死亡時の未収入金と相続税|給与・家賃・還付金・未支給年金

死亡時の未収入金と相続税|給与・家賃・還付金・未支給年金

死亡後に入ったお金が、すべて遺産になるとは限らない。故人から相続する権利と、所定の遺族が自分の権利で受け取る給付を分けよう。

以下は架空の姉弟の例で、金額は説明用だ。入金日だけで判断せず、支給期(給与等を受け取る時期)、契約、対象期間、制度を確認する。

父の死亡後、姉の茜は口座に入ったお金を、弟の晴へ一覧で送った。勤務先からの給与50万円、税務署からの還付30万円と還付加算金2,000円、年金の未支給分40万円。「合計120万2,000円を二人で半分にすればよい?」と茜は聞いた。

相続税は相続等で取得する財産を、所得税はそれぞれの所得を、各制度の定めに従って扱う。預金通帳はお金が動いたことを示すが、誰のどの権利に基づく支払いだったかまでは一行で説明しない。二人は、支払通知をそろえるところからやり直した。

亡くなった後の入金を判定するための一覧

入金の種類 最初に確認する点
給与・賞与 死亡前後のどちらに支給期が到来するか。給与規程や賞与の決定内容も確認する。
家賃・地代 契約上の支払期日、未収の有無、前払い・後払い、経理方法。
売掛金・診療報酬 死亡時までに提供した商品・役務と、請求権が成立していた範囲。
預金利息・配当 相続税評価へ含める利息・配当期待権と、所得の収入時期。
所得税還付 還付金の本体と還付加算金を分ける。
未支給公的年金 一定の遺族が固有の権利として受け取る給付か。遺族年金とは区別する。

相続税の財産になることと、所得税上の申告対象になることは、項目ごとに別の規定で判断する。どちらか一方だけに整理すればよいとも、両方に必ず同じ額を入れればよいとも限らない。

給与は、亡くなった後の「入金日」より支給期を確認する

国税庁の死亡後に支給期が到来する給与の質疑は、死亡後に支給期が来る給与について、本来の相続財産として相続税の対象となり、給与所得の源泉徴収票の支払金額へ含める必要はないと説明している。

同質疑の例は、役員が3月15日に亡くなり、会社の支給日である3月25日に3月分報酬50万円を妻へ支払ったというものだ。この報酬は、死亡後に支給期が到来する給与として扱われる。

一方、死亡時までに支給期が来ていた給与は、実際の入金が後になっても、源泉徴収票の支払金額に含める。未払いの権利が亡くなった時に残っていれば、その相続財産としての扱いも確認する。

支給日が定められた通常の給与はその支給日、役員賞与の一部は決議等により具体的金額が定められた日など、所得税基本通達36-9には区分がある。単に勤務日数を日割りして判断せず、勤務先から給与明細、支払通知、源泉徴収票、必要な給与規程を取り寄せる。

死亡退職金・弔慰金は通常給与と分ける

死亡による退職手当金等で、死亡後3年以内に支給が確定したものは、みなし相続財産となる別の制度がある。相続人が取得する場合の非課税枠等も、通常の未払給与とは異なる。死亡後3年を超えて支給が確定するものは所得税上の扱いが変わるため、国税庁の退職手当等の案内で確認する。

会社から一括で入金されても、給与、退職金、弔慰金、未精算経費の返金等の内訳を受け取る。名目だけでは分からない場合は、規程や支給決定の内容も確認する。

家賃は支払期日と未収の有無で判定する

死亡前に支払期日が到来し、まだ支払われていない家賃は、相続する債権(お金の支払いなどを求める権利)として確認する。契約書、家賃台帳、管理会社の送金明細から、どの月の分が未収なのかを特定する。

一方、国税庁の既経過家賃の質疑は、4月24日死亡、家賃の支払期日は毎月末日、未収家賃はなく4月30日に相続人が受領した例を示している。この場合、4月1日から24日までの日割り相当額を相続税の課税価格へ算入しなくて差し支えないとしている。

したがって、死亡日までの家賃を常に日割りで相続財産に加える方法は適切ではない。前月払いか当月払いか、滞納があるか、契約や経理方法が質疑の前提と同じかを確認する。

既に受領した前家賃のうち亡くなった後の期間に対応する部分も、自動的に債務控除できるわけではない。敷金・保証金など、返還義務を伴う預り金とは分けて整理する。

茜が勤務先へ確認すると、50万円の給与は父の死亡後に支給期が来るものだったと仮定する。この場合は父の相続財産としての扱いを確認する。単に「父が生きて働いた分だから全部準確定申告へ」とはしない。

