相続税はいくらから:預金・実家・保険を確認する

相続税はいくらから?預金・実家・保険と基礎控除を家族の例で考える

相続税は、財産を受け継ぐたびに必ずかかる税ではない。まず、税の決まりに沿って財産や借金等を整理し、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除と比べる。

預金だけで判断したり、家の売値へいきなり税率を掛けたりすると、出発点を間違えてしまう。保険や生前贈与も調べよう。

この記事は「そもそもうちは相続税を調べる必要があるのか」という入口を扱う。以下の尚子と、子の真帆・修平の家族は制度を説明するための架空の例で、実際の相談を紹介したものではない。

通帳には2,000万円。なのに「基礎控除以下」とは決まらない

父の葬儀を終えた週末、真帆は実家の食卓で通帳を並べた。普通預金と定期預金を合わせて2,000万円。「三人なら4,800万円までは大丈夫らしいよ」。母の尚子は、その言葉を聞いて少し肩の力を抜いた。

弟の修平は、食器棚の引き出しにあった固定資産税の封筒を出した。「この家は入れなくていいの?」。尚子にとって家は、明日の朝も起きてお茶をいれる場所だ。売るつもりもない。それでも、父が持っていた土地と建物なら、相続税の財産調査から外すことはできない。

この例では、相続税の計算に使う土地の評価額を5,000万円、建物を500万円、預金を2,000万円とする。

ほかの財産や借金、生前贈与の加算等はないものとして、まず土地の特例を使う前の数字を見よう。

父が持っていた財産 説明用の相続税評価額
自宅の土地 5,000万円
自宅の建物 500万円
預金 2,000万円
合計 7,500万円

通帳だけなら2,000万円だった数字が、家を加えると7,500万円になった。ここで重要なのは「普通の家でも怖いぞ」と脅すことではない。手元の現金と、税金の計算に入る財産は、範囲が違うと理解することだ。尚子が家を売る予定がなくても、その違いは残る。

なぜ「いくらから」という線があるのか

相続税には、大きな財産の一部を社会へ戻す役割がある。財産の集中や経済的な差が、世代を超えて固定することを和らげるためだ。

一方、家や蓄えは遺族の暮らしの土台でもある。そのため、少額の相続でも最初の一円から税を計算する仕組みにはしていない。

そこで設けられている基本の線が、基礎控除だ。尚子たちの法定相続人は、妻の尚子と子二人の計三人なので、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となる。

法定相続人の数 基礎控除 よくある家族構成の例
1人 3,600万円 配偶者がおらず子一人
2人 4,200万円 配偶者と子一人、または子二人
3人 4,800万円 配偶者と子二人、または子三人
4人 5,400万円 配偶者と子三人など

基礎控除は、家族の生活費を個別に見積もった額ではない。法律で決まった共通の基準だ。

母の年金が少ないから今回は増やす、と自由には変えられない。配偶者や住まいについては、別の軽減・特例も用意されている。

また、財産を実際に受け取る人数を数えればよいわけでもない。真帆が何も受け取らない分け方でも、直ちに二人として計算することにはならない。相続放棄や養子がいる場合の数え方も含め、基礎控除の計算と人数の扱いを先に確認したい。

基礎控除と比べる前に、何を足して何を引くか

「家と預金を足せば終わり?」と真帆が聞くと、修平は父の保険証券を食卓へ置いた。尚子は、まだ支払っていない入院費の請求書を持ってきた。財産調査は、足し算だけでなく引き算も必要だ。

  • 持っていた財産:預貯金、土地・建物、株式、現金など。ネット銀行やネット証券の口座も調べる。
  • 死亡をきっかけに受け取るお金:死亡保険金・死亡退職金などは、相続税の対象になる場合がある。保険料を誰が負担したかなどで税目も変わる。
  • 非課税になる部分:所定の死亡保険金・死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある。ただし受取人などの条件があり、誰が受け取っても同じではない。
  • 差し引けるもの:確実な借金、まだ払っていない費用、所定の葬式費用など。お墓の購入費や法要の費用まで、すべて引けるわけではない。
  • 生前に渡した財産:相続時精算課税の適用財産や、一定期間内の暦年課税の贈与など、加算が必要なものを確認する。

借金を引くのは、借りたお金まで家族の純粋なもうけと数えないためだ。例えば財産が6,000万円あっても、返すべき借金が2,000万円なら、手元に残る力は同じ6,000万円の無借金の家族とは違う。何が債務(借金など、支払い等をしなければならない義務)として引けるかは、債務控除の理由と対象で詳しく説明している。

贈与も、もう父の名義ではないから無関係、とは限らない。

2026年12月31日以前に始まる相続では、暦年課税の贈与を加算する対象期間は、相続開始前3年以内だ。その後は死亡日に応じて段階的に延びる。すべて7年とまとめて扱わないようにしよう。

相続時精算課税は、別の計算になる。贈与の日付と、使った制度を分けて確かめる。

2,700万円超えている。それは納税額ではない

ほかの調整がない最初の仮定に戻ると、7,500万円−基礎控除4,800万円=2,700万円だ。修平が「2,700万円も払ったら預金が足りない」と言い、尚子の顔が曇った。

