遺留分侵害額請求の方法|1年・10年の期限と通知・調停・訴訟

遺留分侵害額請求の方法|1年・10年の期限と通知・調停・訴訟

冒頭の場面は、相続で起こり得る問題を説明するための仮想例だ。

親の遺言を見たら、財産のほとんどをきょうだい一人へ渡す内容だった。自分にも遺留分があると聞いたが、誰に、いつまでに、何を伝えればよいのか分からない。このような場合は、金額の調査と並行して、権利を行使する期限を確認する。

遺留分侵害額請求では、相手方への意思表示と、その後の金額算定・支払請求を分けて進める。調停を申し立てただけで通知が済むわけではなく、一度通知すれば永久に期限を気にしなくてよいわけでもない。

最初に、相続開始日と請求できる立場を確認する

2019年7月1日以後に開始した相続では、民法1046条に基づき、遺留分を侵害された額に相当する金銭の支払いを求める。不動産の持分が当然に自分へ戻る制度ではない。それより前に開始した相続には旧制度が適用されるため、亡くなった日を先に確認する。

遺留分を有するのは、兄弟姉妹以外の相続人だ。配偶者、子やその代襲者、相続人となる直系尊属などが該当する。故人の子としてきょうだい間で争っている場合と、故人自身の兄弟姉妹が相続する場合を混同しないようにしたい。

相続放棄や遺留分放棄の有無も確認する。単に「取り分が少ない」と感じるだけで請求できる額が決まるわけではない。基本は遺留分の仕組み、不公平に感じる分配の確認は兄弟間の相続が不公平に見える場合も参照できる。

1年と10年の期限を別に管理する

民法1048条は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって請求権が消滅すると定める。さらに、相続開始の時から10年という期間もある。

1年は、すべての事案で死亡日から数えるものではない。しかし、財産の正確な評価額を計算し終えるまで始まらない、弁護士から制度を教わった日から数えればよい、とも限らない。いつ遺言や贈与を知り、どのような財産状況を把握していたかが問題になる。

遺言を受け取った日、贈与の資料を見た日、家族から説明された日を、メールや郵便物とともに残す。起算点に争いがありそうな場合も、遅い日を採用できると期待して待たず、早い段階で権利行使の方法を確認する。詳しくは遺留分の時効と知った時期にまとめている。

請求する相手を特定し、権利行使の意思を伝える

請求の相手は、遺留分を侵害する遺贈や贈与を受けた人だ。遺言執行者や家族の代表者に相談しただけで、請求すべき相手全員に意思表示が届いたことになるとは限らない。

相手が複数いる場合は、誰が何を受け取ったかを整理する。民法1047条には、受遺者が受贈者より先に負担すること、時期の異なる贈与では後の贈与から負担することなどのルールがある。相手方ごとの負担順序と限度を確認し、必要な通知先を漏らさない。

通知では、誰の相続について、どの遺贈・贈与により遺留分を侵害され、遺留分侵害額請求権を行使するのかを明確にする。単なる財産照会や「納得できない」という抗議だけでは、権利行使の意思を示したか争いになり得る。

金額が未確定でも、通知を後回しにしない

遺留分侵害額請求権を行使する時点で、具体的な金額まで確定している必要はないと解される。期限が迫る場合には、権利行使の意思を明確に伝えたうえで、調査・評価を進めて請求額を算定する方法を検討する。

内容証明郵便は法律上唯一の通知方法ではないが、通知内容の証拠を残すために利用される。配達証明も付け、相手方にいつ届いたかを確認できるようにするとよい。内容証明の控えだけで到達まで証明できると考えないことが大切だ。

発送した郵便が戻ってきた、相手の住所が不明、受取人が違っていたという場合は、そのまま放置しない。意思表示の到達や適切な送付方法が問題になるため、戻った封筒や追跡記録を保存して対応を相談する。

財産・贈与・債務を集め、請求額を計算する

通知後は、故人の財産一覧、遺言、贈与の資料、不動産の評価、預貯金・有価証券、借金の資料などを集める。自分が受けた贈与や、取得する遺産、承継する債務も請求額に関係するため、相手が得た財産だけを見て計算しない。

戸籍で相続人を確定し、遺留分の算定基礎となる財産を整理して、自分の遺留分と実際の侵害額を計算する。そのうえで、相手方ごとの負担額を検討する。計算の入口は遺留分の計算方法を参照できる。

不動産の評価額や過去の贈与に争いがある場合は、争点と根拠資料を分ける。何が不明で、どの資料を誰から集める必要があるかを明らかにすると、その後の交渉を進めやすい。

話合いが難しい場合は家庭裁判所の調停を利用する

当事者間で話合いがつかない場合や、直接の協議が難しい場合は、遺留分侵害額の請求調停を利用できる。申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所だ。

裁判所案内では収入印紙1,200円分と連絡用郵便料が必要で、戸籍、遺言書の写し、遺産や債務の資料などを提出する。申立書の写しは相手方の人数分を用意する。郵便料の納付方法や追加資料は、申立先の案内を確認する。

裁判所は、調停を申し立てただけでは相手方への権利行使の意思表示にならないと明示している。期限が近い場合に、申立書がいつ相手へ届くかだけに頼らず、別途通知する必要がある。

調停で合意できなかった場合、遺産分割調停のように当然に審判へ移って金額が決まるわけではない。請求を続けるなら、請求額等に応じて地方裁判所または簡易裁判所での民事訴訟を検討する。調停資料や相手の回答を引き継げるよう保存する。

請求後に生じる金銭債権にも、別の時効がある

遺留分侵害額請求権を行使すると、具体的な金銭債権が発生する。この債権には、民法1048条の1年とは別の消滅時効が問題になる。

現行民法166条では、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という期間が定められている。実際の起算点、旧法の適用、時効の完成猶予・更新の有無は個別に確認する。「通知済みだから、回収はいつでもよい」と考えて放置しない。

請求額が決まった後は、具体的な支払請求、支払期限、分割払いの条件、合意内容の書面化を検討する。詳しくは遺留分請求後の金銭債権の時効を参照できる。

相談には、通知の履歴と期限の資料を持参する

相続の相談窓口には、遺言書、家族関係、財産の資料、いつ何を知ったか、相手へすでに伝えた内容を示す。内容証明や調停の書類があれば、控えと到達の記録も用意する。資料が不足していても、期限が迫っていることを先に伝えると、通知を含めた初動を整理しやすい。

よくある質問

遺留分の1年は死亡日からですか

一律に死亡日からではない。相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から数える。相続開始から10年という別の期間もある。

内容証明郵便は必須ですか

法律上唯一の方式ではないが、通知内容の証拠を残すために利用される。配達証明等も用い、相手方への到達を確認する。

調停を申し立てれば意思表示になりますか

調停の申立てだけでは相手方への権利行使の意思表示にならないと裁判所は案内している。申立てとは別に通知する。

請求時に金額確定が必要ですか

権利行使の意思を明確に示せば、具体的な金額の確定前でも行使できると解される。その後、資料に基づいて侵害額を算定し、支払いを求める。

兄弟姉妹も請求できますか

故人自身の兄弟姉妹には遺留分がない。故人の子としてきょうだい間で相続する場合とは区別する。

本記事は一般的な情報提供です。個別の期限や必要な手続は、相続の経緯と資料を示して管轄窓口や専門家へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

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