特別縁故者は、亡くなった人と生活を共にしたり、療養看護に努めたりした、特別な関係のある人だ。相続人が現れず、清算後に財産が残る場合、家庭裁判所へ分与を申し立てられる。
内縁の相手や看護した人が自動的に相続する制度ではない。家裁が相当と認めて初めて、全部または一部を受け取れる。以下の春江は架空の人物で、20年暮らしたことだけでは結論は決まらない。
婚姻届を出さずに20年暮らしたパートナーが亡くなり、春江は「相続人ではない」と聞いた。入退院の付き添いも、毎月の食費の管理も二人で続けてきた。相手に子はいないと聞いていたが、親族全体はまだ確認できていない。春江は通帳を前に、何をしてよいか分からなくなった。
法定相続人(法律で相続人になると決められた人)の線引きだけでは、生活を共にし、看護を続けていた人との特別な関係を十分に扱えない場合がある。そこで、残った財産をすぐ国庫へ帰属させる前に、具体的な関係を家裁が検討する道が設けられている。その入口となるのが、資料の準備と期限内の申立てだ。
法定相続人ではない人の関係を、清算後に検討する
清算後に残った遺産は、特別縁故者への分与等がなければ、最終的に国のものになる(民法959条)。その前に、亡くなった人と特別な関係のあった人への分与を、家裁が検討する仕組みだ。
法律は、生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、その他の特別な縁故があった人を挙げている(民法958条の2)。当てはまる関係があるかを、実際の暮らしや支援の内容から確認する。
相続人がいることが明らかでない場合、利害関係人または検察官の請求で、家裁が相続財産清算人を選任する。
その後、公告で定めた期間内に相続人として権利を主張する人がいなかった場合に、特別縁故者への分与を検討する。
相続人を探す公告から、分与の申立てまで
まず、相続人がいるかを調べ、清算人を選ぶ手続がある。その後、公告で定めた期間内に相続人として権利を主張する人がいなかった場合に、特別縁故者への分与を検討する。
相続人を探す公告と、債権者等へ申出を求める公告は別だ。現在の手続の流れを分けて見よう。
相続人が権利を主張する期間は6か月以上。
この公告の満了日を確認する(民法952条2項)。
債権者・受遺者の申出期間は2か月以上。
①の期間内に満了するように設け、債務等を清算する。
相続人として権利を主張する人がなかった場合、特別縁故者として財産分与を申し立てる。
死亡日や、債権者公告だけの満了日から数えない。
関係と残る財産等を調べ、全部・一部の分与が相当かを判断する。取得が約束されるわけではない。
春江も、実際の公告の満了日と申立期間を家裁等へ確認する。清算人の選任申立てと、財産分与の申立ては別だ。
公告期間中にも、関係を示す資料の整理や、満了日の確認は進められる。期間が終わってから、初めて準備を始める必要はない。
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春江は、「2か月の公告が終わったら、そこから3か月」と聞いたメモを見直した。家裁が定めた相続人の権利主張期間と、清算人が行う債権者等の申出期間は、役割が違う。実際の952条2項の公告を確認し、満了後の申立期間を家裁や清算人へ確かめることにした。
清算後に預金等が1,000万円残ると仮定しても、春江へ1,000万円全額が自動的に渡るわけではない。家裁が分与を相当と認めるか、全部か一部かを審理する。生活のために必要だからという希望額と、分与が認められる額は分けて考える。
どのような関係があったかを資料で示す
「内縁の相手」「長年の友人」という呼び名だけでは決まらない。どのように暮らし、支え合っていたかを、具体的に説明しよう。
法律が挙げる関係と、検討の対象になる事情
- 内縁の配偶者(婚姻届を出していないが実質的な夫婦関係があった)
- 療養看護に努めた人(看護や付き添いの内容・期間を、記録で説明する)
- 同居して生計を共にしていた者
- 事実上の養親子関係にあった者
呼び名だけでは判断できない
- 「仲の良い友人だった」という程度の交流
- たまに食事に行っていた程度の関係
- 法人・団体であっても、自然人ではないという理由だけで一律に対象外とはならない。亡くなった人との特別な関係と分与の相当性を確認する。
親しかったという説明に加え、生活、看護、支援の内容や期間を示す。診療や付き添いの記録、日記、写真、振込記録などを、説明する事情と結び付けて整理しよう。
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申立てから認められるまでの実践ステップ
「どうすれば動けるか」を、具体的に整理しておく。
ステップ1:相続財産清算人の選任状況を確認する
