遺言に執行者の指定がない、指定された人が辞退したり亡くなったりした場合は、利害関係人から家庭裁判所へ選任を申し立てられる。ただし、すべての遺言で選任が必須とは限らない。実現したい内容と必要な権限を確かめる。
叔母の遺言で預金を受け取ることになった香織は、銀行から手続の権限を確認するよう言われた。遺言に書かれた執行者は、叔母より先に亡くなっていた。叔母の相続人とは疎遠で、誰に手続を頼めばよいか困っている。
いないのか、まだ就任していないのかを確認する
遺言執行者は、遺言の内容を実現するための仕事をする人だ。遺言に名前がある場合でも、本人が就任しているか、辞退しているか等を確認する。遺言で第三者に指定を委託している場合は、その指定の状況も調べる。
執行者がないとき、またはなくなったとき、家庭裁判所は利害関係人の請求により選任できる。指定された人が存命なのに連絡がつかない場合、直ちに「いない」と同じ扱いでよいかは事情を確認する。
香織は、遺言の写しだけでなく、指定された人の状況を示す資料と、銀行で必要とされる処理の内容を整理した。遺言執行者を付ければ、無効な遺言も有効にできる、という制度ではない。
申立人と、提出する家庭裁判所を確かめる
申立てができるのは利害関係人で、相続人、遺贈を受けた人、故人の債権者等が例として挙げられる。相続人ではない香織でも、遺贈を受ける立場を資料で示して申立てを検討できる。
申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所だ。申立人の現在の住所地や、不動産の所在地だけで選ばない。裁判所の案内で管轄を確認する。
候補者を挙げる場合は、本人の意向、引き受けられる仕事、利害関係、費用の条件を確認する。裁判所が選任する手続なので、家族が推薦した人に必ず決まるわけではない。
必要書類と、申立費用・報酬を分けて用意する
裁判所の標準的な案内では、申立書、遺言者の死亡が分かる戸籍、候補者の住民票または戸籍附票、遺言書等の写し、申立人の利害関係を示す資料等が必要になる。同じ裁判所に検認記録が保存されている場合の添付省略や、追加書類の扱いも確認する。
裁判所の案内にある申立手数料は、執行の対象となる遺言書1通につき収入印紙800円分。連絡用の郵便料等は提出先へ確認する。この800円だけで、執行の仕事の報酬や登記・戸籍等の実費まで賄われるわけではない。
専門家に依頼する場合は、申立ての代理・支援費用、執行者としての報酬、個別の実費を分けて確認する。報酬が遺産額の何%と法律で一律に決まっているわけではない。
選任後は、財産の確認と各窓口での実行へ進む
裁判所が必要な資料等を確認して判断する。照会が来たら期限内に回答し、審判書の受領後は、就任と権限を示す書類を整えて銀行や法務局等の手続へ進む。申立てから一律に何日で全て終わる、と見込まない。
執行者は相続人への通知や財産目録など必要な仕事を行うが、相続人の個人的な税務申告や、遺言と無関係な争いを何でも処理する立場ではない。誰が何を担当するかを確認する。
香織は、遺言の文言と銀行の必要資料を添えて、申立てを進めることにした。相続税の申告等が必要なら、その期限は選任を待って自動的に延びない。財産を動かす前に、遺言の効力や借金を含む取得内容も確かめたい。
関連する手続は、遺言書の種類は3つ|自筆・公正・秘密証書と発見後の手続からも確認できる。
よくある質問
相続人以外でも申し立てられるか
遺贈を受ける人などの利害関係人であれば申立てを検討できる。利害関係を示す資料を準備する。
800円で全部の執行が終わるか
800円は遺言書1通に対する申立手数料の案内だ。郵便料、資料の取得費、執行者の報酬等は別に確認する。
推薦した人が必ず選ばれるか
裁判所が判断するため必ずではない。候補者の意向、資格、利害関係等も確認する。
確認に使える資料
2026年10月21日時点の一般的な説明である。登場人物と金額は説明用の架空の例で、実際の相談事例ではない。具体的な判断は資料と事情を確認して行う。



