遺産分割調停が3年かかることはある?長期化の原因と期限管理

調停から帰り、次の期日を手帳に書く。また一つ、予定が先へ延びた。初めて裁判所へ行った頃には、これほど何度も同じ話をするとは思っていなかった。

「遺産分割調停は3年かかる」と聞けば、まだ耐えるしかないのかと思う。反対に「普通はすぐ終わる」と言われても、目の前の問題は消えない。知りたいのは平均の一言より、いま何が決まらず、次に何をすれば進むのかだろう。

遺産分割事件が3年を超えることはある。ただし、調停が平均3年かかるという意味ではなく、3年たてば自動的に終わる制度でもない。相続人、財産、評価、分け方のどこに争いがあるかで、必要な作業が変わる。

「3年超」はある。けれど統計の読み方に注意したい

最高裁判所の令和7年司法統計年報・家事編第45表では、2025年中に終局した遺産分割事件は1万6,431件。その審理期間をまとめると、次のようになる。

審理期間 件数 全体に占める割合
1年以内 1万1,158件 約67.9%
1年超2年以内 3,839件 約23.4%
2年超3年以内 962件 約5.9%
3年超 472件 約2.9%

1年以内の数字は、原表の1月以内、3月以内、6月以内、1年以内の各区分を合計したものだ。割合は丸めている。

この表は審判と調停を含む遺産分割事件の集計で、調停成立だけでなく、認容、調停に代わる審判、取下げなどの終局区分を含む。全件が「話合いで円満に解決した」という数字ではないし、調停だけの平均期間を示すものでもない。

当年末にまだ終わっていない事件は、この終局事件の集計には入らない。家族が裁判所へ来る前に話し合っていた期間まで一律に示す表でもない。自分の事件が必ず1年で終わる、3年を超えたら異常だ、と判定するための数字にはしない方がよい。

止まっているのは、どの話か

遺産分割で決めることは、最後の「誰が何をもらうか」だけではない。そこへ進む前に、誰が当事者か、何が遺産か、いくらと評価するか、相続分を調整する事情があるかを整理する。

例えば、兄が「この土地は父の財産ではない」と言い、妹が「父の土地だから半分ほしい」と言っている場面を考える。半分にする方法を話し続けても、その前提がそろっていない。これは分け方より先に、遺産の範囲を確認する問題だ。

反対に、父の土地であることも値段も合っているが、兄は住み続けたい、妹は現金を受け取りたいという場合は、代償金や売却など分割方法の問題になる。必要な資料も、次に相談する内容も違ってくる。

相続人が確定せず、連絡も届かない

前婚の子、代襲相続、相続人の死亡による数次相続などがあると、戸籍をたどり、当事者や住所を確かめる作業が増える。必要な当事者を外したまま、今いる人だけで終えることはできない。

単に返事をしない人と、所在が分からない人も別だ。所在不明の場合には、不在者財産管理人や権限外行為許可などの検討が必要になることがある。裁判所からの連絡への対応は、調停の呼出しを無視された場合の流れも確認したい。

遺産の範囲や値段が合わない

預金の取引履歴、非上場株式、賃貸物件、境界がはっきりしない土地。資料の取り寄せや評価には、それぞれ作業がある。「不動産は高いはず」という意見だけでは、他の相続人も判断しにくい。

評価資料をそろえ、必要に応じて鑑定等を検討する。査定額や税務上の評価額を出したときは、それが何を目的に、どの時点で算定した金額かも確認する。同じ土地の数字でも、意味が違うことがある。

昔の援助や介護の話が、金額に結び付かない

「兄は昔ずいぶん援助してもらった」「自分が介護を引き受けた」。本人にとっては家族の歴史そのものだが、特別受益や寄与分として考慮できるかは、法律上の要件と資料で整理する必要がある。

いつ、誰から、いくら、何のために受け取ったのか。介護なら、期間、内容、本人の状態、費用、ほかの援助はどうだったか。気持ちを無理に消す必要はないが、主張と、それを裏付ける記録は分けて用意したい。

希望する分け方に、支払うお金が伴わない

一人が家を取得し、ほかの相続人へ代償金を払う案でも、払える見込みが立たなければ話が進みにくい。借入れの可否、手元資金、支払期限を示す必要がある。

現物で割り振る案、売って代金を分ける案、ほかの遺産で調整する案も並べてみる。「家を残したい」という希望から、実際に合意できる条件へ移るための作業になる。

別の裁判を待つ必要がある場合もある

遺言が有効か、ある人に相続人の地位があるか、問題の財産が遺産に含まれるか。こうした前提問題に重大な争いがある場合、訴訟で確定させることを検討する。

家庭裁判所が前提問題を判断できないという意味ではない。しかし、その判断だけでは権利関係が終局的に確定せず、後の訴訟で異なる判断が出れば分割の効力に影響し得る。どの問題を先に、どの手続で解くかが大切になる。

実務書が取り上げる名古屋高裁2003年3月17日決定も、重要な前提問題等がある場合の遺産分割禁止に関する裁判例の一つだ。現行民法908条は、特別の事由があるときに家庭裁判所が一定期間の分割を禁止する仕組みを定めている。