清算人が選任されているか、亡くなった人の最後の住所地を担当する家裁等へ確かめる。官報に出る公告も確認する。
申立期間は、民法952条2項の相続人の権利主張期間が満了した後3か月以内だ。実際の満了日と申立先を家裁へ確認し、日付を控えよう。清算人等からの連絡を待つだけにしない。
ステップ2:関係を説明する資料をそろえる
申立てには、関係を説明する資料を添える。例えば、次のような資料を集め、いつの何を示すものかを書き添えよう。
- 同居を証明する住民票・賃貸契約書
- 介護・療養看護の記録(ヘルパー利用記録、医療機関への付き添い記録など)
- 金銭的なサポートを示す通帳・振込記録
- 手紙、写真、日記などの関係性を示す資料
ステップ3:亡くなった人の住所地を担当する家庭裁判所に申立て
申立書と資料を用意し、家裁へ財産分与を申し立てる(民法958条の2)。本人が申し立てることもできる。
資料の整理や申立書の書き方に迷う場合は、弁護士・司法書士等へ相談する方法もある。清算人の選任を申し立てていても、財産分与は別に、期間内の申立てが必要だ。
ステップ4:家庭裁判所の審判を待つ
家裁が関係や財産を調べ、分与を相当と認めれば、全部または一部を与える判断をする。これを審判という。分与されずに残った財産は、最終的に国庫へ帰属する(民法959条)。
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裁判所の財産分与の案内で、申立先・書式・必要書類を確認できる。
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ほかにも確認する手続がある場合は、相続人・家族関係の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
特別縁故者の申立て期限はいつですか
民法952条2項による相続人の権利主張の公告期間が満了した後3か月以内だ。債権者等の申出公告はその期間内に満了するように設けられる。死亡日から3か月ではなく、実際の公告の満了日を確認する。
内縁の配偶者は特別縁故者として認められますか
法律は、生計を同じくしていた人などを挙げている(民法958条の2第1項)。内縁の相手でも、自動的に認められるわけではない。共同生活や支援の記録を示し、具体的な関係と分与が相当かを家裁が判断する。
相続人が一人でもいれば特別縁故者の申立てはできませんか
原則として、相続人が存在する場合は特別縁故者への財産分与は認められないとされている。相続人不存在が確定したことが、この制度を利用できる前提条件とされている(民法958条)。
特別縁故者に認められた場合、相続税はかかりますか
特別縁故者として財産を受け取った場合、財産を与えられた時の価額を亡くなった人から遺贈(遺言で財産を渡すこと)で取得したものとみなして、相続税を検討する(相続税法4条)。ただし法定相続人ではないため、相続税額が2割加算される場合がある(相続税法18条)。具体的な税額については、個別の状況によって異なる。
遺言書がある場合、特別縁故者の申立ては関係ありませんか
遺言書で特定の人物に財産が遺贈されている場合、遺言が優先される。相続人不存在が確定し、受遺者(遺言によって財産を受け取る人)への対応や債務の清算等を経ても最後に残った財産があるかを確認する。受遺者が一人でもいれば一律に対象外、という意味ではない。遺言の内容と残る財産を確認する。
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春江が準備したのは、年数だけでなく生活の記録だった
春江は、住民票、家計の振込記録、通院の予定表、入院時のやり取りを時系列にまとめた。同居が20年だったことに加え、その間にどう生計を共にし、何を支えていたかを説明するためだ。相続人が存在するなら、この分与制度の前提は変わるため、戸籍等の調査を待たずに「自分が受け取れる」と決めない。
分与が認められた後も、手続が全部終わるとは限らない。新たに相続税の申告条件に当てはまる場合には、分与の事由が生じたことを知った日の翌日から10か月以内という期限を確認する。家裁への3か月の申立期間と、税の10か月を同じカレンダーへ混ぜず、分けて書く。
春江は清算人へ進行と公告の満了日を確認し、申立てに向けて資料を整えることにした。受け取れるかを先に約束することはできない。それでも、制度の入口と必要な資料が分かれば、何もできないと思い込んだまま期限を過ぎることは避けられる。
この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、家族関係、財産、共同生活や支援の記録を示して、弁護士・税理士等へ確認しよう。