晴が次に確かめた家賃も、契約上の支払期日と滞納の有無を並べた。既経過分を常に死亡日まで日割りすればよいわけではない。誰がいつ受け取ったかだけでなく、亡くなった時に未収の権利があったかを見ると、帳簿と財産目録のつながりが分かりやすくなる。

売掛金・報酬は、亡くなった時に成立していた権利を調べる

死亡までに商品や役務の提供を終え、故人に帰属する売掛金や報酬請求権が残っていれば、相続財産となり得る。請求書の発行や取引先からの入金が死亡後になっただけで、財産から除くことはできない。

途中の工事、条件付きの成功報酬、査定・返戻がある診療報酬等は、亡くなった時にどこまで権利が成立していたかを確認する。契約書、業務完了資料、請求明細、入金通知、帳簿を照らし合わせる。

貸付金・売掛金等は、財産評価基本通達204・205等に沿って評価する。回収できない部分や、回収が非常に難しい部分をどう扱うかも確認する。

支払いが遅いというだけで、死亡時から回収不能だったとは決めない。支払う義務のある人(債務者)の資力や、取引の状況を示す資料を残す。

準確定申告では、故人の収入計上基準や必要経費等を別に確認する。相続税評価のための一覧と事業帳簿を照らし合わせ、入金を重ねて売上に計上したり、未収分を両方の申告から落としたりしないようにする。

定期預金は、死亡日の残高だけとは限らない

預金の相続税評価は、原則として残高だけでは終わらない。死亡時に解約すれば受け取れる利息から、源泉所得税に相当する額を差し引き、残高へ加える(財産評価基本通達203)。

死亡時までに生じたこの利息を「既経過利子」という。定期預金や定額貯金等は、金融機関へ死亡日現在の額を確認する。

定期預金・定期郵便貯金・定額郵便貯金以外の預貯金で、既経過利子が少額の場合には、残高だけで評価する取扱いがある。残高証明書に利子が含まれているかを見て、別に取得した利息計算書と二重に加算しない。

死亡後に実際に入金された利息には、亡くなった後の期間に対応する分も含まれ得る。相続税評価で加えた額と、その後に入金された利息が必ず一致するわけではない。

配当は基準日・決議日・支払日を整理する

配当については、亡くなった時に具体的な配当請求権が成立していたか、配当期待権の評価が必要かを確認する。財産評価基本通達193は、配当期待権を、予想配当額から所定の源泉徴収税額等相当額を控除して評価する取扱いを定めている。

銘柄、株数、配当基準日、決議日、支払開始日、死亡日を並べ、配当通知書と証券会社の資料を照らし合わせる。株式の評価と、別に評価する配当関係の権利を確認し、所得税で誰のどの年の収入になるかも分けて判断する。

所得税の還付金と還付加算金は、税目が違う

国税庁の準確定申告に係る還付金等の質疑は、還付金請求権を本来の相続財産としている。死亡後に明らかになっても、生前に潜在的に故人へ帰属していた権利が顕在化したものと考えるためだ。

これに対し、還付加算金は相続人が新たに取得するものとして、相続人の雑所得となり、相続税の課税価格には入れない。例えば還付金30万円と還付加算金2,000円が支払われたなら、合計30万2,000円を一括して相続財産へ計上せず、通知書の内訳に沿って分ける。

この例は区分を示すためのもので、実際の税額ではない。還付通知と入金額を照らし合わせ、誰が受け取ったか、相続財産としてどのように分けるかも記録する。

未支給公的年金は、遺族固有の権利と一時所得を確認する

国民年金・厚生年金等の未支給年金は、所定の遺族が自己の名で請求する制度がある。国税庁の未支給国民年金の質疑は、遺族の固有の権利であり相続税の対象ではなく、受け取った遺族の一時所得と説明している。

日本年金機構の手続案内では、死亡当時に生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族という順序を示している。民法の相続人・相続割合でそのまま分ける制度ではない。

一時所得には最高50万円の特別控除があり、控除後の金額の2分の1を他の所得と合計するのが基本である。ただし、50万円は未支給年金だけに個別に認められる枠ではない。同じ年の他の一時所得も合わせ、国税庁の一時所得の計算に沿って申告が必要かどうかを確認する。

遺族年金や過払いの年金と混同しない

遺族基礎年金・遺族厚生年金は未支給年金とは別の給付で、原則として所得税も相続税も課されない。企業年金や個人年金には別の扱いがあるため、国税庁の遺族年金の案内と制度名を照らし合わせる。

