遺産分割調停が不成立になったら、原則として、そのまま審判へ移る。新しい申立てをし直さなくても、裁判官が分割を判断する手続が始まる。
ただし、調停で話しただけで希望が認められるわけではない。以下は架空の家族の例だ。残った争点、資料、提出期限と税務・不服申立ての期限を整理する。
父の勝の遺産について、長女の真紀と弟の健は調停(裁判所で調停委員を交えて話し合う手続き)を続けた。真紀は介護の負担と父から健への住宅資金を考慮してほしい。健は、自宅を取得する代わりに払う金額が高いと主張する。話合いがまとまらず、不成立と告げられた真紀は「もう分けられないのか」と不安になった。
調停不成立の後は、審判への移行、裁判所が求める資料と提出期限、これまでの主張の整理を確認する。不成立だから申立てをすべてやり直すものではない。
自動移行することと、準備が不要なことは違う
自動的に移る根拠は、家事事件手続法272条4項だ。遺産分割などの調停が不成立で終了した場合、調停を申し立てた時に、審判も申し立てたものとして扱う。
調停は合意による解決を目指す。審判では、全員の同意がそろわなくても、裁判官が法令と調査・証拠、具体的事情に基づいて判断する。この仕組みがなければ、一人の反対だけで分割の結論をいつまでも出せない状態が続く。
ただし、不成立の日に直ちに結論が出るという意味ではない。必要な調査や主張・資料の提出、評価などが残る場合がある。真紀は裁判所からの通知と次の提出期限を確認し、調停の期日のメモをそのまま最終主張と考えないことにした。
まず、相続人・遺産・評価・分け方のどこが争いかを確認する
遺産分割の前提となる相続人と財産の範囲、評価額、具体的な取り分、取得方法を分ける。誰の財産か、遺言が有効か等の前提問題には、別の訴訟等が必要になる場合もある。相続に関係する争いがすべて一つの審判だけで最終解決するとは考えない。
真紀たちでは、父の不動産と預金が対象かという点、住宅資金が贈与だったかという点、自宅をいくらとするかという点を別の行に書く。同じ「健が多く受け取っている」という不満でも、必要な資料と法律上の意味は異なる。
財産表は、合意しているもの、争っているもの、まだ調査が必要なものに分ける。残高証明の日付、取引履歴、登記、査定などを対応させる。裁判所が職権で事実調査等をする手続でも、自分だけが知る事情や資料を出さずにすべて発見してもらえるとは限らない。
不成立後も争点と証拠は必要になる。援助・介護の事実を、何を判断するための資料かが分かる形にする。 遺産分割審判で変わる結果。知っておきたい3つの判断基準で詳しく確認できる。
分割の時価、相続税評価、代償金の支払いに使うお金を分け、実行できる案を示す。税務の評価額と、その額の現金を用意できることは別だ。
調停で出した話と、審判で示す主張を整理し直す
調停中に提出した書面や資料は一覧にし、裁判所からの指示に従い、審判で何を主張し、どの資料に基づくかを明示する。口頭で述べた事情や調停上の譲歩を、すべて確定した事実や法的な承認として扱わない。
真紀は、住宅資金を示す送金資料、介護の期間と費用、査定の根拠をそれぞれ一組にした。健の反論にも資料で答える。提出の必要がない私生活の情報を大量に混ぜず、相手方が見る可能性も踏まえ、提出方法や秘匿等の必要は裁判所と代理人へ確認する。
審判に向けた準備中でも、合意の可能性が生じたら、実行できる案を検討する余地はある。ただし、家族間で口約束しただけで裁判所の手続が終了したとはせず、条項と必要な手続を確認する。
審判が出たら、結論と理由、告知日を確認する
審判書では、誰がどの財産を取得し、誰にいくら払うか、前提となった評価や認定を確認する。希望と違うというだけで放置せず、事実・評価・法律のどこに不服があるかを特定する。
審判に不服がある場合は、「即時抗告」という申立てを検討する。遺産分割審判では、原則として告知を受けた日から進む2週間の不変期間内に行う。
審理するのは高等裁判所だが、抗告書を出す先は、審判をした家庭裁判所だ。いつから数え、いつ満了するかは、送達・告知の記録と裁判所の案内で確かめよう。
記録の検討や相談の予約をしているだけで期間が止まるわけではない。不服がある場合は告知を受けたらすぐに相談し、何を提出する必要があるかを確認する。確定と必要な証明を確認した後は、登記、預金の払戻し、金銭支払と税務等の実行へ進む。
調停・審判と並行して税務と別の請求期限を管理する
相続税の申告・納税は原則として父の死亡を知った日の翌日から10か月で、調停の不成立を待って始めるものではない。未分割申告は、分割前でも課税価格を計算して納税する申告であり、後で正せば期限を守らなくてよいという仮申告ではない。
未分割の財産について、後から配偶者軽減や小規模宅地等の特例を使う可能性があれば、分割見込書、原則として申告期限から3年以内の分割、やむを得ない事情がある場合の承認手続等を確認する。
分割後、税額が増える人と減る人では手続も違う。修正申告や更正の請求など、誰が何をいつまでに行うかを分けよう。
遺留分侵害額請求も別に考える。相続開始と侵害する贈与・遺贈(遺言で財産を渡すこと)を知ってから1年、亡くなってから10年という期間を、遺産分割の調停中だから自動的に保たれるとは考えない。何を誰に請求するかと期間の管理を個別に確認する。
真紀と健は、不成立の理由を「兄弟仲が悪い」で終わらせず、住宅資金、介護、査定と支払案を整理し直す。審判へ移るという仕組みを知った上で、次の提出期限と税務の期限を一枚にそろえる。それが、出された判断を理解し、必要な対応を選ぶ準備になる。
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確認に使える公的資料
ほかにも確認する手続がある場合は、遺産分割・調停・紛争の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
相続調停が不成立になったら、どうなりますか
遺産分割調停は、原則として272条4項に基づき審判へ移る。改めて申立てをし直す必要はないが、裁判所の指示と提出期限を確認する。
審判移行後も、相続人全員の合意は必要ですか
全員の同意がなくても裁判官が判断する。ただし、遺産・評価・特別受益・寄与分(遺産を守ったり増やしたりする特別な貢献に応じて、相続の取り分に上乗せする額)や取得方法について必要な主張と資料を示す。
調停不成立後も相続税の申告期限は変わりませんか
調停不成立だけで期限は延びない。申告が必要なら原則10か月以内に未分割の状態でも申告・納税し、特例と分割後の手続も管理する。
調停で提出した書類や主張は、審判でも使われますか
提出済み資料を整理し、審判で主張する事実と根拠を裁判所の指示に沿って示す。口頭の説明や調停上の譲歩がすべて確定した事実になるとは考えない。
遺留分の請求権に期限はありますか
相続開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、亡くなってから10年という期間がある。遺産分割手続中というだけで自動的に保たれるとはせず、権利を使うことを別に確認する。



