旧「広大地の評価」は廃止された。2018年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得する一定の宅地は、「地積規模の大きな宅地の評価」を使う。遺贈は、遺言で財産を渡すことだ。
広い土地なら、必ず対象になるわけではない。場所、地区、用途地域、指定容積率等の条件を確認しよう。
父を亡くした秀明と妹の晴香には、700平方メートルの実家の土地がある。秀明は「広大地だから、評価を下げられるはず」と考えた。晴香は、古い解説をそのまま使ってよいかを気にしている。
母の志津は、評価を下げると、家を売るときの価格も下がるかと心配した。この架空の家族で、制度と数字を分けて考えよう。
この家族では、制度の適用条件、土地評価の計算、相続税額、売却価格を分けて考える必要がある。税金を計算するときの補正が認められても、納税資金がその額だけ手元に増えるわけではない。
旧広大地と、今の評価方法を分ける
この評価方法は、財産評価基本通達20-2に定められている。土地の広さに応じて、評価額を調整する仕組みだ。
租税特別措置法69条の4に定める、小規模宅地等の特例とは別の制度になる。
標準的な土地の単価に面積を掛けるだけでは、大きな宅地の価値を十分に反映できない場合がある。
そこで、条件に合う土地は、奥行や形等による調整に加え、広さによる規模格差補正を行う。自由に割り引くのではなく、対象と計算方法が決められている。
旧広大地で使った判断や補正率を、今の相続にそのまま使わない。
古い相続の申告を見直すなら、その課税時期に適用される規定を調べる。現在の名称へ変えれば、昔の相続にも使えるわけではない。
秀明は以前の資料を見つけたが、晴香と死亡年と適用規定を照らし合わせることにした。市区町村の用途地域と、国税庁の路線価図の地区区分は、別の資料で確認する必要がある。
面積・地域・指定容積率を確かめる
面積は、所定の三大都市圏なら500平方メートル以上、それ以外なら1,000平方メートル以上が基準だ。
三大都市圏は、東京都・大阪府・愛知県の全域という意味ではない。法令で定められた区域に入るかを確かめよう。
路線価地域では、普通商業・併用住宅地区か普通住宅地区にある、対象の宅地であることが必要だ。
倍率地域でも、地積規模の大きな宅地に当てはまれば、対象になり得る。路線価がある地域だけの制度ではない。
次のような宅地には除外条件がある。面積と所在地だけで判断しないことが大切である。
- 市街化調整区域の宅地。ただし、都市計画法34条10号・11号の定めにより一定の宅地分譲の開発ができる区域は除外の例外となる。
- 工業専用地域の宅地。
- 指定容積率が400%以上の地域の宅地。東京都の特別区では300%以上が基準となる。
- 財産評価基本通達22-2の大規模工場用地。
指定容積率による除外と、大規模工場用地の除外は別だ。また、工業専用地域と、ほかの工業地域等も区別しよう。
都市計画図だけでは分からなければ、自治体に指定内容を確認する。
秀明の700平方メートルも、三大都市圏なら面積の条件を満たし得る。圏外なら、1,000平方メートル以上の基準に届かない。
三人は、広そうだという印象で決めず、区域と使い方を先に調べることにした。
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路線価地域では、補正を順に計算する
路線価地域では、路線価に奥行や形等の補正を反映し、規模格差補正率と面積を用いて評価する。
規模格差補正率だけを掛けて、ほかの補正や、道路との接し方等による加算を省いてよいわけではない。
規模格差補正率には、地域と面積の区分ごとに決められた二つの定数を使う。面積に一つ目の定数を掛け、二つ目を足す。その合計を面積で割り、0.8を掛ける。
結果は、小数第2位まで残す。第3位以下を切り捨てるので、四捨五入ではない。
秀明の土地が、三大都市圏の普通住宅地区にある700平方メートルの宅地で、指定容積率等を含むすべての条件を満たすと仮定する。この区分の定数は、0.95と25だ。
さらに、路線価は1平方メートル当たり20万円、ほかの補正等は確認の結果1.0、別の加算や権利による減額もないとする。
前述の条件をすべて満たす、700平方メートルの仮定例だ。
(700×0.95+25)
÷700×0.8
= 0.788571…
第3位以下を切り捨て
→ 0.78
20万円×1.0×0.78
×700平方メートル
= 1億920万円
0.79へ四捨五入しない。
