暗号資産の相続税評価|死亡日価格・取引所・ウォレットの確認

暗号資産の相続税評価|死亡日価格・取引所・ウォレットの確認

暗号資産の相続税評価は、銘柄と数量、亡くなった時の価格資料、利用する交換業者等を確認して計算する。アプリに入れないことと、財産としての価値がないことは同じではない。保有の調査と評価資料の収集を並行して進める。

架空の家族で考えよう。父の直人が亡くなり、娘の遥が、暗号資産の交換業者からの通知を見つけた。

兄の陸は値上がりを待ちたいが、母の千代は納税に使う現金が必要だ。端末のロックは分からず、自分で管理するウォレットもあるかもしれない。ウォレットは、暗号資産を管理する仕組みをいう。

家族は端末を保全し、判明した業者への正式な相続照会から始めることにした。現在価格の画面だけで財産額を決めず、死亡時評価、売却できる範囲、税金と手元資金を分けて調べたい。

「死亡日の終値を必ず使う」「売れなければゼロ」と、単純には決められない。

活発な市場がある銘柄は、納税義務者が取引する交換業者の、相続時点の取引価格が基本だ。納税義務者は、税を納める義務を負う人をいう。

活発な市場がない銘柄は、内容、性質、実際の取引等を踏まえて、個別に評価する。

まず、交換業者、ウォレット、端末等の保有先を探し、銘柄と数量を確かめる。

死亡時点の価格資料と残高証明を保存しよう。業者名、日時、銘柄、数量、円に直す方法も一緒に残すと、後で評価の根拠を確認できる。

死亡時の価格と、その根拠を確かめる

相続税の評価は、財産を受け取った時点の時価による。これは相続税法22条が定める原則で、暗号資産も例外ではない。暗号資産については、評価方法の定めのない財産として財産評価基本通達5を踏まえつつ、国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い」4-2が具体的な方法を示している。

活発な市場がある暗号資産については、納税義務者が取引する交換業者の課税時期の取引価格で評価する。相続の場合、課税時期は通常、亡くなった日だ。

「死亡日の価格」も、いつも一つに決まるとは限らない。どの交換業者の、どの価格を使うかを確かめる。

株式の終値と同じものだと、思い込まないようにしよう。

市場がある場合:業者と価格の確認

活発な市場がある暗号資産の評価では、次の三つが認められている。

  • 交換業者の残高証明書に書かれた取引価格を利用する
  • 販売所に購入価格・売却価格がある場合、売却価格で評価して差し支えない
  • 複数の交換業者で取引していた場合、納税義務者が選択した交換業者の課税時期の取引価格によることが認められている

価格画面のスクリーンショット一枚だけでは、後から、何の価格か分からなくなることがある。

業者名、日時、銘柄、数量、円換算の方法を一緒に残す。画面だけで十分と決めず、価格の意味と日時を説明できる資料や、残高証明等も確かめよう。

また、死亡日にたまたま取引価格が公表されていない場合や、取引停止・上場廃止が起きている場合は、上記の方法をそのまま当てはめることができない。個別に確認が必要になる。

ある銘柄を0.5単位持ち、適切な評価方法による死亡時価格が、1単位1,000万円だったとしよう。評価額は500万円だ。

その後、1単位800万円で全量を売れば、手数料等を引く前の代金は400万円となる。どちらも仮定で、現在の相場ではない。

相続税の評価500万円と、後日売って入る400万円は、別の額だ。500万円が相続税額ではなく、400万円全額が所得税の利益でもない。

陸の値上がりへの期待と、千代の納税資金を比べるには、各人の税額、必要な時期、他に使える現金も確かめる。

同じ数量でも、死亡時評価と売却代金は違う

0.5単位を保有し、死亡時は適切な評価方法で1単位1,000万円、後日の売値は1単位800万円となった仮定だ。現在の相場ではない。

相続税の評価額

0.5単位 × 1,000万円
= 500万円

500万円が、納める相続税ではない。

後日、全量を売った代金

0.5単位 × 800万円
= 400万円

手数料等を引く前の代金だ。

400万円全額が所得税の利益となるわけでもない。故人の取得履歴・評価方法、売却費用、各人の税額と納税時期を別に調べる。この差だけで、保有か売却かを決める図ではない。

