共有不動産の売却。全員同意・持分売却・分割。

共有不動産は全員同意なしで売却できる?持分売却と共有物分割

共有不動産を全体で売るには、原則、共有者全員の同意が必要だ。一方、自分の持分だけなら、単独で譲渡できる。

一人が反対しても、すべての方法が消えるわけではない。裁判で分ける場合も、必ず競売になるとは限らない。取得した経緯と手続の種類から、選べる方法を調べよう。

父の遺産分割で、実家を、兄の直人が2分の1、妹の美穂と弟の康平が各4分の1ずつ取得した。

直人は空き家の管理費を減らすため売りたい。美穂は、近くに暮らす母のため残したい。康平は、自分の持分だけでも現金にしたいと言う。

以下は、説明用の架空の家族だ。持分の過半数があっても、不動産全体を自由に売れるわけではない。

三人の意見が違う時は、全体売却、誰かの買取り、自分の持分売却、裁判による分割を比べる。必要なお金と、見込める価格を、方法ごとに確かめよう。

まず、登記事項証明書、遺言、遺産分割協議書で、取得した経緯を調べる。協議書は、相続人同士で決めた分け方を記す書類だ。

登記の原因が「相続」だけでは、遺産分割前かどうかは分からない。全体売却、誰かによる買取り、物理的な分割、裁判による分割、所在不明者の制度を使えるかは、その後に検討する。

遺産共有か、通常共有かを確認

まだ遺産分割が終わらず、相続人が遺産として共有している状態を「遺産共有」という。

遺産分割で持分割合を決めた後や、売買等で生じた共有は、民法256条以下の「通常共有」として扱う。この違いによって、使う手続が変わる。

遺産共有は、原則、家庭裁判所の遺産分割調停・審判で解消する。審判は、裁判官が事情や資料を調べて判断する手続だ。

通常の共有物分割訴訟だけで、すぐ解消できるとは限らない。登記に「相続」と「売買」が混在すれば、遺産共有と通常共有の持分が、同じ物件に含まれることもある。

共有を解消するという目的は同じでも、取得した経緯によって、手続と窓口が違う。

遺産分割前の不動産については、相続不動産の共有を解消する方法で手続の全体像を整理している。

全体売却には、全員の同意が必要

通常共有の不動産全体を、話合いで売るには、共有者全員の同意が必要だ。

売買契約、所有権を移す登記、抵当権の抹消等について、必要な同意と書類、進め方を確かめる。

民法251条は、共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えられないと定めている。2023年施行の改正により、形状または効用の著しい変更を伴わない軽微な変更については持分価格の過半数で決定できるようになった。ただし、不動産全体を第三者へ売却することはこの軽微変更には含まれない。過半数で動かせる管理行為の範囲については、共有不動産の管理行為とは何かを参照してほしい。

一人が反対すれば全体の任意売却は止まる。ただし、それは「何もできない」とは違う。

この仕組みは、持分の多い人が、少ない人の所有権まで処分することを防ぐものだ。管理の多数決と、所有権を手放す決定は分けよう。

直人だけの2分の1は、過半数にもならない。康平と合わせて4分の3でも、通常の全体売却を多数決で決めることはできない。

自分の持分だけを売る場合

各共有者は自分の持分を処分できる。他の共有者の同意がなくても、自己持分だけを第三者へ譲渡することは可能だ。

買い手は、ほかの共有者と共同で所有する立場を引き継ぐ。全体を自由に使ったり売ったりできず、管理や分割の争いが残ることもある。

そのため、持分だけの価格は、全体の価格を割合で分けた額より、低くなる場合がある。業者への持分売却を決める前に、共有者の買取りや全体売却等とも比べよう。

話合いで比べる三つの方法

全員の同意を得て進める場合、解消方法は大きく三つある。

  • 全体売却:共有者全員で第三者に売却し、費用控除後の代金を持分などに応じて分ける
  • 代償取得:共有者の一人が不動産全体を取得し、他の共有者へ持分相当額を支払う
  • 現物分割:土地を分筆するなど、共有物そのものを物理的に分ける

どの方法がよいかは、価格、ローン・抵当権、誰が使っているか、売却費用、譲渡所得税等で変わる。

査定が一つだけでは、持分の買取額や売却価格について、共通の前提を持ちにくい。不動産全体と持分の査定を分けて取り、同じ条件で比べよう。

相続したマンションの売却については、登記・税金・管理費の精算を含めた流れを相続したマンションを売却する流れで確認できる。誰も住まない実家の場合は、売却前の登記・税金・空き家控除も参照してほしい。

