介護の寄与分が認められる条件|証拠・計算・特別寄与料

介護の寄与分が認められる条件|証拠・計算・特別寄与料

介護の寄与分は、共同相続人が被相続人の療養看護を行い、その財産の維持または増加について通常の親族間の扶養を超える特別の貢献をした場合に、遺産分割で考慮する制度です(民法904条の2)。

介護をした事実だけで一定額が自動加算されるわけではありません。介護の必要性、実際に行った内容・期間、外部サービス、受け取った対価、介護により避けられた支出を資料でつなげます。要介護度や年数だけで決まる全国一律の基準はありません。

介護したことと寄与分が認められることは同じではない

民法904条の2は、被相続人の事業に関する労務、財産上の給付、療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした共同相続人の寄与分を定めています。

療養看護の場合は、親族として通常期待される扶養・見守りの範囲を超え、介護サービス費や施設費などの支出を免れたといえるかが中心になります。無償性、継続性、専従性、介護の必要性は、その特別性と財産上の効果を判断するための事情です。法律に「要介護2以上」「3年以上」といった一律の数字が書かれているわけではありません。

確認事項 主な資料 説明する内容
介護の必要性 診療録、診断書、要介護認定、主治医意見書、ケアプラン いつから、どの動作に、どの程度の介助が必要だったか
実際の介護 介護日誌、予定表、家族・事業所との連絡、写真 日付、時間、食事・排泄・移動・服薬等の内容
外部サービス 利用票、提供記録、請求書、領収書 専門職が行った部分と家族が補った部分
無償性・対価 口座履歴、生活費、給与、贈与、家賃等の資料 介護の対価を受け取っていたか、その範囲
財産上の効果 当時の介護報酬、施設見積り、支払実績 介護により避けられた合理的な支出

東京高裁平成29年9月22日決定を一律の計算式にしない

東京高裁平成29年9月22日決定(平成29年(ラ)第1238号)は、要介護4・5の被相続人と同居し、食事・給水の介助、摘便、痰の吸引などを行った相続人について寄与分を認めた事例です。介護報酬等を基礎に日数と裁量割合を用い、医療行為に当たる痰の吸引を訪問看護費で別に評価しました。

同決定は、相続人が行ったすべての介護について第三者と全く同額の報酬を認める制度ではなく、通常期待される貢献を超え、被相続人の財産減少を防止できた限度で寄与分を認めるとしています。事案で用いられた要介護度、日額、日数、裁量割合を他の家庭へそのまま当てはめることはできません。

寄与分の金額は事実を積み上げて協議する

寄与分は、まず共同相続人の協議で定めます。協議できないときは、家庭裁判所の寄与分を定める処分調停・審判を利用します。裁判所は介護の内容、期間、必要性、外部サービス、対価、被相続人の財産、他の相続人との関係などを踏まえます。

実務で介護報酬や施設費を参考にすることはありますが、次のような機械的な算定は避けます。

  • 要介護度だけで、寄与分の有無や日額を決める
  • 同居した全日数を、そのまま介護日数とする
  • 訪問介護・短期入所など専門サービスの利用時間を重ねて計上する
  • 生活費、給与、贈与など受け取った利益を確認しない
  • 現在の単価を、過去の介護期間へ説明なく当てはめる

相続人と相続人でない親族では制度が違う

介護した人 制度 相手・手続 期間
子・配偶者など共同相続人 寄与分(民法904条の2) 遺産分割で協議。調わなければ家庭裁判所 相続開始から10年後の分割では原則として考慮されない。例外・経過措置あり
相続人でない親族(例:子の配偶者) 特別寄与料(民法1050条) 相続人に金銭請求。調わなければ家庭裁判所 相続開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年

相続人でない人が介護した場合、通常の寄与分をその人自身が取得するのではありません。一定の親族は、無償で療養看護その他の労務を提供し、特別の寄与をしたときに特別寄与料を請求できる場合があります。短い期間制限があるため、誰が介護したかを最初に確認します。

今から作る介護記録

  1. 日付と時間:開始・終了、夜間対応、通院同行を記録する
  2. 行為:食事、排泄、移動、入浴、服薬、医療的ケアを分ける
  3. 本人の状態:できたこと、介助が必要だったこと、急変を記録する
  4. 専門サービス:訪問介護、看護、通所、短期入所の日時を重ねる
  5. 費用と対価:立替え、交通費、給与・生活費、贈与を別欄にする
  6. 裏付け:ケアマネジャー、医療機関、事業所の記録と対応させる

すでに介護が終わり日誌がない場合も、要介護認定資料、介護保険の利用票、診療録、通院履歴、メッセージ、勤務記録、交通履歴、近親者・専門職の説明から時系列を再構成します。記憶だけで日数を埋めず、確認できる事実と推定を分けます。

公的資料・裁判例

よくある質問

要介護2以上なら寄与分が認められますか

要介護度だけで決まりません。介護の必要性、通常の扶養を超える内容、無償性、継続性、専門サービスとの分担、財産上の効果を個別に確認します。

介護日数に日額を掛ければ寄与分を計算できますか

介護報酬等を参考にする場合はありますが、一律の法定計算式ではありません。同居日数と実介護日数、外部サービス、対価、裁量的な調整を資料に基づいて検討します。

介護日誌がないと寄与分は主張できませんか

日誌がないだけで直ちに否定されません。要介護認定、ケアプラン、事業所・医療機関の記録、メッセージ、勤務・交通履歴などから事実を再構成します。

長男の妻など相続人でない人も寄与分を受け取れますか

相続人でない一定の親族は、寄与分ではなく民法1050条の特別寄与料を相続人へ請求できる場合があります。知った時から6か月・相続開始から1年の期間に注意します。

寄与分はいつ主張しますか

相続人間の遺産分割協議で資料と金額を示します。協議できない場合は家庭裁判所の調停・審判を検討します。相続開始から10年後の遺産分割では原則として寄与分が考慮されないため、例外・経過措置を確認します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。相続開始日、親族関係、介護の必要性・内容・期間、外部サービス、対価、遺産分割の進行により結論は異なります。経過措置を含む最新法令と原資料を示して弁護士等へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

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