非上場株式を兄弟で相続|準共有の議決権・会社法106条・遺産分割

非上場株式を兄弟で相続|準共有の議決権・会社法106条・遺産分割

株式を共同相続しても、分割前から各自が半数を単独で持つとは限らない。当面、誰が会社に対して権利を使うかと、最後に誰が株を受け取るかを、分けて確かめる。

ここでは、取引所に上場していない会社の株式を考える。人物・数字は説明用の仮定だ。

架空の兄弟で考えよう。博は、亡くなった父の会社を継ぐつもりだ。弟の亮は、父の株は半分ずつだから、総会でも半分を投票したいと言う。

博は経営を止めたくない。会社で働かない亮も、財産を兄だけで決めてほしくない。遺産を分ける前に、総会の日が近づいてきた。

一つの株式について、家族が別々の投票をすると、会社はどの意思を受け付けるか分からなくなる。そのため、権利を使う人を決める仕組みがある。

この人を選ぶことと、遺産を一人へ全部渡すことは違う。

100株の相続と、50株ずつの所有

今の権利と、最後の配分を分ける

相続人は博と亮だけ。遺言等による別の帰属はなく、父の100株を、各2分の1の割合で共同相続したと仮定する。

分割前:100株を、二人で持つ

各株式について、博と亮が2分の1ずつの権利を持つ。「準共有」という状態だ。最初から50株ずつを、それぞれが単独所有するわけではない。

当面の権利の使い方

権利行使者を一人決め、会社へ通知する手続等を確認する。

各2分の1なら、一人だけでは過半数に届かない。会社で働く兄が、自動的に決まるわけではない。

最後に株を受け取る人

誰が株を取得するかは、遺産分割で別に決める。

権利行使者になっても、弟の相続分はなくならない。全部を兄へ集めるなら、弟への配分や代償金等も考える。

会社が権利の行使に同意する場合の例外と、相続人同士の決定が適法かは、別の問題だ。会社の同意だけで、内部の対立まで解決するわけではない。

まず、遺言、相続人、株主名簿、定款、株の種類と数を調べる。名簿に父の名があっても、実際の所有者が誰かに争いがないとは限らない。

他人の名義を使った株、過去の譲渡や増資に疑問があれば、取得や払込みの資料も確かめよう。

権利を使う人を決め、会社へ通知

会社法106条は、株式が共有に属する場合、原則として、その株式の権利を使う者1人を定め、氏名または名称を会社へ通知することを求めている。この人を権利行使者という。

権利行使者は、持分の価格の過半数で決められる。持分とは、一緒に持つ財産に対する権利の割合で、人数の多数決とは違う。

例えば、一人が2分の1、二人が各4分の1なら、後者二人の合計は2分の1だ。人数では多くても、過半数にはならない。

選んだ経緯、対象の株、会社への通知日、当面の投票方針を、書面に残しておく。

選ばれた人が、それだけで株の単独所有者になるわけではない。最後に誰が株を受け取るかは、別に決める。

会社で働いていることや、役職、勤続年数だけで、博が自動的に権利行使者になるわけではない。

博と亮が各2分の1なら、一人だけでは過半数に届かない。亮も、欠席すれば兄へすべて任せたことになるとは考えず、議案と指定の状況を確かめる。

誰を権利行使者にするか合意し、会社へ通知しても、亮の相続分はなくならない。

会社に対する窓口を一つにすることと、最後に株を受け取る人を決めることを、書面でも区別しよう。

会社の同意と、相続人同士の決定

会社法106条ただし書には、会社が権利の行使に同意した場合の例外がある。

ただし、会社が受け付けると言っても、相続人同士の権利関係まで、解決するわけではない。

半分の持分で投票して争われた例

最高裁平成27年2月19日判決の事案では、会社の3,000株のうち2,000株を、二人が各2分の1で共同相続した。

権利行使者の指定・通知がないまま、一人が共有の株すべてについて投票し、会社が同意した。もう一人は同意していなかった。ここでの株数は、先の架空の兄弟とは別の事案だ。

裁判所は、指定・通知がないままの権利の行使が、民法の共有のルールに従っていなければ、会社の同意だけでは適法にならないと判断した。

この事案の役員選任、本店移転等では、持分価格の過半数による決定がなかった。総会決議を取り消す原審の結論が維持されている。

この判決が判断した範囲

同判決は、議決権を使うことで直ちに株を処分したり、内容を変えたりする等の特別な事情がなければ、株の管理として、持分価格の過半数で決めるとした。

会社に変化が起こる議案なら、すべて全員一致が必要だと述べた判決ではない。

この判決は、権利行使者の指定・通知がない場面を扱う。

既に適法に指定された人がどこまで判断できるか、相続人同士の合意に反していないか、個別の議案はどんな性質かは、同じ結論でまとめて扱わない。実際の総会、通知、合意を確かめよう。

半分ずつで対立した時に調べること

持分が各2分の1で対立すると、どちらも一人では過半数に達しない。

会社が一方だけを選び、共有の株すべてを自由に使わせればよい、とはいえない。

招集通知、議案、誰が投票する予定か、以前に権利行使者を決めているかを調べる。

当面の経営に必要なことと、最後に誰が株を受け取るか、いくらと評価するかを分け、合意できる範囲を探す。会社と一方の相続人の利害が、同じとも限らない。誰の立場で相談するかも明らかにしよう。

総会の決議が終わっていれば、議事録や通知を保存して、早めに手続を確かめる。

会社法831条の決議取消しの訴えは、原則として決議日から3か月以内だ。訴えを起こせる人にも、権利行使者の指定等が関係する。反対を伝えたから、いつでも争えるとは考えない。