死亡後に故人の口座へ振り込まれた年金でも、対象月によっては返還が必要になる。入金額をそのまま遺産や自分の収入として使わず、年金事務所等へ死亡日と対象期間を伝えて確認する。

茜の40万円が、所定の遺族として自分の権利で受け取る未支給公的年金なら、法定相続分で弟と分けるという考え方にはならない。

茜の一時所得としての計算も確認する。同じ年にほかの一時所得がなく、特別控除を使えない事情もないという仮定なら、40万円は最高50万円の特別控除の範囲内だ。

別の一時所得があれば合わせて計算する。未支給年金だけに、別枠で50万円の控除があるわけではない。

一方、還付30万円は相続財産、還付加算金2,000円は相続人の雑所得という区分がある。120万2,000円という入金総額を、最初に二等分するのが適切でなかった理由がここで分かる。支払われたお金を後で分ける話の前に、制度ごとの受取人と税目を確かめる必要がある。

120万2,000円を、最初から二等分しない

茜・晴の説明用の例。給与50万円の支給期は父の死亡後、還付は準確定申告に係る還付金、未支給公的年金は茜の固有の権利という仮定だ。

相続財産として確認する:80万円
給与50万円+還付金30万円。相続税の対象となる財産として整理する。
相続人の雑所得として確認する:2,000円
還付加算金。還付金本体とは分ける。
茜の一時所得として確認する:40万円
所定の遺族として受け取る未支給公的年金。自動的に姉弟で半分にする出発点ではない。

上の額は税額ではない。税の申告の要否・実際の分け方・同じ年のほかの一時所得は、別に確認する。

申告書へ転記する前の確認手順

  1. 死亡日前後の口座明細から、給与・家賃・配当・還付等の入金を拾う。
  2. 支払者ごとに通知、契約、対象期間、支払期日を集める。
  3. 相続税評価、準確定申告、相続人の所得を別々の欄で判定する。
  4. 既に残高や評価額へ含めた金額と二重になっていないか確認する。
  5. 不明なものは確認先と期限を記録し、判断保留のまま申告から落とさない。
  6. 申告後に見つかった入金は、既に提出した申告書との違いを確認する。

準確定申告の基本期限は、相続が始まったと知った日の翌日から4か月以内である。相続税の原則10か月とは別に管理する。準確定申告を相続人が行う手順も参考になる。

申告後に漏れが見つかったら、どの税の申告を直す必要があるかを確認する。修正申告は少なく申告した税額等を直す手続、更正の請求は多く申告した税額等の訂正を求める手続だ。

単純な見落としだけで、直ちに重加算税がかかるわけではない。隠蔽・仮装などの条件を別に確認する。判明した日、原因、通知が届いた日を残し、税理士等へ資料を示そう。

茜と晴は、入金一覧へ「支給期」「権利の持ち主」「相続税」「父の所得税」「受取人の所得税」の欄を足した。同じ入金を重ねて計上していないか、逆にどちらの申告からも落としていないかを、通知書と帳簿で照らし合わせる。

結論を急がずに内訳を調べると、相続人の話合いと、税の確認を分けられる。茜は勤務先の回答と年金の通知を保存し、晴は還付金の内訳を記録した。二人で確認すべきなのは通帳の合計額だけではなく、その一行ずつの意味だった。

ほかにも確認する手続がある場合は、保険・金融資産・デジタル・海外の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

亡くなった後の入金はすべて相続税の対象か

すべてではない。亡くなった時に故人へ帰属していた権利か、遺族の固有の権利か、各制度の扱いを確認する。

死亡後に支給日が来る給与は準確定申告に入れるか

国税庁は、死亡後に支給期が到来する給与を相続財産とし、給与所得の源泉徴収票の支払金額へ含めないとしている。支給期が死亡前に来ていた未払給与とは区別する。

家賃は死亡日まで日割りして相続財産に加えるか

常にそうするわけではない。亡くなった時に支払期日が未到来で、未収家賃もないという国税庁の質疑では、既経過分を算入しなくてよいとしている。契約と滞納の有無を確認する。

準確定申告の還付金と還付加算金は同じ税金か

還付金は相続財産として相続税、還付加算金は相続人の雑所得として扱う。通知書で内訳を分ける。

未支給年金は相続人の雑所得か

所定の遺族が固有の権利で受け取る未支給公的年金は、通常、その遺族の一時所得となる。非課税の遺族年金や企業年金等とは区別する。

本記事は一般的な情報を示すものである。具体的な手続や税務は、亡くなった日、財産、資料などを確認して判断する必要がある。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

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