相続人がいない場合の遺産|清算人・特別縁故者・国庫帰属

相続人がいない場合の遺産|清算人・特別縁故者・国庫帰属

相続人がいなくても、遺産はすぐ国のものにはならない。家庭裁判所が選んだ相続財産清算人が財産を管理し、貸したお金等を請求する人への支払いを進める。

その後、故人の看護等をしてきた「特別縁故者」が財産を求める機会があり、なお残った財産が国のものになる(民法951条以下)。2023年4月の改正で、手続と条文番号が変わった。古い資料を読む時は注意しよう。

架空の家族で考えよう。一人暮らしだった伯父が亡くなり、姪の真紀は通帳と家の鍵を預かった。

真紀の母は、「借金が心配だから、家庭裁判所で相続放棄をした」と言う。真紀は、母の代わりに自分が相続するのかと考えた。

母は、伯父のきょうだいだ。ここでは、前の順位の人や同じ順位の人も含め、相続人全員が有効に放棄したと仮定する。

母の相続放棄だけを理由に、姪の真紀が代わりに相続することはない。このように代わって相続する仕組みを「代襲相続」というが、放棄はその理由にならない。誰が相続人で、誰が放棄したかを、戸籍と手続で確かめよう。

財産を見つけた人が自由に持ち帰れると、貸したお金を返してもらう人や、まだ見つかっていない相続人が困る。

そのため、遺産を管理し、借金等の支払いと受取人を調べてから、残りの行き先を決める手続がある。

自分は、お金を貸した人なのか、看護等をしてきた人なのか、不動産を共有する人なのか。立場によって、必要な手続と期限は違う。

複数の立場を兼ねることもある。先に、自分と故人の関係を整理しよう。

相続人全員の放棄と、行方不明を分ける

もともと法律上の相続人が誰もいない場合と、相続人全員が放棄して誰もいなくなった場合がある。

どちらも、民法951条以下の清算手続の対象になる。清算とは、財産を管理し、借金等を支払い、残りを確かめることだ。

ここで混同しやすいのが、行方不明の相続人がいるケースだ。「連絡がとれない」「どこにいるか分からない」という状況は、相続人がいないこととは違う。相続人の存在は確認できているため、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった別の手続を検討することになる。詳しくは不在者財産管理人と失踪宣告を参照してほしい。

また、相続人の範囲そのものが不明な場合は、法定相続人の範囲と順位で確認してから、清算手続に進むかどうかを判断する。「誰もいない」という結論は、戸籍を追って確かめた後に出るものだ。

清算の流れと、二つの公告期間

相続人がいない場合に、遺産を整理する流れを見ていこう。

まず、故人にお金を貸した人や、遺言で特定の財産を受け取る人、特別縁故者の候補等の「利害関係人」、または検察官が、清算人の選任を申し立てる。

申立先は、故人の最後の住所地の家庭裁判所だ。清算人は、相続人がいるか明らかでない場合に、遺産を管理し借金等の支払いを進める。書類と費用は裁判所の相続財産清算人選任案内で確認できる。財産が少ない場合等は、手続の費用を先に納める「予納金」を求められることがある。

清算人が選ばれると、家庭裁判所は、相続人がいれば権利を申し出るように公告する。公告は、広く知らせるための手続だ。

申し出る期間は6か月以上とされる(民法952条2項)。申立てから6か月で全部終わる、という意味ではない。公告で設ける最低の期間で、実際には長くなることもある。

清算人も、債権者と受遺者に、請求を申し出るよう公告する。受遺者とは、遺言で財産を受け取る人だ。

この期間は2か月以上で、相続人が権利を申し出る期間内に終わるよう設ける(民法957条1項)。

分かっている債権者等には、個別にも申し出るよう知らせる。そうした人と、清算人が知らず、申し出もしなかった人では、支払いを受けられるかの扱いが違う。公告や個別の通知で、自分の申出期限を確かめよう。

相続人が権利を申し出る公告期間内に、申し出る人がいなければ、相続人がいないことが確定する。

借金等を整理する手続と、特別縁故者が財産を求める申立ては、それぞれの期限を確かめて進める。

真紀は、伯父の口座から勝手に「自分の分」を移すのをやめた。

仮に預金500万円と家が残り、確認できた借入れが300万円でも、預金がそのまま親族の取り分になるわけではない。他の借金、費用、財産を売る必要等も調べる。

500万円から300万円を引いた200万円も、そのまま真紀が受け取れる額ではない。

二つの公告は、単純に足して8か月ではない
相続人が権利を申し出る期間
6か月以上

家庭裁判所が公告で決める。申立てから数える期間ではない。

この期間内に終わるように設ける

債権者・受遺者が請求を申し出る期間
2か月以上

相続人を探す公告の期間が満了
↓

その後3か月以内

特別縁故者が、残った財産の分与を申し立てる期間。死亡日から3か月ではない。

実際の公告の満了日を確かめる。全手続が、この月数だけで終わるとは限らない。

特別縁故者は、期限内の申立てが必要

相続人がいないと確定しても、残った財産をすぐ国が受け取るわけではない。

故人と生活費等を共にしていた人、療養中の看護に努めた人などが、申立てにより、残った財産の全部か一部を受け取れる場合がある。家庭裁判所が、分け与えるのが相当だと認めることが必要だ(民法958条の2)。これが「特別縁故者への分与」だ。

