家族信託 失敗 事例

家族信託で確認したい5つの落とし穴|口座・権限・後継者・税務

家族信託は、契約だけでなく、口座、管理する権限、後継者、毎年の税務まで確かめよう。始めた後の管理や、変更・終了のときにも確認漏れが起こり得る。

以下の五つは、架空の家族を使った説明例だ。実例の統計や、「失敗の9割」といった発生割合を示すものではない。

父の隆は、家の管理を長男の健へ任せる信託を考えている。健は仕事が忙しい。妹の沙耶は、父に渡すお金と通帳の記録を、誰が確かめるのか気にしていた。契約案には家の管理は書かれている。けれど、将来家を売るとき、健が先に病気になったとき、父が亡くなったときにどうするかは、まだ決まっていない。

信託は、財産を管理する人と、利益を受ける人を分け、目的に沿って管理とお金の受渡しを続ける仕組みだ。

信託の契約があれば、すべての財産を動かせるわけではない。家族の争いも、必ずなくなるものではない。父の希望をかなえるため、どんな権限と仕事が必要かを確かめよう。

確認漏れ1:長男という理由だけで、続けられる仕事を確認しない

信託で財産を預かり、目的に沿って管理する人を受託者という。健を信頼していても、記帳・支払い・物件管理を長く続けられるかは別の問題だ。

信託法は、利益を受ける受益者のために忠実に仕事をすること、財産を区別して管理すること、帳簿や報告等を求めている。家族でも、資料を残さなくてよいわけではない。

隆の家を貸すなら、入居者や管理会社への対応、修繕の判断、請求書の確認、税務に必要な記録等がある。毎月と毎年の仕事を一覧にし、健の時間と支援する人を確認する。「細かいことは後で」と残さない。

沙耶へ何を伝えるかは、父の意思とプライバシーに配慮して決める。家族への情報共有と、受益者等が法律上持つ報告・閲覧の権利は別だ。

家族全員が銀行の認証情報を共有する管理にはせず、誰に何を報告するかを決めよう。

確認漏れ2:契約の口座条項と、銀行の取扱いが一致していない

信託のお金は、誰のお金で、いくらあるかが分かるように管理する。信託法34条は、金銭について原則として計算を明らかにする方法を定める。

「信託口口座」という特定の名前の口座がないだけで、契約が一律に無効になるわけではない。ただし、契約でその口座を使うと決めたなら、その条項に沿う対応が必要だ。

普通の個人口座を分けても、銀行が自動的に信託の財産として扱うとは限らない。

受託者が亡くなったとき、後継者に替わるときの手続や、払戻し、融資、手数料を、契約を確定する前に確かめよう。口座名に「信託」とあれば全部できる、とは考えない。

健は、契約案を銀行へ示し、利用できる取引と必要な条項を照らし合わせることにした。個人口座で父のお金を管理しているなら、父からの移転と支出の記録を確保し、用途を銀行へ説明して取扱いを確認する。後から契約の記録を作り替えて合わせることはしない。

具体的な口座の比較は信託の口座管理で確認できる。口座を分けることと、帳簿を作ることは両方必要な確認だ。

確認漏れ3:目的、権限の制限と実際の取引を照らし合わせていない

信託法26条は、受託者が、信託財産の管理・処分等、目的のために必要な行為をする権限を定める。一方、信託の契約等で権限を制限することも認めている。

「売却」と書かれていなければ必ず売れない、管理と書けば何でもできる。そのどちらとも決めつけず、契約全体と目的、実際の取引を確かめよう。

父の生活費を用意する売却と、子の事業資金にする担保設定は同じ目的ではない。修繕、建替え、賃貸、借入れ等を予定するなら、権限と条件を具体的に確認する。融資・担保がある場合は、相手方の金融機関等との調整も必要になる。

売却代金を3,000万円、売却の費用等を100万円、返済する借入残高を500万円とする説明例なら、差額は2,400万円だ。

売却に伴う所得税等は、ここに含めていない。売却代金3,000万円の全額を、すぐ父の生活費に使えるとは見込まないようにしよう。

隆が家を残したい場合も、その希望と必要な支払いを両方確認する。信託を組めば買手や融資が必ず見つかるわけではない。権限があることと、市場・資金の条件が整うことを分ける。

確認漏れ4:父の死亡、受託者の交代、信託の終了を混同している

父が亡くなっても、すべての信託が自動的に終わるわけではない。信託法163条の終了事由と、契約の約束を確かめる。

終えて残った財産を渡す設計か、利益を受ける人を替えて続ける設計かも分けて考えよう。

父、次の人、その次の人へと受益者を引き継ぐ受益者連続型は、選択肢の一つだ。必ず入れる条項ではない。

信託法91条の期間制限、相続税法9条の3による権利の評価、近い家族に法律で保障される遺留分、納税資金を確かめる。父の死後に管理を続ける必要がなければ、いつ終え、誰が残った財産を受け取るかを決める設計も考えられる。

