相続対策 何歳から

相続対策は何歳から?年齢より先に確認する家族・財産・生活

相続対策を始める一律の年齢はない。年齢だけで遅いと決めず、本人の希望、生活のお金、家族と財産を確かめる。贈与や遺言等は、それぞれの年齢・判断能力等の条件に沿って選ぶ。

母の春江は72歳。娘の由美から、相続対策はもう遅いのかと聞かれた。以下は架空の親子だ。

春江は今の家で暮らし続けたいが、預金を子へ渡す話には不安がある。由美も、年齢だけを理由に贈与を急がせたいわけではない。

年齢と、各手続に必要な条件を分ける

何歳になったら相続対策をしなければならない、という一律の開始義務はない。準備を始める時期は、本人や家族の事情に合わせて考える。

準備を始める時期と、各制度を使う条件は別だ。

例えば、遺言は15歳に達した人ができるが、遺言をするときに、その意味や効果を理解して判断できる能力が必要だ。相続時精算課税にも独自の年齢等の条件がある。制度を選ぶときに確認する。

春江と由美は、まず本人の生活と資料を確認する時間を設けることにした。

時間をかけると、資料を集めたり、複数の案を比べたりできる。

暦年課税の贈与税には、受け取る人ごとに年間110万円の基礎控除がある。同じ年に複数の人から受けた分も合計する。

ただし、10年で1,100万円を渡せば、相続税からも必ず外れる、という意味ではない。相続や遺贈で財産を受け取る人への、一定期間内の贈与は、相続税の計算へ加えることがある。遺贈は、遺言で財産を渡すことだ。

始めた年齢だけでなく、家族、財産、健康状態と、実際に準備へ使える時間を確かめたい。

退職、事業の引継ぎ、家族構成の変化、不動産の増加、健康面の不安等が、見直しのきっかけになる。

本人が理解して判断できるうちに、財産と希望を整理する。すぐ財産を移すことだけが準備ではない。

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早めに始める利点は、財産をすぐ移すことではない。本人の意思を確かめ、権利と資料を…

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本人の希望と、できる準備を確かめる

資料の調査、家族の希望の確認、方式や税の比較には時間がかかる。一方で、急いで財産を移して本人の生活が不安定になることは避けたい。

本人の意思、生前の管理、亡くなった後の引継ぎを分けると、年齢以外の判断材料が見えてくる。

① 贈与の前に、生活と加算期間を確認

暦年課税の贈与を相続税へ加える期間は、亡くなった日で変わる。2024年1月1日以後の贈与について、対象期間が段階的に延びる。

亡くなった日が2026年末までなら、相続開始前3年以内だ。2027~2030年なら、2024年1月1日から死亡日まで。2031年1月1日以後なら、相続開始前7年以内となる。

相続開始前3年を超える部分は、贈与額の合計から総額100万円を差し引く。毎年の110万円の贈与税の基礎控除とは別の制度だ。対象者や、加算しない贈与の例外も個別に確認する。

② 手続ごとの判断能力を確かめる

遺言、家族信託、生命保険の見直しには、それぞれの行為の意味を理解し、判断する能力が必要だ。

認知症と診断された、というだけで遺言が直ちに無効になるわけではない。遺言をした時の精神状態、内容の複雑さ、作成の経緯等から、その意味や効果を理解できたかを個別に判断する。

民法963条は、遺言をする時に能力が必要としている。本人の意思や当時の状況を、資料で確かめられるように準備する。

③ 次の相続まで、税と生活を考える

父が亡くなり、母が相続した後に、その母も亡くなることがある。この後の相続を「二次相続」という。

最初の相続で配偶者の税額軽減を大きく使っても、母に残る財産が増え、次に子が負担する税まで考えると、有利とは限らない。

両方の相続の税と、母の生活を合わせて考える。時間をかけて案を比べられることも、早く準備する利点だ。

相続対策まとめ|何から始める?財産・遺言・贈与・生活資金の準備

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春江の預金を2,000万円、生活・介護等へ残したい予備を1,500万円と仮定する。差額の500万円と、考えていた贈与額を比べよう。

贈与税の基礎控除に収まることと、本人の生活資金を残せることは別だ。

贈与する額と、生活に残す額を比べる

春江の預金2,000万円、残したい生活・介護等の予備1,500万円と仮定する。

仮の余裕

2,000万円-1,500万円
=500万円

考えていた贈与

110万円×5年
=550万円

予備まで減る額

550万円-500万円
=50万円

このまま贈与すると、残る預金は1,450万円で、希望した予備1,500万円に届かない。将来の収入・支出や価格変動を考えない仮計算だ。贈与できる額や節税額を保証するものではない。

