持株会社を使う事業承継は、後継者側の会社が事業会社株式を取得・保有する組織再編です。会社法上の手続、取得資金、経営権、各社の税務、自社株の相続税評価を別々に検討します。
持株会社を作れば自動的に株価や相続税が下がるわけではありません。株式等保有特定会社に該当すると、持株会社株式は原則として純資産価額方式で評価され、想定した評価減が生じない場合があります。
持株会社化の目的と株式評価を分ける
持株会社化には、株式譲渡、株式交換、株式移転、現物出資等の方法があります。どの方法でも、会社法上の決議・債権者保護・株主対応、譲渡所得税、法人税、資金調達、経営権の移転を確認します。形式だけ作っても、相続税評価が必ず下がるという規定はありません。
相続時に評価するのは、被相続人が保有する株式です。持株会社化後に親が持株会社株式を持つなら、その持株会社自体の資産・負債・利益・配当、会社規模、株主区分に基づいて評価します。
取引相場のない株式は株主区分と会社規模から判定する
国税庁の評価通達では、取引相場のない株式について、同族株主等が取得する場合、会社規模に応じて類似業種比準方式、純資産価額方式、両者の併用方式を用います。少数株主等には配当還元方式が問題になります。
持株会社を作る前後で、誰がどの議決権を持つか、評価会社が大会社・中会社・小会社のどれに当たるか、利益・配当・純資産がどう変わるかを試算します。事業会社株式の取得価額や借入金だけを見て判断しません。
株式等保有特定会社では純資産価額方式が原則
評価通達189・189-3は、資産に占める株式等の割合が基準以上の株式等保有特定会社について、原則として純資産価額方式で評価するとしています。納税者の選択によりS1+S2方式を使える場合があります。
持株会社は事業会社株式の保有割合が高くなりやすいため、この判定が重要です。持株会社化により類似業種比準方式の効果を当然に得られるわけではなく、保有株式の含み益が純資産価額へ反映されることがあります。
東京高裁平成25年2月28日判決と通達改正
東京高裁平成25年2月28日判決は、当時の評価通達が大会社について株式保有割合25%以上を一律に株式保有特定会社とする基準の合理性を、企業規模や事業実態等も踏まえて検討しました。国税庁はこの判決を受け、現下の株式保有状況を踏まえて大会社の判定基準を50%以上へ改正しました。
この判決は「持株会社なら評価を下げられる」と認めたものではありません。評価時点に適用される現行通達と、会社の実態を確認する必要があることを示す資料です。
総則6項は例外だが、節税目的だけで説明しない
財産評価基本通達6は、通達による評価が著しく不適当と認められる財産を国税庁長官の指示で評価する例外を定めています。最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決(令和2年(行ヒ)第283号、民集76巻4号411頁)は、不動産評価について、通達評価による画一的評価が実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合に、通達評価を上回る価額を採用する合理的理由を認めました。
同判決は持株会社株式を直接判断したものではありません。もっとも、評価額の乖離だけでなく、相続税負担の軽減を意図した取得・借入れ等の事情を検討した点は、評価通達を利用した対策を「必ず安全」と断定できない根拠になります。
実行前に比較する項目
- 現状の事業会社株式と、持株会社化後の株式を同じ評価時点で試算する
- 株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満等の判定を行う
- 株式取得資金、返済原資、配当、保証、経営権を確認する
- 株式譲渡・交換・移転等に伴う法人税・所得税・登録手続を確認する
- 事業承継税制は認定、申告、担保、継続要件を別に検討する
- 税効果だけでなく、経営目的と実行記録を残す
非上場株式評価の基本は非上場株式の相続税評価、納税資金は非上場株式の評価と納税も参照してください。
公的資料・判例
- 国税庁「取引相場のない株式の評価」
- 国税庁「特定の評価会社の株式」
- 国税庁「平成25年の評価通達改正」(東京高裁平成25年2月28日判決を受けた改正)
- e-Gov法令検索「会社法」
- 裁判所「裁判例検索」(最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決、令和2年(行ヒ)第283号)
よくある質問
持株会社を作れば必ず自社株評価が下がりますか
下がりません。持株会社自体を評価し、株式等保有特定会社等の判定を行うため、純資産価額方式が中心となることがあります。
株式等保有特定会社はどう評価しますか
財産評価基本通達189-3では原則として純資産価額方式です。要件を満たす場合にS1+S2方式を選択できることがあります。
東京高裁平成25年判決は持株会社節税を認めたのですか
そのような判決ではありません。当時の大会社の25%基準の合理性を検討し、国税庁が判定基準を改正する契機となった判決です。
最高裁令和4年判決は持株会社の事件ですか
いいえ。不動産評価の事件です。通達評価による画一的評価が租税負担の公平に反する事情がある場合の総則6項の考え方を示した近接判例です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。組織再編、株主、会社規模、資産構成、税務目的、事業承継税制の要件により結論は異なります。税理士・弁護士等へ確認してください。



