳
- 公図、地積測量図、建物図面
- 不動産会社の査定書または査定結果
- 住宅ローン残高や抵当権の資料
- 賃貸中なら賃貸借契約書、家賃入金資料
- 相続人関係を示す戸籍資料
資料がないまま「高い」「安い」「売りたくない」と言い合っても、協議は進みません。まず数字と権利関係を見える化することが、不動産相続の第一歩です。
迷ったときの結論
不動産の遺産分割で迷ったら、まず共有を最終手段と考えてください。共有は一時的には公平に見えますが、売却・管理・次の相続で問題を先送りすることがあります。
住み続ける人がいるなら代償分割、誰も使わないなら換価分割、土地として分けられるなら現物分割を検討します。どれもまとまらない場合は、調停を見据えて評価資料と協議経過を整えます。
遺産分割で不動産が出てきた時点で、問題は「家をどうするか」だけではありません。家族関係、税金、登記、売却可能性を同時に扱う局面です。感情が強くなる前に、資料と選択肢を並べて判断することが、後悔を減らす一番現実的な方法です。
共有にすれば終わりじゃなくて、代償分割・売却・調停まで比べる必要があるんだな。まずは資料を集めて、数字で話せる状態にするよ。
関連記事として、こちらも参考になります。
弁護士へ相談する分岐は、反対・評価差・支払不能の三つ
- 一人でも売却や取得者に反対している
- 不動産査定や代償金の基準額がまとまらない
- 住み続けたい人はいるが、代償金を払えない
- 一人が占有し、家賃や管理費の負担でも争っている
このどれかがある場合、登記だけの問題ではありません。相続人関係図、登記事項証明書、固定資産税通知書、査定書、住宅ローン残高、これまでの協議記録を揃えると、相談時に分け方の選択肢を比較できます。
よくある質問
遺産分割で不動産を共有にするのは避けた方がいいですか?
常に避けるべきとは限りませんが、安易な共有はおすすめしにくい方法です。共有にすると、売却・大規模修繕・賃貸・利用方法で共有者間の同意が問題になります。さらに共有者の一人が亡くなると持分が次の相続人に移り、関係者が増えていきます。短期的な公平感だけでなく、将来の管理と売却まで見て判断してください。
代償分割にするとき、代償金はいくらにすればいいですか?
代償金は、不動産の評価額、他の遺産の額、法定相続分、相続人間の合意によって決めます。固定資産税評価額だけで決めると実勢価格とズレることがあるため、不動産会社の査定や鑑定も確認します。支払期限、分割払い、遅延時の扱いも協議書に明記することが重要です。
相続人の一人が売却に反対している場合、不動産を売れますか?
遺産分割前の不動産について、相続人全員の協議がまとまっていない状態では、他の相続人だけで自由に売却を進めることは困難です。まず反対理由を確認し、価格、取得希望、代償金、感情的対立を分けて整理します。協議が進まない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。
不動産の評価額でもめる場合、何を基準にすればいいですか?
固定資産税評価額、相続税評価額、実勢価格、査定額など複数の数字を分けて考えます。税務上の評価と、相続人間で公平に分けるための評価は一致しないことがあります。代償分割では、どの評価を基準に代償金を決めたかを協議書に残しておくと、後日の争いを減らせます。
遺産分割協議書ができれば、不動産の手続きは終わりですか?
終わりではありません。協議書を作った後、相続登記、必要に応じた相続税申告、売却する場合の譲渡所得税の確認などが残ります。2024年4月1日から相続登記は義務化されているため、不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請も意識してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。