基礎控除を超えた額と、税額を分ける

尚子と子二人の架空の例だ。土地の特例と個人ごとの軽減等は、まだ使わない。

① 税の計算対象を出す
7,500万円 − 4,800万円
= 2,700万円
これは納税額ではない。
② 法定相続分で仮に分け、税率を使う
母:1,350万円 × 15% − 50万円
= 152万5,000円
子:一人につき 675万円 × 10%
= 67万5,000円
三人分の合計= 287万5,000円
③ 各人が払う額は、この先で確かめる
総額を実際に受け取る割合へ配分し、各人の加算・軽減・控除を確認する。

法定相続分は、法律で定める相続の割合だ。この仮の計算で、家や預金の実際の分け方が決まるわけではない。

この287万5,000円も、最終的な家族の納税総額と決まったわけではない。配偶者の軽減や土地の特例などを使う前だからだ。計算の順番を追いたい場合は、相続税の計算方法へ進んでほしい。いまは「超えた額=払う額」ではないと押さえればよい。

家を売らずに済むための特例は、何を守っているのか

尚子が気にしているのは、家の評価額より「ここで暮らし続けられるか」だ。住まいの土地を、すぐに現金へ換えられる預金と同じように扱うと、納税のために生活の場所を手放す問題が生じる。その負担に配慮する仕組みの一つが、小規模宅地等の特例である。

自宅の土地に使う代表的な区分では、条件を満たせば、330㎡までの評価額を80%減らせる。

尚子が受け取る自宅の土地を200㎡とし、その全体に特例を使える条件を満たすとしよう。5,000万円の土地は、税の計算上1,000万円となる。

土地1,000万円+建物500万円+預金2,000万円=3,500万円。基礎控除4,800万円以下なので、この仮定では相続税がかからなくなる。

ただし、特例を使った結果のゼロだ。適用を受けるための申告は必要になる。土地の売値が1,000万円へ下がるわけでも、家族の分け前が自動的に決まるわけでもない。

取得するのが配偶者か同居親族か別居親族か、相続前の土地の使い方、分割や申告などで条件が変わる。古い実家だから必ず使える、という制度ではない。小規模宅地等の特例の条件を確認したい。

配偶者の税額軽減には、夫婦で築いた財産や、残された配偶者の生活への配慮もある。

ただし、母の税がゼロでも、子までゼロになるとは限らない。母へ多く集めれば、次の相続や、各人が持つ現金も変わる。今回の税額だけで分け方を決めないことが大切だ。

申告するか、いくら払うか、現金が足りるかを分ける

三人は、食卓のノートを三つの欄に分け直した。「申告が必要か」「特例を含めた税額はいくらか」「その人が払える現金はいくらか」。最初は一つだった心配が、調べる項目へ変わった。

相続税の申告・納付が必要なら、原則として、死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う。分割の話合いが終わるまで、自動的に延びるわけではない。

未分割で期限を迎える場合は、未分割の財産には使えない特例を適用せずに申告・納付し、後で分割した場合の手続を検討する。分割見込書だけで、無条件に特例を使えると決まるわけではない。

そして、税金がゼロでも、家を受け取る人からほかの相続人へ渡す代償金(遺産を多く受け取る人から、ほかの相続人へ渡す調整のお金)や、その後の修繕費・生活費が必要になることはある。反対に、基礎控除を超えたからといって、必ず家を売ると決まるわけでもない。家を残すために相続税・代償金・生活費を分ける考え方も、その先の判断に役立つ。

尚子たちの次の作業は、売却先を探すことではなかった。父名義の財産を一つの一覧へ集め、土地の評価と特例の条件を確認し、尚子の暮らしに必要なお金も書き出すことだった。「いくらから」を知る意味は、怖がるための線を覚えることではない。自分たちに必要な確認を、順番に進めるためである。

確認に使った公的資料

ほかにも確認する手続がある場合は、相続税の申告・納付・調査の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

相続税はいくらからかかりますか

正味の遺産額が基礎控除を超えるかが入口となる。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、一人なら3,600万円、二人なら4,200万円、三人なら4,800万円だ。特例で税額が変わる場合がある。

預金が基礎控除以下なら申告不要ですか

預金だけでは判断できない。不動産・株式・死亡保険金などを調べ、非課税部分、債務・葬式費用、生前贈与の加算などを整理して比べる必要がある。

基礎控除を超えた額を納税しますか

超えた額は税額ではなく、税金を計算する対象となる額だ。法定相続分による総額の計算、実際に受け取る割合への配分、各人の加算・控除などを経て納税額を求める。

自宅の特例で相続税がゼロなら申告しなくてよいですか

小規模宅地等の特例を使った結果、基礎控除以下になる場合は、特例を受けるための申告が必要だ。特例を使う前から基礎控除以下である場合と区別する。

相続税がかかると家を売らなければいけませんか

直ちに売却と決まるわけではない。土地の特例、配偶者の軽減、受け取る人、納税に使える現金を確認する。税金とは別に、ほかの相続人への代償金や生活費も考える必要がある。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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