借地権の相続税評価とは、被相続人が保有していた借地権(他人の土地を借りて建物を建てる権利)を相続財産として金銭的に評価するプロセスとされています。借地権は「土地を使う権利」であるため、自用地(自己所有の土地)とは異なる計算方法が用いられます。
結論から言うと、借地権の相続税評価額は「自用地評価額×借地権割合」で算出されるとされており、借地権割合は路線価図に記載されたA〜Gのアルファベットで判定できる可能性があります。評価を正確に把握しておくと、申告額を適切にコントロールできる場合があります。
借地権、という言葉を聞いたことはあるだろうか。
「土地は借りているけれど、建物は自分のもの」──そういう状況で長年暮らしてきた親の相続が始まったとき、多くの人がここで初めて気づく。「あれ、この権利って、相続財産になるの?」と。
なる。がっつりなる。そして、評価の方法を知らないまま申告すると、税額が本来より大きくズレる可能性がある。プラスにもマイナスにも。
土地は親の名義じゃないのに、相続税がかかるって、どういうこと……?
で、結論から言うと──借地権は「土地を使う権利」として課税対象になる
相続税法上、借地権は「財産的価値のある権利」として明確に課税対象とされている(相続税法2条・相続税法基本通達10-2)。土地そのものを持っていなくても、その土地を使う権利に価値があると認められるのだ。
では、その「価値」をどう数字にするのか。ここが本題だ。
借地権の評価額は、シンプルにこう計算される。
借地権評価額 = 自用地としての評価額 × 借地権割合
自用地評価額とは、その土地をもし自分で所有していたら、相続税上いくらになるかという金額のこと。これに借地権割合を掛けることで、「使う権利の価値」が数字になる。

借地権割合という「謎の数字」の正体
ここで登場する借地権割合こそが、多くの人を一瞬フリーズさせる概念だ。
これは国税庁が地域ごとに定めたもので、路線価図または評価倍率表に記載されている。表示はアルファベット一文字。A〜Gの7段階で、それぞれ割合が決まっている。
- A:90%
- B:80%
- C:70%
- D:60%
- E:50%
- F:40%
- G:30%
たとえば、自用地評価額が5,000万円の土地に建つ家の借地権で、借地権割合がC(70%)だった場合、借地権の評価額は5,000万円×70%=3,500万円となる可能性がある。
3,500万円。決して小さくない数字が、「権利」として相続財産に加算されるのだ。
路線価図はどこで見るか。国税庁の「財産評価基準書」のウェブサイトから、誰でも無料で確認できる。市区町村名と地番を手元に置いて開けば、それほど難しくはない。
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借地権の種類によって、評価方法が「パカっと」変わる
ここから少しだけ、頭を切り替えてほしい。
借地権といっても、法律上いくつかの種類が存在する。そしてその種類によって、評価のルールが変わるのだ。これを把握せずに申告すると、計算が全然違う方向に転がる可能性がある。
- 普通借地権:借地借家法または旧借地法に基づくもの。先述の「自用地評価額×借地権割合」が基本となる。最も一般的なパターン。
- 定期借地権:存続期間が決まっている借地権(借地借家法22条〜24条)。評価は「自用地評価額×定期借地権の残存期間に応じた割合」となり、計算式が変わる。
- 使用貸借:親族間でタダで土地を借りているケース。これは借地権とは認められず、評価額はゼロとなる場合がある(相続税法基本通達9-8)。
特に使用貸借は見落とし注意案件だ。「借りている」というだけで自動的に借地権が発生するわけではない。地代の支払いが実態を左右するケースがあるため、権利証や賃貸借契約書の内容確認が先決だ。

評価額を正確に把握するための実践ステップ
で、実際にどう動けばいいか。手順を整理する。
-
ステップ1:契約書を探す
まず借地契約書の存在を確認する。普通借地か定期借地かを特定できる。地代の金額も確認。「タダで借りている」場合は使用貸借の可能性を検討する。 -
ステップ2:自用地評価額を算出する
国税庁の路線価図で対象土地の路線価を確認。路線価(千円単位)×地積(㎡)が基本の自用地評価額となる。形状や角地補正が必要な場合は別途係数を適用する可能性がある(財産評価基本通達13条〜)。 -
ステップ3:借地権割合を確認する
路線価図に記載されたアルファベット(A〜G)を確認し、対応する割合(30〜90%)を特定する。 -
ステップ4:借地権評価額を計算する
自用地評価額×借地権割合=借地権評価額。これを相続財産の一覧に加える。 -
ステップ5:底地権との関係を整理する
土地の所有者(地主)との関係を確認する。借地権と底地権は「表裏一体」の概念で、両者の評価額を合計しても自用地評価額と一致しないことがある。これは相続税評価の特性とされている。
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知っておくと申告が変わる「小規模宅地等の特例」との関係
借地権を語るうえで、もう一つ押さえておきたい知識がある。
小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)は、自用地だけでなく、借地権にも適用される可能性があるのだ。要件を満たした場合、借地権評価額を最大80%減額できる場合があるとされている。
具体的には、被相続人が事業に使っていた借地権や、相続人が居住に使っていた借地権(特定居住用宅地等)が対象となりうる。ただし適用には「申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割が成立していること」が原則として必要とされている。
申告期限後3年以内の分割見込書を提出することで、後から特例を適用できる場合もある(相続税法32条)。先に動いておくほど、選択肢の幅が広がる仕組みだ。
特例が使えるなら、ちゃんと評価額を計算しておいて正解だった。
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よくある質問
借地権は必ず相続財産になりますか
借地権は原則として相続財産に含まれるとされています(相続税法2条)。ただし、使用貸借(地代のやり取りがない場合)は借地権として評価されない場合があります。契約の実態を確認することが重要です。
借地権割合はどこで調べられますか
国税庁のウェブサイト「財産評価基準書」から確認できます。路線価図に記載されたA〜Gのアルファベットが借地権割合を示しており、A(90%)〜G(30%)の7段階で設定されています。
借地権の評価に小規模宅地等の特例は使えますか
要件を満たした場合、借地権にも小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)が適用される可能性があるとされています。適用には原則として申告期限までの遺産分割成立が必要ですが、分割見込書の提出により後から適用できる場合もあります(相続税法32条)。
定期借地権はどう評価しますか
定期借地権は普通借地権とは異なる方法で評価されるとされています。存続期間の残存年数に応じた割合を自用地評価額に乗じる方法が基本とされており、計算式が複数あるため、対象物件の契約内容の確認が先決です。
相続税の申告期限はいつですか
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされています(相続税法27条)。この期限までに借地権を含む全財産の評価と申告書の提出が必要になる場合があります。
手続きを終えてひと月後。路線価図のアルファベット一文字が何を意味するのか、スラッと言える自分になっていたとしたら。それはもう、相続の第一フェイズをクリアした証明だ。
借地権は「目に見えない財産」だが、数字にすると決して小さくない。知っておくだけで、申告の解像度が一段上がる。けっこうオススメです、この知識の事前仕入れ。伝わりましたかね。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。