由美は、5年で550万円渡せる、とだけ考えないことにした。母が毎年使う現金と収入、修繕や介護への予備を、贈与額を決める前に確認する。

最初に確認する三つのこと

春江は今の暮らしと将来の支援を、由美は資料の所在と相談したい点を記録する。本人の了解の下で、分かる資料からそろえる。

最初の準備を、次の三つに分ける。

  • ステップ1:財産を一覧にする
    不動産(権利証または登記事項証明書で確認)、預貯金(通帳・ネット銀行含む)、株式・投資信託(証券会社の年間取引報告書)、生命保険(証券番号と受取人の確認)、負債(住宅ローン残高・カード残高)。これらを一覧にし、名義、確認日、資料の保管先と、まだ分からない点を書く。証券の年間取引報告書だけで死亡時残高が分かるとは限らない。
  • ステップ2:相続税がかかるかどうかを確認する
    基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」(相続税法15条)。ただし、申告が必要かどうかは財産の単純合計だけでなく、債務・葬式費用、生前贈与の加算、評価方法、申告を条件とする特例などを踏まえて判定する。基礎控除との比較は最初の目安として使う。
  • ステップ3:遺言書の必要性を検討する
    「誰に何を渡したいか」という意思が明確にある場合、公正証書遺言(民法969条)の作成を検討する価値がある。自筆証書遺言(民法968条)は自分で作れば公証人手数料を抑えられるが、方式違反や紛失・改ざんのリスクがある。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使う場合は保管申請手数料がかかる。

資料と本人の希望がそろえば、どの制度を使うか、何を専門家へ確認するかを検討しやすくなる。作成した一覧には日付を付け、財産や家族関係が変わったら更新する。

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年齢で急がせず、変化の機会に見直す

春江は、家を受け取る人と、生活の支払を助ける人を分けて考えることにした。由美も、母の意思を聞くことと、子の希望を母へ押し付けることを混同しない。契約や遺言の理解・判断が難しい場合には、本人の状況と行為の内容に応じて相談する。

退職、転居、介護、家族構成の変化、財産の売却等は見直しの機会になる。昔作った書類が今の財産に合っているか、誰が実行するかを確認する。財産一覧を作っただけで、代理権や有効な遺言が生じるわけではない。

二人は、550万円の贈与が500万円の仮の余裕を超えることを確認し、まず生活の収支を相談することにした。72歳という数字だけで対策の可否を決めず、本人の希望と資金、制度の条件に合った準備を選びたい。

ほかにも確認する手続がある場合は、生前の全体計画の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

相続対策は何歳から始めるか

法律上の開始年齢も、一律の標準年齢もない。家族構成、財産の種類、退職・事業承継、健康状態に変化があった時が見直しのきっかけだ。意思判断ができるうちに財産一覧と希望を整理し、贈与・遺言・保険など目的に合う手段だけを選ぶ。

生前贈与の基礎控除はいくらか

暦年課税の贈与税の基礎控除は、贈与を受ける人ごとに年間110万円だ(相続税法21条の5・租税特別措置法70条の2の4)。これは相続税から必ず外れる枠ではない。相続又は遺贈で財産を受け取る人への加算対象期間内の贈与は、相続税の課税価格に加算されることがある。

認知症と診断されると遺言は作れないか

認知症の診断だけで作成できないとは限らない。遺言時に、遺言の内容と法律上の効果を理解して判断できたかを、症状、遺言内容の複雑さ、作成経緯、医療記録などから個別に判断する(民法963条)。争いを避けるため、早めに専門家と医師へ相談する。

相続税の基礎控除はどう計算するか

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」だ(相続税法15条)。法定相続人が3人なら4,800万円だ。ただし、申告が必要かどうかは債務(借金など、支払い等をしなければならない義務)・生前贈与の加算・財産評価・申告を条件とする特例なども踏まえて判定する。

二次相続とは何か、なぜ準備するか

二次相続とは、配偶者が亡くなった後に発生する相続のことを指す。一次相続で配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)を最大限適用すると、二次相続で子の税負担が増加する場合がある。一次・二次を通じたトータルの税負担を踏まえた設計が有効とされている。

根拠となる法令・公的資料

この記事は一般的な情報を説明するものだ。具体的な判断は、本人の状況、家族関係、財産や資料を示して弁護士・税理士等へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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