残った財産を受け取る人を指定していないと、信託法182条のルールが関係する。何も書かなければ受託者が自由に受け取れる、とはならない。

契約の指定と、終了後の支払い等を整理する清算、実際の引渡し、登記を確かめよう。

健が父より先に亡くなれば、健の受託者としての役目は終わる。ただし、信託そのものが終わるかは別だ。

後継者が引き受ける意思、口座・登記の手続、帳簿や未払い費用の引継ぎを準備しよう。受託者がいなくなり、新しい受託者が就任しない状態が1年間続く場合等には、法律上の終了事由もある。

確認漏れ5:設定時の贈与税だけ見て、運用と終了の税を調べない

本人が利益を持ったまま管理を任せる場合と、別の人が対価を払わず受益権等を得る場合では、相続税法9条の2等で確かめる点が違う。

設定時だけでなく、受益者の変更、死亡、終了時にも、誰が何を受け取るかを順に追おう。

信託した不動産の収入が、誰の所得になるかを確かめ、申告のための帳簿と資料をそろえる。

個人の受益者について、信託から生じた不動産所得の赤字は、生じなかったものとみなす特例がある。父が直接持つ別の物件の黒字等から、自動的に差し引けるとは見込まないようにしよう。

物件の価額、家賃収入、所得と、父に渡せる現金は違う。売却代金の2,400万円という説明用の差額も、税額や課税所得ではない。詳しくは設定・運用・終了の税金で確認する。

既に管理を始めたなら、契約と実際の記録を先に照らし合わせる

契約書の原本、登記された信託の内容を示す信託目録、口座規定、入出金、帳簿、税の申告、本人への報告を並べて確かめる。

契約に従っていない点があっても、直ちに全部無効とは決めない。どの義務や権限に問題があるかを特定しよう。

変更は信託法149条の合意等と契約の定め、終了は164条等を確かめる。変更、終了、取消し、契約の効力は、それぞれ別の問題だ。

本人の能力が低下した後は、誰に権限があり、誰の同意が要るかも含め、必要な手続を相談しよう。

流用や記録の消失が疑われるなら、もとの資料の確保、口座や財産の現在地、追加の処分のおそれを早めに相談する。受託者の辞任・解任、新受託者の選任、返還等も、法的な条件と具体的な権限を確認して進める。

契約前と管理開始後で、同じ確認表を更新する

  1. 本人の希望、能力、対象財産と目的を確認する。
  2. 受託者の毎月・毎年の事務と支援体制を書き出す。
  3. 契約の権限と、銀行・登記・融資の実行条件を照らし合わせる。
  4. 設定、運用、死亡、変更・終了時の税と資金を確認する。
  5. 管理開始後も、残高、報告、後継者と条項を見直す。

条項の点検は信託契約書、制度の基本は家族信託の仕組みと照らし合わせる。ひな形の項目を埋めただけで、個別の目的が実行できるとは限らない。

隆と健、沙耶は、口座を作る前に、最初の修繕を誰が手配し、父にどうお金を渡すかを確かめた。管理する人を交代するときの引継ぎも考える。将来をすべて予測するのは難しい。それでも、どんなときに困り、誰に相談するかを決めておけば、暮らしや管理の変化に合わせて見直すことはできる。

確認に使える法令・公的資料

ほかにも確認する手続がある場合は、家族信託・成年後見の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

契約書を自分で作ればよいか

目的、能力、権限、対象、銀行・登記、税務と運用を確認する必要がある。作成者だけで有効性が決まるものではなく、ひな形を埋めるだけで実行できるとは限らない。

途中で変更できるか

信託法149条の合意等と契約の定めを確認する。本人の能力や権限によって必要な対応が変わり、変更と終了は別の手続だ。

受託者が死亡すればすべて終了するか

任務の終了と信託の終了は別だ。後継受託者、選任・引継ぎ、受託者不在が続く場合等の法定終了事由を確認する。

後見を一切使わずに済むか

信託対象外の財産、本人の代理が必要な契約等には別の支援が残る。信託の受託者という立場だけで全事務を代理できるわけではない。

信託すれば節税できるか

管理を任せるだけで税が自動的に減るわけではない。各時点の権利の取得と課税、不動産所得の損失の制限、納付資金も確認する。

本記事は一般的な情報である。五つの例は仮想であり、トラブルの発生割合を示すものではない。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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