遺留分侵害額請求は、一定の相続人が、遺留分を侵害する贈与・遺贈を受けた人へ金銭の支払を求める権利です。家庭裁判所への調停申立てだけでは相手方への権利行使の意思表示になりません。
相続開始と遺留分侵害を知った時から1年、相続開始から10年という期間を管理し、相手方へ意思表示を到達させた証拠を残します。その後に生じる金銭債権は別の消滅時効で管理します。
請求できる人と請求の相手
遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です。配偶者、子・代襲相続人、直系尊属が該当し得ます。請求相手は、遺留分を侵害する遺贈・贈与を受けた人です。複数いる場合は民法1047条の負担順序・限度を確認します。
2019年7月1日以後に開始した相続では、原則として侵害額に相当する金銭を請求します。不動産持分が当然に戻る制度ではありません。施行日前の相続は旧制度が適用されるため、相続開始日を最初に確認します。
1年と10年は起算点が違う
| 期間 | 起算点 | 対象 |
|---|---|---|
| 1年 | 相続開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時 | 遺留分侵害額請求権の行使 |
| 10年 | 相続開始時 | 知った時期にかかわらない外側の期間 |
| 原則5年・10年 | 権利行使後に生じた金銭債権について民法166条で判定 | 具体的な金銭支払請求権 |
1年の「知った時」は、死亡や贈与・遺贈の存在だけでなく、それが遺留分を侵害することを認識した時と解されています。ただし起算点を巡る争いに頼らず、期限内に意思表示します。
内容証明は証拠を残す方法
権利行使の意思表示は法律上必ず内容証明郵便でなければならないわけではありません。しかし、口頭や普通郵便では、内容と到達時期の立証が難しくなります。一般には配達証明付き内容証明郵便等で、被相続人、相続、対象の贈与・遺贈、遺留分侵害額を請求する意思を明確に示します。
内容証明を発送しただけで全ての時効が永久に止まるわけではありません。相手方への到達を確認し、金額算定と支払請求、交渉・調停・訴訟を継続します。
調停と訴訟の流れ
- 遺言、贈与、相続人、遺産・債務を調査する
- 期限内に相手方へ権利行使の意思表示を到達させる
- 基礎財産、遺留分割合、特別受益、負担額を計算する
- 協議または家庭裁判所の調停で支払条件を調整する
- 不成立なら、地方裁判所または簡易裁判所の民事訴訟で請求する
裁判所は、調停申立てだけでは相手方への意思表示にならないと案内しています。申立書がいつ相手へ届くかに頼らず、別に通知します。調停不成立後に自動的に審判で金額が決まる手続でもありません。
計算の入口は遺留分の計算方法、権利行使後の時効は遺留分請求後の金銭債権も参照してください。
公的資料・根拠
よくある質問
遺留分の1年は死亡日からですか
相続開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時からです。ただし相続開始から10年という別の期間もあります。
内容証明郵便は必須ですか
法定の方式ではありませんが、意思表示の内容と到達日を証明するために利用されます。
調停を申し立てれば意思表示になりますか
裁判所は、調停申立てだけでは相手方への意思表示にならないと案内しています。別途通知します。
請求時に金額確定が必要ですか
権利行使の意思を明確にすれば、金額の確定前でも行使できると解されています。その後、資料を基に金額を算定します。
兄弟姉妹も請求できますか
亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分がないため、遺留分侵害額請求はできません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。相続開始日、遺言・贈与、知った時期、相手方、財産・債務、旧法適用により期限と請求額は異なります。早めに弁護士へ確認してください。