特別な関係があれば、自動的にもらえるわけではない。申立てが必要で、期限もある。

相続人を探す公告期間が終わった後3か月以内だ。死亡から3か月ではない。

清算人や裁判所から、自分へ個別に期限を知らせてもらえるとは限らない。

裁判所の家事事件Q&Aでも、改正後の6か月・2か月・3か月の関係を案内している。自分でも官報と手続の進み具合を確認しよう。期限を後から知っただけで、自動的に延びる制度ではない。

2023年4月施行の改正前の資料には、旧条文番号の「民法958条の3」が残る。今の条文は、民法958条の2だ。

古い解説は、条文番号と、どの時期の手続を説明しているかを確かめよう。

特別縁故者への分与を経ても残る財産は、国のものになる(民法959条)。これが、清算手続の最後の行き先だ。

共有の不動産がある場合

故人が不動産を他の人と共有していた場合は、その人の権利の割合である「共有持分」をどう扱うかも調べる。

特別縁故者への分与の対象になり得る一方、他の共有者への帰属を定める民法255条との関係もある。「相続人がいないから、すぐ残りの共有者のものになる」とは決められない。

財産の種類、借金等の有無、遺言、共有の経緯を確かめてから、手続を選ぼう。共有持分がある場合は、この関係を専門家に確認する。

真紀は、週に一度の買物を手伝っていた。しかし、それだけで特別縁故者と認められるかは分からない。

長年同居し生活費等を共にした人や、療養中の看護を続けた人がいれば、それぞれの関係と資料を調べる。親族の呼び名だけで順番を決める制度ではない。残った財産と、分け与えるのが相当かも判断される。

真紀が伯父にお金を貸していたなら、返してもらう請求と、特別縁故者として財産を求める申立ては別だ。期限も分けて確認する。

領収書、立替えの経緯、貸付けの合意を残そう。同じ人に、複数の立場があることもある。「相続人ではない」というだけで、全部を諦めたり、全部もらえると考えたりしない。

自分の立場に合わせて準備する

通帳や登記の資料を見つけたら、財産がある場所と、自分がその財産に関わる理由を分けて記録する。債権者、療養看護をした人、共有者では必要な資料が違う。

貸したお金を請求するなら、清算人の選任を自分で申し立てるか、選任後の公告期間内に請求を申し出る。

選任を申し立てられる「利害関係人」には、債権者も含まれる。

長年看護をしていた人や、生活費等を共にしていた人は、特別縁故者として分与を申し立てることを検討する。

期限は、相続人を探す公告期間の満了後3か月以内だ。遅れると申立ての機会を失う。官報の公告と、実際の満了日を自分でも確認しよう。

共有する不動産の持分を調べたい人は、清算の進み具合と、民法255条との関係を確認する。

登記事項証明書と、共有になった経緯を整理してから相談しよう。

いずれの立場でも、まず確認するのは同じだ。亡くなった人の戸籍、財産の種類と所在、自分と亡くなった人の関係を示す資料。それを手元に並べることが、手続の入口になる。

真紀は、伯父の財産と、自分が預かっている物の一覧を別に作った。鍵、通帳、郵便物を預かった経緯も残す。

官報と清算人への確認で、相続人が権利を申し出る期間と、その後3か月の分与申立期間を、具体的な日付で確かめることにした。

最後に国のものになるのは、清算や分与の手続を経ても残る財産だ。

「親族がいないなら、今日から国の家」「鍵を持っているから自分の家」とは考えない。誰のために、どの立場で手続をするかを整理すると、財産を守りながら次の手順を選べる。

ほかにも確認する手続がある場合は、相続人・家族関係の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

申立ての費用と予納金を確かめる

裁判所の全国共通の案内では、申立ての収入印紙800円分、連絡用の郵便料、裁判所の指示後に納める官報公告料5,582円が示されている。

財産の管理・清算や清算人の報酬を払うお金が足りない見込みなら、費用を先に納める「予納金」が必要になることもある。額と納付方法は、申立先の最新案内を確かめよう。

予納金は、どの事件でも一律に同じ額ではない。不動産があっても、売れるまでは支払いに使える預金が少ないことがある。

お金の回収や財産の引渡しを期待して申し立てても、先に払った費用が必ず全額戻るとは考えない。

真紀は、伯父の預金・現金、不動産、未払税金や管理費、借金、処分に費用がかかる品物を一覧にした。依頼する専門家の費用と、裁判所に納める費用も分けて尋ねる。裁判所の相続財産清算人の選任案内を確認し、申立てで実現したいことと、先に用意する現金の見通しを比べて判断する。

よくある質問

相続人が全員放棄すると直ちに国庫へ行くか

直ちには国庫へ行かない。清算人の選任、公告、債権者等への弁済、特別縁故者への分与の機会を経る。

特別縁故者の条文は民法958条の3か

現行法では958条の2である。改正前の資料は条番号が異なるため、清算手続が始まった時期と適用される制度を確認する。

特別縁故者の申立期限はいつか

相続人が権利を主張すべき公告期間の満了後3か月以内であり、死亡から3か月ではない。

行方不明の相続人がいる場合も相続人不存在か

同じではない。相続人の存在が分かっている場合は、不在者財産管理人や失踪宣告など別の手続を検討する。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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