相続税の過少申告は、期限内申告をしたものの、本来納付すべき税額より少ない税額を申告した状態です。
税額不足に気づいたら資料と原因を確認し、更正前に修正申告します。過少申告加算税、延滞税、重加算税は別制度で、単なる計算誤りだけで直ちに隠蔽・仮装や脱税になるわけではありません。
税額が少なければ修正申告、多ければ更正の請求
国税通則法19条は、申告税額に不足があるとき、税務署長の更正があるまでは修正申告書を提出できると定めています。反対に、税額を多く申告した場合は、原則として更正の請求を検討します。
国税庁「申告が間違っていた場合」も、税額が少なかったときは修正申告し、新たな税額と延滞税を納付する流れを案内しています。
過少申告加算税は修正の時期で変わる
国税通則法65条では、期限内申告後に修正申告・更正があると、原則として過少申告加算税が問題になります。基本割合は10%で、一定額を超える部分は加重されます。
- 調査通知前かつ更正を予知する前の自主的な修正:原則として過少申告加算税の対象外
- 調査通知後で、更正を予知する前の修正:基本5%、一定部分は10%
- 更正を予知した後の修正・更正:基本10%、一定部分は15%
過去の加算税歴による加重措置等もあるため、割合だけで確定額を判断しません。調査通知日、修正申告日、税額の内訳を確認します。
「正当な理由」は単なる勘違いを広く免除する規定ではない
最高裁平成18年4月20日判決(民集60巻4号1611頁)は、国税通則法65条の「正当な理由」について、真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情があり、制度趣旨に照らして加算税を課すことが不当・酷となる場合をいうとの基準を示しました。
裁判所公開判決は外国親会社のストックオプション権行使益の所得区分等を背景とした事案です。相続財産の評価誤り、資料不足、法解釈の誤りが当然に正当な理由になると判断した判例ではありません。
重加算税には隠蔽・仮装が必要
国税通則法68条は、税額計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告した場合に、過少申告加算税に代えて重加算税を課す仕組みを定めています。過少申告の場合の基本割合は35%です。
財産を計上し忘れた、評価方法を誤った、計算を間違えたという結果だけで、隠蔽・仮装の要件が満たされるとは限りません。名義財産、現金、虚偽資料、取引の秘匿等について、誰が何を認識し、どのような申告行為をしたかを資料で確認します。
気づいた後の確認手順
- 当初申告書、財産評価明細、遺産分割資料、通帳等をそろえる
- 漏れ・評価誤り・分割後の変動など原因を特定する
- 相続人ごとの課税価格と税額を再計算する
- 調査通知の有無と日付を確認し、修正申告・納付を進める
- 他の相続人の修正・更正の請求が必要か確認する
未分割申告後の扱いは遺産分割調停中の相続税申告、遺留分支払後は遺留分と修正申告・更正の請求も参照してください。
よくある質問
過少申告に気づいたらどうしますか
当初申告と資料を再確認し、税額不足であれば税務署長の更正前に修正申告し、追加税額と延滞税を納付します。
自主的に修正すれば加算税はありませんか
調査通知前かつ更正を予知する前なら、原則として過少申告加算税の対象外です。時期や加重措置等を確認します。
計算ミスは重加算税ですか
計算ミスだけで直ちに重加算税になるわけではありません。重加算税には隠蔽・仮装と、それに基づく申告が必要です。
税法を誤解したら正当な理由になりますか
単なる知識不足・主観的事情だけで認められるとは限りません。最高裁は、責めに帰せない客観的事情があり、加算税が不当・酷となる場合という限定的な基準を示しています。
※本記事は一般的な情報提供です。修正申告、加算税、延滞税、正当な理由、隠蔽・仮装の判断は申告時期・事実・過去の加算税歴等で変わるため、税理士・税務署へ確認してください。



