相続時精算課税の主な注意点は、同じ特定贈与者について暦年課税へ戻れないこと、贈与時価額を基に相続時へ加算すること、不動産贈与では相続取得を前提とする特例を使えないことです。
「2,500万円まで贈与税0円」だけで選ばず、撤回、将来価額、相続税総額、贈与時の諸税、特例、記録・申告を財産ごとに比較します。デメリットがあるから不利とも、値上がり予定だから有利とも一律には決まりません。
デメリット1 同じ贈与者について暦年課税へ戻れない
相続時精算課税を選択すると、その特定贈与者からの贈与は以後も相続時精算課税で計算します。「今年だけ選び、来年は暦年課税に戻す」という扱いはできません。父について選択しても母について自動適用されるわけではないため、贈与者との組合せごとに管理します。
2024年以後は相続時精算課税にも年110万円の基礎控除がありますが、暦年課税の基礎控除とは別の仕組みです。撤回できないことと、年110万円が新設されたことを両方踏まえて比較します。
デメリット2 通常の値下がりでも贈与時価額を基に加算する
贈与財産は、原則として贈与時の価額を基に相続税の課税価格へ加算します。贈与後に株式や不動産の市場価額が下がっても、通常は相続時の低い価額へ置き換えません。反対に値上がりすれば贈与時価額での加算が有利に働く場合もありますが、将来の値動きを確実に予測することはできません。
一定の土地・建物が災害で相当の被害を受けた場合には、承認申請などの要件を満たせば被災価額を控除できる特例があります。これは市場価格の下落全般に適用する規則ではありません。
デメリット3 贈与した宅地に小規模宅地等の特例を使えない
小規模宅地等の特例は、個人が相続または遺贈により取得した一定の宅地等を対象とします。生前贈与で取得した宅地は、相続時精算課税により相続税の課税価格へ加算されても、「相続または遺贈により取得した宅地」にはなりません。その宅地自体へ小規模宅地等の特例を適用することはできません。
これは「相続時精算課税を選ぶと、相続する別の宅地にも一切特例を使えない」という意味ではありません。どの宅地をどの原因で取得するのか、居住・事業・保有継続などの要件を財産ごとに判定します。
デメリット4 不動産贈与の諸税・手続が先に生じる
不動産を生前贈与すると、所有権移転登記の登録免許税、不動産取得税、司法書士費用などを検討する必要があります。相続で取得する場合と税率・特例が異なるため、贈与税が0円という試算だけでは総負担を比較できません。賃貸不動産なら、贈与後の賃料帰属や契約・借入れ・管理の変更も確認します。
デメリット5 贈与・相続を通じた記録管理が必要になる
選択届出、各年の贈与価額、基礎控除の配分、2,500万円の使用累計、納付した贈与税額を相続時まで引き継ぎます。相続開始後は、相続時精算課税を使った過去の贈与を相続税申告へ反映する必要があります。受贈者が先に死亡した場合の納税に係る権利義務の承継など、通常と異なる論点もあります。
選択前の比較表
| 確認項目 | 相続時精算課税で見る点 |
|---|---|
| 課税方式 | 同じ贈与者について暦年課税へ戻れない |
| 将来価額 | 原則として贈与時価額を基に相続時へ加算 |
| 不動産 | 小規模宅地等の特例、登録免許税、不動産取得税等を比較 |
| 資金目的 | 住宅、教育、事業承継など他の特例・制度も比較 |
| 相続全体 | 相続財産、債務、法定相続人、過去の贈与を通算して試算 |
制度の入口と届出は相続時精算課税とは、2,500万円と20%の計算は相続時精算課税2,500万円の計算で整理しています。
公的資料・根拠
- 国税庁「相続時精算課税の選択」
- 国税庁「小規模宅地等の特例」
- 国税庁「災害により被害を受けたときの相続税の取扱い」
- 国税庁「相続税の計算」
- e-Gov法令検索「相続税法」
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」
よくある質問
相続時精算課税は取り消せますか
同じ特定贈与者からの贈与について、選択後に暦年課税へ戻ることはできません。贈与者との組合せごとに判定します。
2024年以後も暦年課税の110万円を使えませんか
同じ特定贈与者について暦年課税の基礎控除は使いませんが、相続時精算課税独自の年110万円の基礎控除があります。
贈与後に値下がりしたら相続時の時価で計算しますか
一般的な価格下落では、原則として贈与時の価額を基に相続税へ加算します。一定の災害被害には別の特例があります。
精算課税を使うと小規模宅地等の特例は全部使えませんか
全部ではありません。生前贈与で取得した宅地自体は対象になりませんが、相続・遺贈で取得する別の宅地は個別に要件を判定します。
値上がりする財産なら必ず有利ですか
必ずではありません。相続税総額、贈与時の諸税、収益の帰属、将来の処分、特例の可否まで含めた比較が必要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。贈与日、当事者、財産、過去の届出・申告、相続で取得する財産などにより結論は異なります。個別の手続は税理士・弁護士へ資料を示して確認してください。



