非上場株式の相続税評価は、3方式から有利なものを自由に選ぶ制度ではありません。まず取得者の株主区分を判定し、原則的評価なら会社規模、特定の評価会社に当たるかなどを確認します。
同族株主等なら類似業種比準価額・純資産価額または両者の併用、経営への影響力が小さい一定の株主なら配当還元価額を用います。株主名簿だけでなく、同族関係者の議決権を合計して入口を判定することが重要です。
最初に株主区分を判定する
取引相場のない株式は、評価会社に対する支配力の有無によって評価の入口が分かれます。同族株主のいる会社では、取得者本人だけでなく、その同族関係者を含む株主グループの議決権割合、中心的な同族株主の有無、取得後の本人の議決権割合、役員該当性などを確認します。
「持株比率が5%未満なら必ず配当還元」という説明は正確ではありません。どの株主グループに属するか、中心的な株主がいるかなど、財産評価基本通達188の判定を先に行います。議決権のない株式や種類株式がある場合も、単純な発行済株式数だけで判断しません。
原則的評価は会社規模で変わる
| 区分 | 原則的な評価 | 確認点 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額 | 純資産価額を選べる場合もある |
| 中会社 | 類似業種比準価額と純資産価額の併用 | 会社規模に応じたLの割合を用いる |
| 小会社 | 純資産価額 | 一定の併用方式を選べる場合もある |
会社規模は業種、総資産価額、従業員数、取引金額を通達の基準へ当てはめます。「売上が小さいから小会社」「従業員が多いから大会社」と一つの数字だけで決まりません。
類似業種比準価額
国税庁が公表する類似業種の株価を基礎に、評価会社と類似業種の1株当たり配当、利益、簿価純資産を比べて計算します。業種目、直前期・直前々期の数値、非経常的な利益や配当の調整を確認します。
純資産価額
課税時期の資産・負債を相続税評価に洗い替え、評価差額に対する法人税額等相当額を調整して1株当たり価額を計算します。帳簿上の純資産を発行済株式数で割るだけではありません。土地、有価証券、保険、含み損益、未計上債務などの確認が必要です。
配当還元価額
同族株主以外の株主等に該当する一定の取得者について、年配当金額を基礎に計算する特例的評価です。配当還元価額が原則的評価による価額を超える場合は、原則的評価による価額を用います。
特定の評価会社は別の判定がある
比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社、開業前・休業中・清算中の会社などには特別な評価方法があります。通常会社の規模区分だけで計算を終えないようにします。
評価に必要な資料
- 定款、株主名簿、種類株式・議決権の資料
- 親族・関係会社を含む株主関係図
- 直前期以前の決算書、法人税申告書、勘定科目内訳書
- 土地・建物、有価証券、保険、貸付金など主要資産の明細
- 従業員数、取引金額、業種、課税時期までの重要な変動
相続税申告の評価額と、遺産分割・売買・会社法上の価格が常に同じになるわけではありません。少数株式の換価や会社との買取交渉は非上場会社の少数株を相続した場合、納税資金は自社株評価が高い場合の納税準備で別に整理しています。
公的資料・根拠
- 国税庁「取引相場のない株式の評価上の区分」178~187
- 国税庁「同族株主以外の株主等が取得した株式」188~188-6
- 国税庁「特定の評価会社の株式」189以下
- e-Gov法令検索「相続税法」22条
よくある質問
非上場株式は3方式から一番安いものを選べますか
自由選択ではありません。取得者の株主区分、会社規模、特定の評価会社該当性を判定し、通達が定める方式と認められた選択肢で計算します。
持株比率5%未満なら配当還元方式ですか
本人の比率だけでは決まりません。同族関係者を含む株主グループ、中心的な株主、役員該当性などを財産評価基本通達188に沿って確認します。
赤字会社なら株価はゼロですか
利益だけで決まらず、純資産、配当、資産の含み益、会社類型などを確認します。赤字というだけで自動的にゼロにはなりません。
帳簿上の純資産を株数で割ればよいですか
純資産価額方式では資産・負債を相続税評価へ洗い替え、評価差額に対する法人税額等相当額なども調整します。
相続税評価額で他の相続人から株を買い取れますか
相続税評価額は税務上の評価です。遺産分割や売買の価格は、支配権、換価可能性、会社価値、当事者の合意などを別に検討します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。株主構成、議決権、会社規模、業種、決算、資産内容、種類株式、特定の評価会社該当性により評価は異なります。税理士等へ申告資料を示して確認してください。



