成年後見 家族信託 違い

成年後見と家族信託の違い|管理する財産・代理権・費用を比較

成年後見等は本人の権利と意思を支える仕組み、家族信託は特定の財産を目的に沿って管理する仕組みだ。任せたい仕事から比べよう。

以下は説明用の架空の家族だ。どちらか一つで、全財産、介護の契約、医療の意思決定まですべて解決するわけではない。

父の信夫は、賃貸アパートの管理を息子の拓也へ任せたい。娘の麻衣は、父の介護契約や信託に入れない預金を誰が扱うかも気にしている。家族信託の説明を聞いた拓也は「後見を使わなくて済む」と考えたが、二人が任せたい仕事は同じではなかった。

まず、本人の現在の能力、既存の契約、急ぐ支払いと将来の管理を確認する。国と家族のどちらが主導するかという単純な対立より、誰が何の権限で、誰のために動くかを明らかにする。

法定後見は、能力と必要な援助に応じて支援の権限を整える

現行の法定後見には、後見・保佐・補助の三つがある。家庭裁判所が本人の状態に応じて、制度を始めるかを判断し、支える人を選ぶ。

家族が候補者を挙げても、必ずその人が選ばれるわけではない。国が本人の預金を直接管理する制度でもない。

成年後見人は、本人の財産を管理し、財産に関する契約等を代理する。本人が一人でした行為は、日用品の購入等、日常生活に関するものを除き、取り消せるかが問題になる。

保佐・補助では、どの行為に同意が必要か、何を代理できるか、裁判所が認めた範囲を確認する。裁判所が資料等を調べて判断する手続を審判という。三つの制度で、代理できる範囲が同じとは考えないようにしよう。

成年後見人が本人に代わって、本人の住まいの建物や敷地を売る場合等には、民法859条の3による家庭裁判所の許可が必要だ。

一方、すべての支払いや、すべての不動産処分に、この条文の許可が必要なわけではない。本人の意思、生活、利益に配慮して管理する。

法定後見人等の報酬は、申立てを受けた裁判所が個別に判断し、認められた額を本人の財産から支払う。全国一律に月2〜6万円という契約料金ではない。継続管理と報告も含め、費用と本人の収支を確認する。

家族信託は、信託した財産の管理・処分と利益の受取りを設計する

信夫が財産を託す委託者、拓也が管理する受託者、信夫自身が利益を受ける受益者となる案を考える。対象はアパートと管理用のお金だ。

拓也は契約と法律に従って管理し、利益は信夫のために使う。管理のために拓也へ名義を移すことと、拓也への贈与は同じではない。

信託法26条と契約の制限から、何を任せられるかを確認する。賃貸、修繕、売却、借入れ等、予定する仕事を具体的にしよう。

契約があれば、どの銀行でも口座を作れ、どの物件でも自由に売れるわけではない。融資や担保があれば、金融機関等の条件も確かめる。

受託者には、利益を受ける人のために仕事をする義務がある。自分の財産等と分けて管理し、帳簿を作り、報告することも必要だ。家族だから自由に使える制度ではない。

管理の様子を確かめる人や、受託者が先に動けなくなった時に代わる人も考える。契約を変える時、終える時の手続と、残った財産を受け取る人も決めておこう。

契約で信託を始めるには、本人が内容と結果を理解して決められるかを確かめる。契約の意味を理解して決める力を、意思能力という。

診断名だけで可否は決まらないが、意思能力がない本人の代わりに、子同士で契約することはできない。公正証書を作れば、能力の問題が必ず解消するわけでもない。

任せたい仕事ごとに、対象と権限を比較する

確認する仕事 成年後見等・任意後見・信託での確認点
本人の預金・財産管理 後見等でできる仕事、任意後見の開始と財産目録、信託へ移した財産を確認する。
アパートの修繕や売却 本人の利益、居住用等の許可、信託の目的と処分権限、登記・融資条件を確認する。
介護・施設等の契約 契約を代理する権限を別に確認する。信託で支払いを行えても、本人を代理する権限が自動的に付くわけではない。
医療行為そのものへの同意 財産管理やサービス契約と区別する。後見人等に包括的な医療同意権が自動的にあると考えない。
不利な契約への対応 法定後見の取消し等と、契約上の代理を区別する。信託の受託者だから本人の全契約を取り消せるわけではない。
亡くなった後の財産の行先 信託条項と遺言、対象外の財産、遺留分、税金、実際の引継ぎを合わせて確認する。

麻衣の疑問は、この比較で具体的になった。アパートを拓也が管理できても、本人の施設契約や対象外の預金の支払いは別の権限が必要になることがある。財産管理をまとめても、本人の支援全体を一本化できるとは限らない。

任意後見は、契約と監督人選任を分けて準備する

判断能力が十分なうちに、公正証書で、支える人と代理できる仕事の範囲を決めるのが任意後見契約だ。

本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶと、代理権が効力を生じる。監督人は、任意後見人の仕事を確認する人だ。契約を作る日と、支援を始める日は同じではない。