説明用に、実家全体の査定額を4,000万円、借入なし、費用と税はまだ引く前とする。直人の持分相当額は2,000万円、美穂と康平は各1,000万円だ。

ただし、康平の持分だけが、必ず1,000万円で売れるわけではない。全体査定を割合で分けた額と、実際の買付額は違う。

この価額で、美穂が二人の持分を買うことに合意したなら、買取資金は3,000万円必要だ。1,000万円相当の持分を持っているだけでは、そのお金を払えない。

資金や融資、支払期限、登記と引換えに払う条件を確かめる。支払える見込みのない案を、先に合意しない。

持っている持分と、払うお金は別

実家全体4,000万円、借入なし。三人が、この価額で持分の買取りに合意する例だ。費用と税は、まだ含めない。

美穂が、既に持っているもの

実家の4分の1
= 1,000万円相当の持分

持分があるだけで、支払用の現金が増えるわけではない。

実家全体を美穂のものにする

直人の2分の1:2,000万円
康平の4分の1:1,000万円
↓
必要な買取資金は
合計3,000万円

支払える資金と、登記・支払の条件を先に確かめる。

査定額からの説明用の計算であり、持分の実売価格や融資の可否を保証しない。費用・税のほか、利用状況や他の権利も別に確認する。

全体を売る場合も、4,000万円をすぐ割合で配り切らない。仲介費用、借入と抵当権の精算、各人の譲渡所得税等を調べる。

売った後の受取額を比べると、美穂が残したい理由と、直人・康平がお金を必要とする事情を、同じ資料で話せる。

裁判でも、競売とは限らない

通常共有では、分割の話合いがまとまらない、または話合い自体ができない時に、裁判での分割を求められる。民法256条以下の共有物分割請求だ。

民法258条の訴訟を検討し、不動産の所在地や訴額等から、どの裁判所で扱うかを調べる。遺産分割調停を申し立てる家庭裁判所とは、分けて確認する。

裁判による分割も、競売だけではない。現行法には、次の方法がある。

  • 現物分割:土地などを物理的に分ける
  • 代償分割:一部の共有者に他の持分を取得させ、お金の支払義務を負わせる
  • 競売分割:現物分割・代償分割ができない場合、またはそれらで価格が著しく減少するおそれがある場合に競売する

訴訟を起こしても、必ず競売になるわけではない。一方、希望する分け方が、必ず選ばれるわけでもない。

裁判所は、物件の性質、使われ方、評価額、支払える資金等を考慮する。

遺産共有は、原則、遺産分割で解消する。他の共有者との共有に遺産持分が含まれる場合は、相続開始から10年後の民法258条の2の例外もある。

ただし、遺産分割の請求と異議の申出があると、扱いが変わる。異議は、請求があったとの裁判所の通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所へ申し出る。

通常共有の分割と同じに考えず、まず取得した経緯に戻って確かめよう。

返事がない場合と、所在不明は別

住所は分かるが、返事がない。住所自体が分からない。生きているかも分からない。

同じ「連絡がとれない」でも、何が分からないかによって、次の手続が違う。

必要な調査を尽くしても、共有者の氏名や所在が分からない場合がある。2023年施行の改正民法には、地方裁判所の決定を得て進める制度がある。

  • 所在等不明共有者以外の共有者全員の同意で、共有物に変更を加える制度(民法251条2項)
  • 所在等不明共有者の持分を取得する制度(民法262条の2)
  • 所在等不明共有者の持分を含め、不動産全体を第三者へ譲渡する権限を得る制度(民法262条の3)

登記の住所へ郵便を出しただけで、所在不明とは決められない。住民票、戸籍の附票等で必要な調査をし、使う制度に応じて、公告や供託等の手続を進める。

連絡できる反対者を、所在不明として外すことはできない。所在不明者の持分が遺産分割前の相続財産なら、持分取得・持分譲渡の裁判は、原則、相続開始から10年を経過する前にはできない。

美穂が、住所の分かる康平の返事を待っているだけなら、所在不明として売却から外す話にはならない。

必要なお金と希望時期を聞き、返事がないのか、反対なのか、調べても所在が分からないのかを分けよう。条件を確かめず始めても、目的の売却へ進めない。

手元の資料から確認すること

共有のままにしておくと、次の相続で共有者が増える。説得に時間を使い続ける間も、固定資産税や管理費の問題は残る。

まず確認できることを、順に並べよう。

  1. 登記事項証明書で共有者・持分・抵当権・取得原因を確認し、遺言や協議書も揃える
  2. 遺産分割前の遺産共有か、遺産分割後の通常共有かを判断する
  3. 不動産全体と共有持分の査定を分けて取る
  4. 共有者ごとに全体売却・代償取得・現物分割への意向を記録する
  5. 固定資産税、管理費、修繕費、賃料収入の精算を整理する
  6. 協議が難しければ、遺産分割か共有物分割か適切な手続を選ぶ

登記事項証明書は、法務局の窓口やオンラインで取れる。取得原因、共有者の名前、持分を確認し、遺言や協議書とも照らし合わせよう。

そこから、全体売却、持分売却、分割請求、所在不明者の制度のうち、使える方法を絞る。

まず、手元の登記事項証明書と、取得した経緯を示す資料を開こう。

一人が反対したら終わりでも、裁判なら競売しかないわけでもない。資料を確かめ、実際に使える方法を比べたい。

直人たちは、まず三人の取得経緯を協議書で確かめ、全体売却と美穂の買取りの二案について費用と資金表をそろえることにした。まとまらなければ通常共有の分割手続を検討する。全員の同意という条件を知るだけで終わらず、同意に届かない理由と、別の方法で実現できる範囲を確かめたい。

ほかにも確認する手続がある場合は、不動産の登記・分割・処分の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

持分が過半数あれば全体を売れるか

通常の任意売却は原則として全員の同意が必要だ。管理行為を持分の過半数で決めることとは区別する。

自分の持分だけを売れるか

自己持分は原則として単独で譲渡できる。ただし全体売却と条件や価格が異なり、新たな共有者との紛争にも注意する。

裁判では必ず競売になるか

現物分割(土地を分筆するなど、共有物そのものを物理的に分ける方法)や、他の共有者の持分を取得して金銭を支払う方法もある。裁判所が選ぶ方法は、評価、利用状況、支払える資金等による。

登記の原因が相続なら遺産分割前か

それだけでは判断できない。遺言、協議書、取得経緯を確認して遺産共有か通常共有かを区別する。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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