譲渡の制限と、会社の売渡請求

譲渡を制限する株でも、相続そのものに、通常の売買と同じ承認手続が必要なわけではない。

ただし、定款に会社法174条の定めがあると、会社が相続人等へ、株を売り渡すよう請求できる制度がある。

会社はその都度、株主総会で対象の株数や相手方等を決める必要がある。請求できるのは、会社が相続等を知った日から1年以内だ。

相手方の議決権には、法律で決められた制限もある。定款があるだけで、何年後でも自動的に買い取れるわけではない。

価格はまず話し合う。請求があった日から20日以内なら、会社または相続人等が、裁判所へ価格を決める申立てをすることもできる。

期間内に合意も申立てもなければ、売渡請求は効力を失う。提示額をそのまま受け入れる義務がある制度ではない。請求書が届いたら、定款、受取日、決議内容を先に確かめよう。

税の評価と、分割や売却の価額

相続税の評価と、兄弟間の調整のお金である代償金や、売買価格の評価は、目的が違う。

会社の財産と負債、利益、事業の見通し、配当、株による支配力、売りにくさ等を踏まえる。何のための評価かを、先に明らかにしよう。

目的 整理する事項
相続税申告 相続開始時の財産評価、会社規模、受け取る人の株主区分など。
兄弟間の遺産分割 評価の基準時、採用する方法、他の遺産との調整、代償金。
第三者や会社への売却 買い手、譲渡承認、取得手続、売買条件、手取り額。

税務評価の制度は国税庁「取引相場のない株式の評価」に示されている。単に決算書の純資産を株数で割れば、すべての相続税評価や取引価格が決まるわけではない。

博と亮は、総会への対応と並行して、株を博へ集める案を考えた。

分割で合意する株の価額を4,000万円、父の預金を1,000万円とし、ほかの財産や借金等がないと仮定する。計5,000万円を半分ずつにすれば、各2,500万円だ。

博が株4,000万円、亮が預金1,000万円を取り、各2,500万円にそろえるなら、博が亮へ払う代償金は1,500万円となる。

株の価額4,000万円を、そのまま現金で受け取れるわけではない。代償金と相続税は、別に資金を用意する。実際の分割の価額、税の評価、権利関係は、個別に確かめよう。

株を集める時は、払える資金も確認

経営を継ぐ人へ株を集め、ほかの相続人へ預金、不動産、代償金を渡す案も考えられる。

ただし、会社の預金と相続人個人の預金は別だ。会社に現金があれば、そのまま兄弟への支払いに使えるとは見込まない。

代償金を分けて払うなら、金額、期日、担保、保証、遅れた場合の対応まで考える。

将来の配当を頼るなら、配当を出せるか、経営や業績が変わっても払えるかを確かめよう。

会社に買い取ってもらう案でも、必要な決議、財源規制、売却した相続人の税負担が問題になる。会社による相続株式の買取りと、非上場株式が売れない場合を合わせて確認できる。

亮は、会社の預金3,000万円から、1,500万円を払えるのでは、と考えた。しかし、それは会社の財産で、博個人のお金ではない。

配当、役員報酬、会社の株の買取り等を使うなら、それぞれの手続、資金の制限、税、経営への影響を確かめる。

兄弟は、総会の日、権利行使者の決め方、分割で使う価額、代償金の調達方法を、一覧にした。

株を半分ずつにしたつもりでも、経営の対立は残る。株を全部兄に集めても、支払資金の問題は残る。今、どの問題を解く話合いかを明らかにしよう。

相談前にそろえる資料

  • 定款、株主名簿、登記事項証明書、株式の取得・譲渡記録。
  • 遺言、相続関係の資料、遺産目録、これまでの分割案。
  • 株主総会の招集通知・議事録、権利行使者の指定・通知、兄弟間の合意。
  • 直近数期の決算書、申告書、借入・保証、会社と親との貸借関係。
  • 相続税と代償金の支払予定、個人として用意できる現金。

不明な資料は、誰が保管し、誰に請求できるかを整理する。株主総会が迫っている場合や売渡請求が届いた場合は、資料が全部そろうまで待たず、その日付を伝えて相談する。納税資金の検討は非上場株式の評価と納税でも扱っている。

ほかにも確認する手続がある場合は、会社・株式・事業承継の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

兄弟で半分ずつなら各自で半分の議決権を使えるか

共同相続による準共有の間は、各自が株式の半数を単独所有しているわけではない。権利行使者の指定・通知と、相続人同士の決定を確認する。

会社が同意すれば一人で議決権を使えるか

指定・通知を欠く権利行使が民法の共有の規定に従わない場合、会社の同意だけで適法にはならない。持分が半分の一方だけで行使した事例でも認められなかった。

権利行使者になれば株式を全部相続できるか

権利行使者の指定は、最終的な株式の帰属を決める遺産分割とは異なる。誰が株式を取得し、他の相続人とどう調整するかは別に決める。

会社から売渡請求が来たら提示額に従うのか

所定の定款・決議・期間等を確認し、価格は協議する。請求から20日以内の裁判所への価格決定申立てという手続もあるため、受取日を記録して早めに確認する。

相続税評価額が兄弟間の代償金の基準になるか

必ず同じ額で決まるものではない。税務評価、遺産分割で合意する評価、売却価格は目的が違うため、基準時や評価方法を整理して協議する。

本記事は一般的な情報を示すものである。具体的な手続や税務は、亡くなった日、財産、資料などを確認して判断する必要がある。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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