これは「3年たったから禁止になる」「争いさえあれば無期限に止められる」という制度ではない。現在の規定では一回の期間は5年以内で、更新を含む終期にも相続開始から10年という制限がある。古い相続では経過措置も確認する必要がある。

前提訴訟を起こすか、調停を続けながら何を整理するか、取下げをするか。期限への影響もあるため、単に疲れたから一度取り下げようと決める前に、弁護士と手続全体を確認したい。

途中で相続人が亡くなっても、必ず白紙には戻らない

長い手続の途中では、相続人の一人が亡くなることもある。そのたびに、これまでの調停がすべて無効になって最初からやり直し、というわけではない。法令上の資格を持つ承継人が手続を受け継ぐ仕組みがある。

ただ、誰がその立場を受け継ぐかを戸籍や遺言等で確かめる作業は生じる。新たな当事者が増えれば、連絡先や主張を整理する必要もある。既に参加している人が承継する場合を含め、必要な手続は裁判所へ確認する。

亡くなったという連絡を受けたら、死亡日や分かっている家族関係を早めに伝える。これまでの書類を捨てたり、独断で新しい人を除外したりしないことだ。

不成立は、相続を諦めることではない

遺産分割調停で合意できず不成立になると、原則として審判へ移行し、裁判官が判断する。通常、同じ内容を一から申し立て直す必要はない。

ただし、単に期日に行かなければ自分に有利に進むものではない。財産や評価、希望する分け方、代償金の支払能力などの資料は審判でも重要になる。

調停を続ける余地があるのか、合意の見込みが乏しく審判で判断すべき段階なのかを確認する。調停で弁護士への依頼を検討する基準も、現在の争点に照らして読むと役に立つ。

調停の時計とは別に、税と登記の時計が動いている

調停が終わっていないからといって、ほかの手続も一緒に待ってくれるわけではない。特に次の期限を確認しておきたい。

相続税は、必要なら原則10か月以内

未分割でも、相続開始を知った日の翌日から10か月以内という原則の申告・納付期限は変わらない。未分割財産は民法上の相続分等によって取得したものとして計算する。

分割後には修正申告や更正の請求を検討する。配偶者の税額軽減など分割が関わる特例は、申告時の添付書類、申告期限から3年という期間、やむを得ない事情がある場合の承認手続などもある。調停をしているだけで自動的に特例が保たれると考えず、税理士へ状況を伝える。

相続登記は、調停中の対応も確認する

相続で不動産を取得したことを知った日から、原則3年以内の申請義務がある。2024年4月1日より前の相続で既に取得を知っていた不動産についても、原則2027年3月31日までの対応が必要となる。

分割が終わらず結果に基づく登記ができないときは、相続人申告登記などを確認する。申告しただけで最終的な名義変更が済むわけではない。分割成立後には、結果を反映する登記の義務も改めて確認する。

相続開始から10年のルールは、調停開始から数えない

民法904条の3は、相続開始から10年を経過した後の分割について、特別受益・寄与分による調整を原則として制限する。ただし、期間内に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合などは例外となる。

2023年4月1日より前の相続には経過措置があり、原則として、相続開始から10年を経過する時と、2028年3月31日までの猶予期間の満了時の、いずれか遅い方を確認する。10年で遺産分割そのものができなくなる、という話ではないし、全員の合意による調整まで一律に否定するものでもない。

家族内で話合いを続けていることと、家庭裁判所への請求は別だ。既に申し立てた調停を取り下げる場合も、再申立てと期間制限の関係を確認する必要がある。

次の期日までに、何を終わらせるか

手帳には次の期日だけでなく、その日までの作業を一つ書いてみる。戸籍が足りないなら必要な戸籍の取得。価格が争点なら評価資料。代償金なら資金の確認。裁判所や代理人に、今回残った論点と次の提出物を確認する。

主張は日付、金額、根拠資料と対応させる。同じ説明を何度も書くより、新しく確認できたことと未解決のことを分ける。弁護士へ依頼する場合は、遺産分割の費用見積りで、調停・審判や別訴訟の範囲も確認したい。

資料をそろえても終了日を約束できるわけではない。それでも「また来月」だけだった予定が、「次はこの問題を判断できるようにする」に変わる。長くなった手続を見直すときは、そこから始めてよい。

公的資料・根拠

よくある質問

遺産分割調停は平均3年かかりますか

平均3年という意味ではない。令和7年の審判・調停を含む遺産分割終局事件では、3年超は約2.9%だった。個別の終了時期を保証する統計ではない。

3年たつと調停は自動的に終わりますか

3年という一律の終期はない。合意成立、不成立からの審判移行、取下げなどによる。

調停中に相続人が亡くなると最初からですか

必ず白紙に戻るわけではない。法令上の資格を持つ承継人が手続を受け継ぐ仕組みがあり、必要資料等を裁判所へ確認する。

不成立なら審判を申し立て直しますか

遺産分割調停が不成立になると、原則として審判へ移行し、通常は同じ申立てを一からし直す必要はない。

調停中なら相続税申告を待てますか

原則として待てない。申告が必要なら未分割でも通常10か月以内に申告・納付し、分割後の修正や更正の請求等を確認する。

本記事は一般的な情報提供です。個別の対応は、相続開始日、本人の状況、財産・家族関係の資料を示して弁護士・税理士等へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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