相続と認知された子。後から変わる相続人の構図

相続と認知とは、婚姻関係のない男女の間に生まれた子(非嫡出子)が、父親または母親から法的に親子関係を認められ、相続権を取得する仕組みとされています。

結論から言うと、認知された子は嫡出子と同等の法定相続分を持つ可能性があり、認知の有無・タイミング・方法によって相続の構図が大きく変わるとされています。

「認知」という言葉を聞いて、自分には関係ないと思っている人間が、この国にどれだけいるだろうか。

おそらく、かなりの数だ。

ところが実際には、被相続人が亡くなった後に「認知された子がいた」という事実が、まるで地雷原から踏み外したような衝撃とともに発覚するケースが、決して珍しくない。それも、相続手続きが「もうすぐ完了」というタイミングで。

困り顔

遺産分割の話し合いが終わりそうなのに、急に「認知した子がいる」って……どういうこと?

で、結論から言うと。認知された子は「相続人」である

で、結論から言うと、認知された子には正式な相続権が発生する。これは民法779条・887条が根拠だ。嫡出子(婚姻中の夫婦の間に生まれた子)も、非嫡出子(婚外で生まれ認知された子)も、法定相続分は同一。2013年の民法改正によって、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1という規定が撤廃された。

つまり、こういうことだ。

被相続人が過去に認知した子が一人でもいれば、その子は相続人の輪の中に「等しい立場」で加わってくる。妻との間に子どもが二人いたとしても、認知された子が一人加わった瞬間、法定相続分の計算式は丸ごと書き換えられる。

そして、この現実に気づかないまま遺産分割協議を進めると、相続人全員の合意が必要な遺産分割協議(民法907条)が根本から無効になる可能性がある。一人でも欠けると無効、というルールは、認知された子にも当然適用されるからだ。

図解

認知には種類がある。把握しておきたい3つのパターン

ひとくちに「認知」と言っても、いくつかの種類があって、それぞれ手続きも時期も異なる。ここを知っておくだけで、相続の場面での反応速度がグッと変わる。

  • 任意認知:父親が自ら市区町村の役所に認知届を提出する方法(民法781条1項)。生前にも、遺言によっても可能。
  • 遺言認知:遺言書の中で認知の意思を示す方法(民法781条2項)。父親の死後に効力が発生する。つまり、亡くなった後に初めて「認知された子」が現れることがある。
  • 強制認知(裁判認知):父親が認知を拒んだ場合、子の側が家庭裁判所に認知の訴えを起こす方法(民法787条)。父親の死後も訴え提起可能(死後3年以内)。

特に恐ろしい、もとい「知っておくと圧倒的に役立つ」のが遺言認知と強制認知のパターンだ。父親が生前に何も言わなかったとしても、遺言書の中に「○○を認知する」と書かれていたり、死後に認知の訴えが提起されたりすることで、相続の構図が後からひっくり返ることがある。

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認知された子が突然現れたとき。相続手続きはどうなるか

では、具体的にどう動けばいいか。パニックにならないためのアクション・ステップを整理しよう。

ステップ1:相続人を確定させる「戸籍収集」が最優先

相続手続きの大原則は、まず「誰が相続人か」を確定させることだ。そのためには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を取り寄せる必要がある。この作業の中で、認知された子の存在が浮かび上がってくることがある。

戸籍の収集は、被相続人の最後の本籍地の市区町村から始め、転籍の記録をたどりながら順番に取り寄せていく。これを「戸籍の連続性を確認する」と言う。手間はかかるが、この作業が相続人の見落としを防ぐ第一関門だ。

ステップ2:認知された子が判明したら、遺産分割協議をやり直す

すでに遺産分割協議を進めていたとしても、認知された子が相続人として確定した場合は、その子を含めた全員で協議をやり直すことになる(民法907条)。協議が成立していないうちに手続きを進めると、後から協議の有効性を巡るトラブルが生じる可能性があるため、相続人の確定は「他の手続きより先」に完結させたい。

ステップ3:相続税の申告期限(10ヶ月)を意識しておく

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内(相続税法27条)。遺産分割協議が整っていなくても、法定相続分で仮の申告(未分割申告)をすることができる(相続税法55条)。協議成立後は修正申告または更正の請求で税額を修正できるため(相続税法32条)、「認知の問題で協議が長引いている」という理由で申告そのものを放置することは避けたい。

図解

ステップ4:遺留分の問題を把握しておく

認知された子にも遺留分は認められる(民法1042条)。仮に遺言書があり「認知された子には財産を渡さない」と書かれていたとしても、その子は遺留分侵害額請求権を行使できる可能性がある。この請求権の時効は、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年・相続開始から10年(民法1048条)。

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事前に知っておくだけで、動きが変わる

「認知された子がいるかもしれない」という可能性を、被相続人の生前に把握しておくことができれば、相続開始後の動きは驚くほどスムーズになる。具体的には、こうだ。

  • 被相続人の戸籍を生前に(本人の同意のもとで)確認しておく
  • 遺言書がある場合は、認知に関する記述がないか確認する
  • 相続開始後すみやかに、出生から死亡までの全戸籍を収集する
  • 相続人が確定する前に、遺産分割協議を「完了」させない
  • 認知された子が判明した場合、その子の連絡先を弁護士等を通じて探索することを検討する

難しいことを並べているようで、要するに「誰が相続人か、ちゃんと確認してから動く」というだけの話だ。それだけで、後から来る「全員合意が必要なのにやり直し」という疲労感の嵐を、かなりの確度で回避できる。

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ホッとした顔

戸籍さえちゃんと集めれば、最初から全員で話し合いができるんだな。それなら動ける気がする。

相続人の確定という、一見地味に見えるこの作業が、実は相続手続き全体の「土台」になっている。この土台がズレていると、その上に積み上げたものが全部傾く。認知の問題はその典型例だ。

戸籍を取り寄せる。それだけで「知ってよかった」と思える日が来る。

けっこうオススメです、早めの戸籍収集。伝わりましたかね。

よくある質問

認知された子の相続分は、嫡出子と異なりますか

2013年の民法改正により、認知された子(非嫡出子)の法定相続分は嫡出子と同等とされています(民法900条)。それ以前に相続が開始した案件については異なる取り扱いとなる場合があり、個別の事情によって判断が変わる可能性があります。

父親の死後に認知の訴えを起こすことはできますか

父親の死後であっても、検察官を被告として認知の訴えを提起できるとされています(民法787条)。ただし、父親の死亡を知った時から3年以内という期限が定められている場合があります。具体的な状況によって判断が異なる可能性があります。

認知された子が判明したのが遺産分割協議の後でした。協議は有効ですか

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要とされており(民法907条)、相続人が一人でも欠けている場合、その協議は無効となる可能性があります。認知された子が後から判明した場合、その子を含めた全員での協議をやり直す必要が生じる場合があります。

遺言書で「認知した子には財産を渡さない」と書かれていた場合はどうなりますか

認知された子にも遺留分が認められています(民法1042条)。遺言の内容が遺留分を侵害している場合、その子は遺留分侵害額請求権を行使できる可能性があります。請求権の時効は、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年・相続開始から10年とされています(民法1048条)。

認知された子の存在を確認するには、どうすればよいですか

被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を収集することで、認知の記録を確認できるとされています。戸籍は被相続人の最後の本籍地から順にさかのぼって取り寄せる方法が一般的です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

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