10年以内に相続が続いた場合、前の相続で今回の故人に課された相続税を基に、今回の相続人の税額を軽くできることがある。これが相次相続控除だ。家族の誰かが前に税金を納めていれば使える、という制度ではない。
父を亡くした直樹は、4年前に祖父の相続手続をしたことを思い出した。「あのとき自分も税金を払ったから、今回は引けるはず」と姉の里香に話す。二人は古い申告書を開き、誰にいくら課税されていたかを確かめることになった。
「前の相続で税金を払った人」は誰か
短い間に相続が重なると、同じ家族の財産に相続税が続けてかかることがある。相次相続控除は、その負担を調整するための制度である。前の相続から年数がたつほど、控除の基になる額は小さくなる。
今回の故人が、今回の相続開始前10年以内に始まった相続で財産を取得し、その財産について相続税を課されていたことが必要になる。加えて、控除を受ける人は今回の相続人でなければならない。
直樹が祖父の相続で納税していても、父の税額が配偶者の軽減などでゼロだったなら、直樹自身の税額を父のものとして使うことはできない。今回は父の相続なので、確認するのは祖父の相続における父の税額だ。
10年以内でも、前の税額がそのまま戻るわけではない
計算には、前回の故人の相続税額、前回取得した純資産、今回の全員の純資産、今回各人が取得した純資産、二つの相続の間の年数を使う。純資産は、取得財産に一定の贈与財産を加え、借金や葬式費用を差し引くなどして求める税務上の数字だ。
基本の式は、A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10となる。Aは前の相続で今回の故人に課された相続税額、Bはその人が前回取得した純資産、Cは今回の取得者全員の純資産合計、Dは今回の本人の純資産、Eは経過年数である。C÷(B-A)は1を上限とする。
経過期間に1年未満の端数があれば切り捨てる。4年6か月ならEは4だ。一方で、前回の税額に含める範囲、贈与財産の扱い、農業の納税猶予等には別の確認が必要になる。式に通帳残高だけを当てはめない。
父の税額600万円、4年後の相続で考える
単純化して、A=600万円、B=9,600万円、C=1億2,000万円、D=6,000万円、E=4と仮定する。C÷(B-A)は1を超えるので1とし、D÷Cは2分の1、残る年数の割合は10分の6だ。
控除額は600万円×1×2分の1×10分の6=180万円になる。今回の直樹の相続税額から180万円を差し引く計算であり、祖父の相続税600万円をまるごと返してもらうわけではない。実際は今回の税額や他の控除との順序も含め、申告書で確かめる。
この例の純資産6,000万円が自宅中心なら、手元に6,000万円の預金があるとは限らない。控除後の税額と、納税に使える現金は別に計画する。
相続放棄や、相続人以外への遺贈に注意する
相続を放棄した人や相続権を失った人は、遺言で財産を取得しても、この控除の対象にはならない。相続人以外の受遺者も対象外である。未成年者控除などと適用される人の範囲が同じだと思い込まない。
相続が続くことを数次相続というが、遺産分割や戸籍の手続が複雑になる問題と、この税額控除を使えるかは別だ。10年以内というだけで使えると判断せず、前の申告の有無と税額を確認する。
古い申告書を探してから、今回の期限を確認する
直樹と里香は、祖父の相続税申告書一式と、その後に修正・更正があったかを調べることにした。税額の明細、財産の明細、故人が取得した内容が分かる資料をそろえる。納付書一枚だけでは計算に必要な数字が分からないことがある。
今回の申告では、相次相続控除の計算を含む申告書の該当欄を確認する。前の資料を探している間も、今回の申告・納税の期限は進む。資料が見つからない場合は、前に依頼した税理士などに早めに確認したい。
関連する手続は、相続税申告を自分でする方法|向くケース・必要書類・10か月期限からも確認できる。
よくある質問
父と母が続けて亡くなれば必ず使えるか
必ずではない。今回の故人に前回の相続税が課されていたことなどが必要だ。前回の故人の税額が配偶者の軽減でゼロなら、その税額を基に控除は生じない。
4年6か月の経過は何年と数えるか
相次相続控除の経過年数は1年未満を切り捨てるため4年とする。
放棄した後に遺贈を受けても使えるか
相続放棄をした人は、遺贈で財産を受け取っても相次相続控除の対象にはならない。
確認に使える資料
2026年10月21日時点の一般的な説明である。登場人物と金額は説明用の架空の例で、実際の相談事例ではない。具体的な判断は資料と事情を確認して行う。



