非上場株式を兄弟で相続|準共有の議決権・会社法106条・遺産分割

非上場株式を兄弟で相続|準共有の議決権・会社法106条・遺産分割

親が保有していた非上場会社の株式を兄弟で共同相続すると、遺産分割が終わるまで株式は共同相続人の準共有状態になります。各人が株式数の一部を当然に取得し、各自で議決権を行使できる状態とは限りません。

最初に株主名簿、定款、遺言、株式数・種類、共同相続人を確定します。その上で、会社法106条の権利行使者、議決権行使の決定方法、遺産分割、税務評価、納税資金を別々の論点として整理します。

遺産分割前の株式は準共有になる

相続人が複数いる場合、遺産分割前の株式は相続人全員の準共有状態になります。「兄が50%、弟が50%だから、100株のうち各50株を自由に議決できる」と直ちに扱うものではありません。どの株式を誰が最終取得するかは、遺言または遺産分割で確定します。

会社の議決権行使、相続人間の最終的な帰属、相続税評価は別問題です。会社側の株主総会手続を進めても、それだけで兄弟間の遺産分割が完了したことにはなりません。

会社法106条の権利行使者を決める

会社法106条は、株式が共有に属するとき、共有者が権利を行使する者を一人定め、その氏名・名称を会社へ通知しなければ、原則として株式の権利を行使できないと定めています。ただし、会社が権利行使に同意した場合という例外があります。

ここで重要なのは、会社の同意だけで共同相続人間の意思決定ルールまで消えるわけではないことです。権利行使者の選定、会社への通知、議決権をどう行使するかという内部決定を区別します。

最高裁平成27年2月19日判決が示した範囲

最高裁平成27年2月19日第一小法廷判決(平成25年(受)第650号、民集69巻1号25頁)は、共同相続された株式について権利行使者の指定・通知がないまま議決権が行使された事案で、会社が同意しても、その権利行使が民法の共有に関する規定に従わないときは適法にならないと判断しました。

同判決は、特段の事情がない限り、株式の議決権行使は共有物の管理行為として、各共有者の持分価格に従い過半数で決するとしました。対象会社の状況を直ちに変更したり処分したりする内容など、特段の事情があれば同じ評価になるとは限りません。また、この判決を「会社の同意は常に無意味」「一人でも反対すれば全議決権を止められる」と一般化することもできません。

定款の譲渡制限と相続は別に確認する

譲渡制限株式でも、相続による承継そのものは通常の株式譲渡と同じ承認手続ではありません。一方、定款に会社法174条の定めがある会社は、相続その他の一般承継で譲渡制限株式を取得した者に、その株式を会社へ売り渡すよう請求できる場合があります。

売渡請求には、会社法175条以下の手続・期間、株主総会決議、価格決定の問題があります。「譲渡制限だから相続できない」「会社がいつでも自由な金額で買い取れる」という意味ではありません。定款と株主名簿、過去の株主総会資料を確認します。

揉めやすい四つの論点を分ける

論点 確認する資料 判断の中心
議決権・経営 株主名簿、定款、招集通知 会社法106条と準共有者間の決定
最終的な株式帰属 遺言、遺産分割案、評価資料 誰に株式を集約し、代償金をどう払うか
株価評価 決算書、株主構成、類似業種資料 税務評価と取引価格を混同しない
納税・代償資金 財産目録、預金、借入余力 期限までの現金収支を先に作る

実務で進める順番

  1. 発行済株式数、被相続人の株式数、種類株式、名義株の有無を確認する
  2. 定款の譲渡制限、会社法174条の定め、議決権制限を確認する
  3. 遺言と全相続人を確定し、株式以外の遺産・債務も一覧化する
  4. 当面の権利行使者と議決権行使方針を文書化し、会社へ通知する
  5. 税務評価、実際の企業価値、代償金、納税資金を別々に試算する
  6. 株式を経営者へ集約する案、共有を解消する時期、担保・保証を協議する

非上場株式の評価と納税資金は非上場株式の相続税評価と納税、買い手が見つかりにくい問題は非上場株式が売れない場合、会社による取得は会社による相続株式の買取りも参照してください。

株式を承継する人に現金が足りない場合は、会社法上の処理とは別に、資産家の相続で現金が足りない場合の対策から、納税・代償金の資金繰りを確認します。

公的資料・判例

よくある質問

兄弟が半分ずつ相続すれば、各自で半分の議決権を使えますか

遺産分割前は株式が準共有となるため、各自が株式数を分けて自由に議決できるとは限りません。会社法106条の権利行使者と共有者間の決定を確認します。

会社が同意すれば一人で議決権を使えますか

常に適法になるわけではありません。最高裁平成27年2月19日判決は、民法の共有に関する規定に従わない権利行使は、会社の同意だけでは適法にならないとしました。

譲渡制限株式は相続できないのですか

相続による承継自体が通常の譲渡承認を要するとは限りません。ただし、定款に定めがあれば会社法174条以下の売渡請求が問題になります。

相続税評価額で兄弟間の買取価格も決まりますか

自動的には決まりません。税務評価と、会社の収益・支配権等を踏まえた取引価格、遺産分割上の評価を区別して協議します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。定款、株式の種類・割合、遺言、会社と共同相続人の手続、判例の射程により結論は異なります。弁護士・税理士等へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

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相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

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期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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