共有不動産の売却に同意は全員必要。それでも動ける3つの選択肢

共有不動産の売却とは、複数の相続人が共同で所有する不動産を第三者や共有者間で売却する手続きを指します。相続によって不動産が共有状態になるケースは非常に多いとされています。

結論から言うと、共有不動産を売却するには原則として共有者全員の同意が必要とされており、一人でも反対すれば売却は進められない可能性があります。ただし、共有持分のみを売却する方法や、裁判所を通じた共有物分割請求など、全員同意なしに進められる選択肢も存在するとされています。

「売ろうと思えば売れる」──そう思い込んでいた人間が、ある日突然、現実の壁に頭突きをかます瞬間がある。

相続で受け取った不動産。名義を確認したら、自分だけじゃなかった。兄も、妹も、場合によっては顔も知らない遠縁の親戚も、同じ土地の「共有者」として名前を連ねていた──というやつだ。

さあ、ここからが本番である。

困り顔

共有名義って、つまり全員が同意しないと売れないってこと……?

で、結論から言うと「全員の同意」が大原則だ

民法第251条。これが、共有不動産売却における最大の関門として立ちはだかる。条文を噛み砕けば、「共有物の変更(売却も含む)には、共有者全員の同意が必要」という話だ。

つまり、共有者が3人いれば3人全員のサイン。5人いれば5人全員のサイン。たった一人が「嫌だ」と言えば、その瞬間に話はフリーズする。

で、ここで思い出してほしい。相続は突然やってくる。「仲の良かった家族」が遺産分割協議を境に、異なる意見を持ち始めることは、決して珍しいことではない。

「不動産は売ってお金で分けたい派」と「先祖代々の土地だから残したい派」が、同じ卓を囲んで議論する光景。想像しただけで、胃が重くなる読者もいるのではないだろうか。

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「同意が取れない」という状況の、意外な多様性

全員同意が原則、とはいえ、現実はもう少し複雑な地形をしている。「同意が取れない」には、いくつかのパターンがある。知っておくと、次の一手が変わってくる。

図解
  • パターン①:連絡が取れない共有者がいる
    相続を繰り返した結果、共有者が増え続け、そもそも誰がどこにいるかわからない、というケース。住民票・戸籍の附票を辿ることで所在を特定できる場合がある。
  • パターン②:同意はしているが署名・押印が得られない
    海外在住の共有者や、高齢で意思能力に疑義がある場合など。公証人絡みの手続きや、成年後見人の選任が必要になる可能性がある。
  • パターン③:明確に「売りたくない」と言っている共有者がいる
    感情的対立、あるいは純粋な価値観の違い。このパターンが最も根深い。

パターン③のような状況では、話し合いで解決しようとするだけでなく、法的な手段の存在を知っておくことが重要だ。全員同意が原則であっても、それが絶対ではない場面もある。

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全員同意なしに動ける、3つの選択肢

ここからが、知っておくと「選択肢が広がる」フェイズだ。

図解

① 自分の持分だけを売却する

民法第206条および第249条の解釈上、各共有者は自らの持分を自由に処分できるとされている。つまり、他の共有者の同意がなくても、自分の持分だけを第三者に売ることは可能とされているのだ。

ただし、現実問題として「共有持分のみ」を一般市場で売るのはかなりハードルが高い。買い手が限られる分、市場価格より低い査定が出る可能性がある、という点は知っておきたい。

② 共有物分割請求を裁判所に申し立てる

民法第258条。協議が整わない場合、各共有者は裁判所に「共有物分割」を請求できるとされている。裁判所が判断する分割方法には、現物分割・代償分割・換価分割(競売による売却)などがある。

「話し合いで決まらないなら、最終的に裁判所が整理してくれる仕組みがある」という認識を持っておくだけで、交渉の局面が変わることもある。

③ 遺産分割協議で「誰かの単独所有」に整理する

そもそも、共有状態になる前──つまり相続発生直後の遺産分割協議の段階で、「不動産は誰々の単独取得」と決めてしまうのが、最もシンプルな解法だ(民法906条)。共有状態にしてしまった後より、なる前に手を打つほうが、圧倒的に話がきれいに収まりやすい。