補正前の単純な額1億4,000万円との差は、3,080万円。土地の評価額の差であり、その額だけ相続税が減る意味ではない。
面積・地域・評価条件が違えば、結果も変わる。
国税庁のNo.4609に定数表と端数処理が示されている。公式の計算例も、規模格差補正と奥行等の補正を分けて確認する参考になる。
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倍率地域は、二つの価額を比べる
倍率地域では、次の二つの価額を比べ、低い方を使う。
一つは、固定資産税評価額に倍率を掛けた額。もう一つは、標準的な間口・奥行の宅地とした場合の1平方メートル当たり価額に、画地補正・規模格差補正等を反映し、面積を掛けた額だ。
倍率で出した額に、規模格差補正率だけをさらに掛ける単純計算ではない。
標準となる価額の資料もそろえ、二つの計算をたどれる形にしよう。
相続人が複数いたり、隣り合う土地があったりするなら、どの範囲を一つの土地として評価するかも確かめる。このまとまりを評価単位という。
登記の一筆ごとに決めたり、持っている土地の面積をすべて足したりはしない。死亡時の実際の状態、利用、権利と取得状況を基に判断する。
小規模宅地等の特例は、別に確認する
この方法で評価した土地でも、小規模宅地等の特例の条件に合えば、評価後の価額を基に、対象部分への特例を検討できる。
広さに応じて評価する仕組みと、住まい・事業の引継ぎに配慮して税の計算額を減らす仕組みは、目的が違う。
特定居住用宅地等なら、330平方メートルまで80%減額となる。700平方メートル全体を80%減らせる、とは決められない。
誰が受け取るか、故人や取得者の居住と保有、分割と申告等の条件も、別に確認する。
前の例では、1平方メートル当たりの評価額は15万6,000円になる。そのうち330平方メートルに、80%減額がすべて認められると仮定しよう。
減額は、15万6,000円×330平方メートル×80%=4,118万4,000円だ。土地全体の1億920万円から引くと、特例後の価額は6,801万6,000円となる。
これも税額ではなく、この実家で特例を使えると確定した例でもない。秀明が取得する場合と、志津が取得する場合では、取得者の条件が違う。
晴香への代償金や、母の生活費も、この評価額から直接は払えない。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。
資料と、納税資金をそろえる
- 登記事項証明書、公図、図面等から所在地と評価単位・実際の地積を確認する。
- 所定の三大都市圏か、都市計画の区域・用途地域・指定容積率を調べる。
- 死亡年の路線価図または倍率表で方式と地区を確認する。
- 画地補正と規模格差補正の条件、定数、端数処理を計算明細へ残す。
- 他の特例と財産等を反映し、相続税額と納期限までの現金を試算する。
申告・納付は通常、相続が始まったと知った日の翌日から10か月以内だ。分割の話合いが続いているだけでは延びない。
必要に応じて、未分割での申告と、後日の税額調整を確認しよう。
秀明たちは、評価減を前提に急いで分割せず、資料と条件を確かめた。
志津には、税務評価を見直すことと、売値や暮らしの資金を決めることは別だと伝える。晴香も、土地の評価、母に残す現金、自分の取得分を分けて話せるようになった。
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海外の土地には国内の路線価と同じ計算を用いないため、海外不動産の相続税評価も分けて確認したい。
ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
旧広大地と現在の評価は同じか
同じではない。旧広大地評価は廃止され、2018年1月1日以後の取得には地積規模の大きな宅地の評価の条件を確認する。過去の相続は課税時期の規定を見る。
市街化調整区域なら必ず対象外か
原則は除外だが、都市計画法34条10号・11号により一定の宅地分譲の開発ができる区域には例外がある。自治体の指定等を確認する。
小規模宅地等の特例と併用できるか
両方の条件を満たす場合に、それぞれの計算段階で適用を検討する。特定居住用の330平方メートルなどの限度を、土地全体に広げない。
定数と端数処理はどこで確認するか
国税庁No.4609に地域・地積別の表がある。規模格差補正率は計算後、小数点以下第2位未満を切り捨てる。
評価が下がれば申告をしなくてよいか
他の財産・控除等を含めて申告義務を判断する。小規模宅地等の特例など、税額がゼロでも使うための申告が必要な制度もある。



