死亡時の未収入金と相続税|給与・家賃・還付金・未支給年金

死亡時の未収入金と相続税|給与・家賃・還付金・未支給年金

死亡時の未収入金は項目別に判定

  1. 死亡時に請求権が成立していたか
  2. 相続税の財産評価を確認する
  3. 被相続人の準確定申告へ入る所得か確認する
  4. 相続人固有の所得・非課税給付と区別する
  5. 支払通知・契約・入金記録を保存する

被相続人の死亡後に入金された金銭を、すべて「未収入金」として同じ扱いにすることはできません。死亡時に存在した債権か、死亡後に相続人が固有の権利として取得した給付か、所得税の収入時期はいつかを項目別に分けます。

相続税の財産と準確定申告の所得は重なることがあり、どちらか一方だけとは限りません。準確定申告の基本期限は国税庁No.2022で確認します。

まず4つに分類する

分類 主な確認
死亡時の債権 期限到来済み家賃、売掛金、未払給与等 相続財産の評価と所得の収入時期
評価額へ利息等を含める財産 定期預金の既経過利子 財産評価基本通達
相続人固有の権利 一定の遺族が請求する未支給公的年金 相続税対象外・相続人の一時所得
死亡後に顕在化した相続財産 準確定申告の所得税還付金 還付金と還付加算金を分ける

未払給与・賞与

死亡日までの勤務に対応し、死亡時に被相続人の給与・賞与請求権が成立していた部分は、相続財産となる可能性があります。ただし、給与締日・支給日、就業規則、賞与決定日、死亡退職金としての支給かを確認します。

準確定申告へ含める給与所得の収入時期は、単に入金日が死亡後という理由だけで決めません。勤務先の源泉徴収票、支払通知、給与規程を取り寄せ、通常給与、未払残業代、賞与、死亡退職金、弔慰金を分けます。死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金等は、相続税法3条のみなし相続財産となる別制度があります。

地代・家賃

死亡前に支払期日が到来して未払いの地代・家賃は、契約上の債権として相続財産を検討します。一方、国税庁「支払期日未到来の既経過家賃」は、死亡日にその月の支払期日がまだ来ておらず未収家賃もない事例について、死亡日までの期間相当額を相続税の課税価格へ算入しなくて差し支えないとしています。

したがって「死亡日までの日割り家賃は常に相続財産」「死亡後入金なら全額が相続人の所得」という説明は避けます。賃貸借契約の支払期日、前払い・後払い、未収の有無、青色申告の経理方法を確認します。

売掛金・診療報酬・事業上の請求権

死亡時までに商品・役務の提供が完了し、被相続人に帰属する売掛金・報酬請求権は相続財産になり得ます。請求書を死亡後に発行したことだけで、死亡時に権利がなかったことにはなりません。

ただし、工事・委任・診療等の進行中業務、返戻・査定がある診療報酬、条件成就前の成功報酬は、死亡時に権利が確定していた範囲を個別に確認します。準確定申告では事業の収入計上基準と必要経費・貸倒れを税理士へ確認し、相続税の債権評価と混同しません。

預貯金の既経過利子

預貯金は、相続開始日の残高だけで評価するとは限りません。財産評価基本通達203では、原則として相続開始日に解約した場合に受け取れる既経過利子から源泉所得税相当額を控除した金額を残高へ加えて評価します。

定期預金・定額貯金等は金融機関の残高証明に既経過利子を記載してもらいます。普通預金等で既経過利子が少額なら残高だけで評価できる取扱いがあります。実際の死亡後入金利息と相続税評価額が同額とは限りません。

配当金

死亡前後の配当は、基準日、配当決議日、支払開始日、株式の帰属を確認します。死亡時に配当請求権が成立しているか、株式価値へ反映される期待権か、準確定申告・相続人の申告のどちらへ含めるかは、銘柄・決議・権利確定の時系列で判断します。

配当通知書と証券会社の年間取引報告書を保存し、「死亡後に入金された配当は全て相続人の配当所得」または「全て未収入金」と一括処理しません。

所得税の還付金と還付加算金

国税庁「被相続人の準確定申告に係る還付金等」は、準確定申告による還付金請求権を本来の相続財産としています。死亡後に顕在化しても、生前に潜在的な請求権が被相続人へ帰属していたと考えるためです。

これに対し、還付加算金は相続人が原始的に取得するものとして、相続人の雑所得となり、相続税の課税価格には算入しないとされています。還付通知書では元本と加算金を分けます。

未支給公的年金

国税庁「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」は、一定の遺族が自己の固有の権利として請求する未支給年金を相続税の対象外とし、その遺族の一時所得としています。最高裁平成7年11月7日判決が国民年金法上の未支給年金請求権の相続性を否定したことも示されています。

LegalScapeで確認した広島高裁平成29年1月27日判決も、未支給厚生年金について一定の遺族が自己の名で請求する制度を前提に相続財産性を否定した事案です。「未支給年金は相続財産」「受け取った遺族の雑所得」とする説明はいずれも修正が必要です。

遺族年金・保険給付と混同しない

遺族基礎年金・遺族厚生年金は、死亡した人の未支給年金とは別の給付です。公的年金制度に基づく遺族年金は原則として所得税が非課税ですが、企業年金、個人年金、生命保険の年金は契約と税法上の扱いが異なります。

給付名だけでなく、根拠制度、受給権者、保険料負担者、支給対象期間を確認します。

申告漏れと加算税

未収入金を申告から漏らした場合は、まず相続税の修正申告・更正、準確定申告の修正、延滞税等のどれが必要かを確認します。申告漏れがあれば重加算税が自動的に課されるわけではありません。

国税通則法68条の重加算税は、課税標準等の基礎となる事実の隠蔽・仮装など所定要件を前提とします。単純な見落とし、評価誤り、支払通知の到着時期、調査後の対応を区別し、判明日と経緯を記録します。

死亡後入金の確認手順

  1. 死亡日前後1年程度の全口座明細を取得する
  2. 入金ごとに支払者・対象期間・契約・支払期日を記録する
  3. 死亡時の請求権、相続税評価、所得の収入時期を別列にする
  4. 源泉徴収票・支払調書・還付通知・年金通知と照合する
  5. 相続税申告と準確定申告の両方へ反映したか確認する

準確定申告の作業は準確定申告を相続人が行う手順、4か月期限の流れは準確定申告のやり方も参照してください。

一覧表を申告資料として残す

項目、支払者、対象期間、死亡時の権利成立、相続税評価額、準確定申告、相続人の所得、根拠資料、申告書反映欄を一行ずつ記録します。判断保留も空欄にせず、確認先と期限を入れます。

「未収なら全て同じ」という処理を避け、国税庁の個別質疑がある項目はその事実関係と自分の事案が一致するかまで確認します。

本記事は一般的な相続税・所得税の説明です。契約、支払期日、権利確定、会計方法、給付制度により結論が変わります。通知・契約・口座記録を基に税務署の最新資料と税理士等の確認を併用してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

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