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「同意を取り付ける」ための、実践的なアクションステップ

「わかった、全員同意が必要なのはわかった。じゃあどう動けばいいんだ」という声が聞こえてきそうなので、具体的な手順を整理しておこう。

図解
  • STEP 1:共有者の全員リストアップ
    被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)をすべて取り寄せ、法定相続人を確定させる。登記事項証明書で現在の名義も確認する。
  • STEP 2:各共有者の意向を個別に確認する
    いきなり全員を集めて話し合うより、個別接触のほうが本音が出やすい。「売る方向で動きたいが、意向を聞きたい」という姿勢が入口として機能しやすい。
  • STEP 3:不動産の査定を取り、「具体的な金額」を共有する
    「売ったらいくらになるか」という数字が出た瞬間に、議論が抽象から具体に変わる。複数の不動産会社から査定を取り、比較できる状態を作る。
  • STEP 4:分割方法を遺産分割協議書に明記する
    売却方針・売却代金の分配割合を遺産分割協議書(民法907条)に落とし込む。口頭の合意には法的拘束力がないため、書面化は必須だ。
  • STEP 5:売却手続きへ
    全共有者の署名・実印・印鑑証明書が揃った段階で、不動産仲介または直接売買の手続きへ進む。

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よくある質問

共有不動産の売却に、全員の同意は本当に必要ですか

民法第251条において、共有物の変更(売却を含む)には共有者全員の同意が必要とされています。ただし、自己の持分のみを売却する場合は他の共有者の同意は不要とされており、また協議が整わない場合は裁判所への共有物分割請求(民法第258条)という方法も存在します。

共有者の一人が行方不明の場合、売却は不可能ですか

所在不明の共有者がいる場合でも、法的手段がいくつか存在するとされています。例えば、不在者財産管理人の選任(民法第25条)を家庭裁判所に申し立てることで、管理人を通じて手続きを進められる可能性があります。また2023年施行の改正民法では、所在等不明共有者の持分を取得または売却できる裁判所の決定制度(民法第262条の2・3)が新設されています。

遺産分割協議で「共有にする」と決めた後でも、単独所有に変更できますか

一度成立した遺産分割協議を後から変更するには、原則として相続人全員の合意による再協議が必要とされています(民法907条)。協議書に署名・押印した後では、一部の相続人の意向だけで覆すことは難しい可能性があります。共有状態にする前の段階で分割方法をしっかり検討しておくことが重要とされています。

共有持分だけを売却した場合、税金はどうなりますか

共有持分の売却も、通常の不動産売却と同様に譲渡所得税の対象となる可能性があります(所得税法第33条)。取得費・譲渡費用の控除や、居住用財産の3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条)の適用可否については、売却する持分の性質や利用状況によって異なる場合があります。

共有者全員が同意した後、どのくらいの期間で売却が完了しますか

全員同意が得られた後の売却期間は、物件の条件や市場状況によって大きく異なりますが、一般的に不動産売却には数ヶ月程度かかる場合があるとされています。また相続登記(不動産登記法第76条の2による義務化、2024年4月施行)が未了の場合は、登記手続きが先行して必要になる可能性があります。

手続きを終えて数週間後。「共有者全員と話し合いができた」「売却の方向性が決まった」という状況を手にした人間が、まず最初に感じることは何か。

「知っておいてよかった」──これに尽きる。全員同意という原則、そして原則が崩れたときの選択肢。この地図を持っているかどうかで、迷走する時間がガラリと変わる。

ホッとした顔

共有者全員と話し合える準備が整っただけで、こんなに気持ちが楽になるとは思わなかった。

共有不動産の売却は、「全員の同意」という一点に向かって、着実にコマを進めていくゲームだ。一手一手を丁寧に。焦らず、しかし止まらず。

けっこうオススメです、早めの情報収集。伝わりましたかね。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

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