土地の相続税評価は、標準的な宅地の路線価等に、その土地の形状、利用、権利関係などを反映して求める。補正や特例の条件を満たせば課税上の価額が下がることはあるが、安くなる方法を自由に選ぶ制度ではない。
架空の家族で考えよう。父を亡くした智彦は、実家の土地を「路線価40万円×200平方メートル=8,000万円」と計算した。妹の里美は、形がいびつだから、もっと下げられるのではと言う。
母の多恵は、税を減らすために、誰が家を受け取るかまで決められてしまわないか心配している。
まず土地そのものを正しく評価し、次に、受け取る人等の条件から、小規模宅地等の特例を判定する。
評価額が下がっても、税額や、納税に使える現金が、同じ額だけ変わるわけではない。
土地の評価を点検するときは、低い数字を選ぶのでなく、形状・接道・利用等の事実にどの補正が合うかを資料で確かめる。
土地の条件に合う評価を確かめる
相続税では原則として、取得した時点の時価で評価する。宅地は、財産評価基本通達に従う路線価・倍率方式等を確かめる。
固定資産税の税額、売却査定額、相続税の評価額は、同じ数字ではない。
路線価は、標準的な宅地の単価だ。実際の間口・奥行き・形・道路との関係を、補正等で反映する。
必要な補正を省くと高く評価することもあり、必要な加算を落とすと、低く評価し過ぎることもある。
「形がいびつ」という感覚だけでは、使う率は決まらない。地区、仮に想定する形の整った土地、実際の形や面積等を調べ、規定の条件へ当てはめる。
最初から下がると決めず、図面と計算をそろえよう。
形・道路・高低差は、別に確かめる
- 奥行価格補正:地区区分と奥行距離に対応する率を確認する。
- 不整形地補正:不整形の程度、位置、地積等から所定の計算を行う。
- 間口狭小・奥行長大:それぞれの条件と、他の補正との関係を確認する。
- がけ地等:通常の用途に使えない部分の状態や地積割合等を確認する。
- 著しい高低差等:付近の宅地に比べて利用価値が著しく低下するかを、現況等から確認する。
高低差等が、既に路線価・固定資産税評価額・倍率へ反映されているなら、重ねて減額しない。
土地全体から、必ず一律に10%を引く計算でもない。対象部分と、利用価値が下がることを裏付ける事情を確かめよう。
二面の道路に接する土地では、側方・裏面の道路の影響を加算する場合がある。玄関側や、安い方の路線を選ばず、決められた方法で判定する。
補正等は、単なる値下げの一覧ではなく、土地の条件を反映する計算だ。
智彦と里美は、登記、公図、地積測量図、写真、利用と権利の資料を集めた。
公図だけで、正確な寸法や高低差まで分かるとは限らない。現地確認や追加資料が必要か、税理士等へ相談しよう。
路線価から相続税を計算する手順|土地評価・補正・税額の違い
路線価から求めるのは、まず土地の相続税評価額だ。その数字が、そのまま税額や売却価…

土地の評価差と、税額の差を分ける
200平方メートルの土地について、路線価40万円、条件を確認して求めた画地補正等の結果を0.9と仮定する。ほかの加算や、権利による減額はないものとする。
上の仮定による例。0.9を誰でも使えるわけではない。
40万円 × 200㎡
= 8,000万円
40万円 × 0.9 × 200㎡
= 7,200万円
8,000万円 − 7,200万円
= 評価額の差 800万円
ほかの財産・債務等や控除を含めて求める。評価の差と同額の税金が減るわけではない。
補正前の単純計算との差800万円は、土地の評価額の差だ。戻る税金や、増える預金の額ではない。
相続税額は、ほかの財産、債務等、基礎控除、取得割合、税額控除も含めて計算する。
0.9は、実家の見た目から選んだ率ではない。実際の率は、土地の条件と規定から求める。
複数の補正も、条件や計算上の調整を省いて、すべて単純に掛ければよいとは限らない。
形状等の評価補正と、小規模宅地等の特例の適用は別の段階で確認する。 小規模宅地等の特例とは?条件・限度面積・減額割合・申告方法で詳しく確認できる。
面積が広いだけで減額できるとは限らず、地積規模の大きな宅地の条件を別に照らし合わせる。 広大地の相続税評価|地積規模の大きな宅地の条件と計算で詳しく確認できる。
申告・分割・特例の期限を管理する
相続税の申告・納付は、通常、相続が始まったと知った日の翌日から10か月以内だ。
未分割でも自動で延長されない。法定相続分等に基づく未分割の申告・納付を検討する。法定相続分は、法律で決められた相続の割合だ。
小規模宅地等の特例は、原則として分割した対象財産に適用し、申告書と必要な資料を提出する。特例で税額がゼロになる場合も、申告が必要だ。
期限内に分割できなければ、分割見込書と、後日の更正の請求等を確かめよう。更正の請求は、払い過ぎた税金を減らしてもらう手続だ。
申告後の見落としも、いつでも自由に直せるわけではない。更正の請求ができる理由と期限、特例の条件を確かめる。
死亡時の評価が誤っていたことと、後から土地の使い方を変えたことは、分けて考えよう。
資料で分かることと、不足を分ける
- 死亡年の路線価図・倍率表と、土地の地番・図面をそろえる。
- 現況、実際の面積、利用単位、借地等の誰がどんな権利を持つかを確認する。
- 補正や加算の根拠と計算を明細へ記録する。
- 小規模宅地等の特例を受け取る人ごとに判定する。
- 他の財産等を含む税額と、期限までに使える現金を試算する。
里美は補正の条件、智彦は申告の日程と資金を調べ、多恵の希望も残した。
評価を調べることが、母を置き去りにした分割の結論とならないようにする。正しく評価し、家族が実行できる引継ぎ方も考えよう。
国内と評価方法が異なる財産は、海外不動産の相続税評価も参照したい。補正の確認は国税庁No.4604、高低差等はNo.4617、特例はNo.4124で確認できる。
ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
あわせて確認できる説明
よくある質問
土地の相続税評価は固定資産税評価額と同じか
通常は区別する。路線価地域は路線価と補正等で計算し、倍率地域では固定資産税評価額に所定の倍率を掛ける。固定資産税の税額や課税標準額と混同しない。
小規模宅地等の特例は誰でも使えるか
宅地の用途、受け取る人、居住・保有や事業継続、分割と申告等の条件がある。配偶者・同居親族・一定の別居親族で条件も異なる。
形の悪い土地は必ず大幅に下がるか
条件と計算による。地区や不整形の程度等を確認し、必要な加算や他の補正との関係も反映する。見た目だけで率を決めない。
未分割なら申告を待てるか
通常の10か月期限は自動的には延びない。未分割申告・納付と、分割後の特例適用や更正の請求等を確認する。
道路に路線価の数字がなければ倍率方式か
数字が見当たらないだけでは判定できない。地域の指定、土地の種類、接道を確認し、所定の評価方法を使う。