市場がない場合:内容と取引で評価

銘柄によっては、一定の相場が成立していないものがある。新しいトークンや、取引量が極端に少ない銘柄がこれに当たりうる。

市場のない暗号資産は、売買の実例や、事情に詳しい人の意見価格等も参考にする。内容、性質、実際の取引を踏まえ、個別に評価する。

購入価格や、今表示されている価格を、機械的に当てはめる方法ではない。

市場がないから、評価額が自動でゼロになるわけではない。評価方法が決まっていないことと、価値がないことは、違う。

判断のため、銘柄の内容と、実際の取引を整理しておこう。

まず、どこに何があるかを調べる

暗号資産は、国内の取引所口座だけに保管されているとは限らない。亡くなった人がどこに何を持っていたかを確認することが、評価の前提になる。確認する場所と内容は次のとおりだ。

  • 国内外の交換業者のアカウント(メール履歴・アプリ・ブラウザの保存情報を手がかりにする)
  • ハードウェアウォレット・ソフトウェアウォレットなど自己管理のウォレット
  • スマートフォン・パソコン・USBメモリなどの端末
  • 銘柄と数量の確認(複数銘柄を保有していた場合は銘柄ごとに分ける)
  • ステーキングやレンディングで運用中の資産、まだ受け取っていない未収益がないかも区別して確認する
  • 死亡日時点の価格資料と残高証明を保存する

自己管理のウォレットでは、秘密鍵や復元フレーズが、アクセスに必要となる。復元フレーズは、シードフレーズとも呼ばれる。

これらは財産一覧とは別の場所で、安全に保管して引き継ぐ。失い、他の復元手段もなければ、資産へアクセスできなくなる場合がある。

保有先の全体像をつかむ作業については相続財産調査の進め方、オンライン上の資産全般についてはデジタル遺品の確認も参照してほしい。交換業者・自己管理ウォレットの発見から移管・評価資料の保存まで含む実務の流れは、暗号資産を相続したときの手順で整理している。

分かった保有先から調べる

端末で交換業者のアプリを見つけても、それだけで、銘柄、数量、価格が分かるとは限らない。

ログインできなくても、判明した業者へ相続の権限を示し、残高照会を進められる場合がある。

まず動かすのは、保有先の一覧と死亡日の価格資料の確認だ。どの交換業者に口座があったか。ウォレットはあるか。銘柄と数量は何か。それが揃って初めて、評価の計算が始まる。

次に、活発な市場があるか、どの業者の価格を使うかを確かめる。手元に何があるかが分かると、評価方法を調べやすくなる。

直接の調査が難しい場合や、評価方法に迷う場合は、資料と保有先の状況をまとめて、専門家へ相談しよう。

遥たちは、業者に預けた分と、自分で管理する分を分けて一覧にすることにした。数量が確かめられた分と、調査中の分も区別する。

税務評価と、換金・移管の進み具合は別の欄に記す。一方が終わらなくても、申告期限は確かめる。秘密鍵や復元フレーズは、一般の家族共有資料に書かず、安全な保管・引継ぎを別に考える。

相続後の所得税に使う「取得価額」も、相続税の評価額とは分けて調べる。

国税庁FAQ1-5は、相続等の場合、故人が選択していた評価方法による、死亡時の金額を示している。相続税の時価へ、いつも置き換える説明ではない。故人の取引履歴と計算方法も保存しよう。

ほかにも確認する手続がある場合は、保険・金融資産・デジタル・海外の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

秘密鍵がないと相続税の対象外か

アクセスの難しさだけで判断しない。保有の記録、復旧可能性、経済的価値と評価を個別に確認する。

死亡日の終値を一律に使うか

活発な市場がある場合は利用する交換業者の課税時期の取引価格が基本だ。残高証明や売却価格等の取扱いも確認する。

活発な市場がない銘柄は零か

自動的に零とはならない。内容・性質・取引実態を踏まえ、実例や専門家の意見等で個別に評価する。

どの記録を残すか

保有先、銘柄、数量、死亡日時点の価格と根拠、取得履歴、移管・売却の記録を残す。秘密鍵等は共有資料から分離する。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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