受託者には信託財産の管理を任せ、ほかの契約等の代理には任意後見を準備する、という組合せも考えられる。

同じ仕事を重ねて任せていないか、双方の利益がぶつからないか、誰へ報告し、何に費用がかかるかを調整しよう。両方を作れば安心、とだけは考えない。

詳細は任意後見と法定後見、任意後見の契約・発効・代理権を確認する。現在必要な支払いには、別の財産管理委任等の契約と取扱いを検討する場合もある。

費用は初期費用、継続する事務、本人の収支で比べる

後見開始の申立手数料800円、登記手数料2,600円のほか、郵便料、診断書等の資料費、必要な場合の鑑定費を確認する。

申立てを手伝う専門家の費用と、選任後に裁判所が決める後見人・監督人の報酬は分けよう。

家族信託にも、契約設計の報酬、公正証書を作る場合の費用、必要な登記・口座等の費用がある。

始めた後の帳簿や税務、受託者報酬、変更・終了時の費用も確認する。継続費用がゼロ、全国一律の額で終わる、とは決めつけない。

家賃の全額を、生活費には回せない

年間の家賃収入と支出を、説明用の数字で比べる例だ。税金や、制度を使う管理費用等は、まだ別に確認する。

一年に入る家賃
360万円
− 当年の管理・修繕等の支出 120万円
− 将来の修繕に残すお金 60万円
差し引き残るお金
180万円
税金等を払う前の額だ。
父の生活費不足は年200万円。
この例では、さらに年20万円足りない。

将来の修繕に残すお金は、そのまま全額を税務上の経費にできるという意味ではない。使える現金の見込みと、税を計算する所得は分けよう。

物件の評価額が高いこととも別の問題だ。拓也は、制度ごとの管理費用も加えた収支を、父へ示すことにした。

信託しても、税金・遺留分と対象外の財産は残る

家族信託は、それ自体で相続税をなくす制度ではない。本人が受益者のまま管理を任せる場合と、子が無償で利益を受ける権利等を取得する場合では、設定時の贈与税等の扱いを分けて確認する。

死亡後に引き継ぐ時や、信託を終える時も、誰が何を受け取るかによって課税が問題になる。

利益を受ける人を複数世代へ順に引き継ぐ設計にも、信託法91条の期間の制限がある。永久に子孫の行先を固定できるわけではない。

こうした受益者連続型信託の税務上の評価も、別に確認する。近い家族の最低限の取り分である遺留分も、信託という名前だけで排除できない。

信託に入れない預金や不動産等には、別の管理・相続手続が残る。

本人の財産一覧を作り、信託の対象と対象外、借金、保険、年金等を分けよう。年金を受け取る権利と、支給後のお金も同じ権利ではない。

選ぶ前に、現在の能力と既存の仕組みを調べる

既に後見等が始まっていれば、登記事項証明書や審判書で、何ができるかを確かめる。

任意後見契約や信託があれば、原本と条項、効力が生じているか、口座や登記も確認する。契約の名前だけで、管理できる準備が整ったとは判断しないようにしよう。

これから契約する場合は、本人が理解できるかを確かめ、目的、対象、担当者、権限、報告、後継者、終了時の扱いを決める。

家族の希望が対立するなら、誰の利益を守る案かを明確にしよう。子へ財産を移すことを先に決め、制度を後から合わせないようにしたい。

本人の状態によって法定後見が必要であれば、本人の住所地の家庭裁判所へ必要な申立てを検討する。現行制度では、きっかけとなる取引が終わっても、それだけで家族の希望により後見を終えられるものではない。継続する管理と確認点も読む。

認知症と診断されたことと、家庭裁判所が後見を始める審判をしたことも、区別しよう。

診断だけで、本人の全行為が民法9条により取り消せるわけではない。後見開始前の行為は、その時の意思能力等を確かめる。

契約から実際の管理へ、担当をつないでおく

  1. 急ぐ支払いと、長期に任せたい仕事を分ける。
  2. 本人の状態、財産、既存の契約・登記を確認する。
  3. 本人への説明と希望の確認を行い、必要な権限を設計する。
  4. 金融機関や登記等の実行条件、報告と支払いに使うお金を確認する。
  5. 担当者が動けない場合と、変更・終了時の引継ぎを決める。

信夫と拓也、麻衣は、アパート管理と介護等の代理を同じ問題にしないことにした。本人の希望を中心に、信託でできる仕事、後見等で整える仕事、金融機関へ確認する仕事を一覧にする。比較の結論は制度名ではなく、必要な支援を誰が継続できるかで考える。

本記事は2026年10月18日時点の制度を説明する。2026年公布の成年後見制度の見直しは、公布から2年6か月以内の政令で定める日に施行される。利用時には施行日と経過措置(新しい制度に切り替わるときの特別な扱い)を確認し、将来の仕組みを現在使える権限として扱わない。

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よくある質問

成年後見と家族信託は同時に使えるか

役割を分けて組み合わせることを検討できる。対象財産、代理権、利益相反、報告と費用が重ならないかを確認する。

家族信託はいつ契約する必要があるか

本人が具体的な契約内容と結果を理解して意思決定できるかを確認する。認知症の診断名だけで一律に契約可能・不可能とは決まらない。

成年後見人は必ず家族がなれるか

必ずではない。候補者を挙げられても、本人の状態や必要な支援に応じて家庭裁判所が選任する。

家族信託だけですべての財産と介護の手続を扱えるか

扱えない。信託対象外の財産や本人の代理が必要な契約を別に確認する。医療行為そのものへの同意と財産管理も区別する。

任意後見は契約したらすぐ始まるか

任意後見の代理権は、家庭裁判所が監督人を選任した時から発効する。今から必要な事務の委任と、将来の任意後見を分けて確認する。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。制度と権限、費用と課税は、本人の状態、契約、財産、取引の条件等を確認して判断しよう。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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