親の会社の株式を相続したら|評価・経営権・納税・事業承継

親の会社の株式を相続したら|評価・経営権・納税・事業承継

親の会社の株式を相続するときの5論点

  1. 株式数・名義・議決権を確認する
  2. 相続税評価と遺産分割評価を分ける
  3. 経営権と他の相続人の取り分を設計する
  4. 納税資金と株式の換金性を確認する
  5. 事業承継税制は期限・認定・継続要件を確認する

親が経営していた非上場会社の株式を相続すると、税額だけでなく、誰が議決権を持ち、誰が代表者となり、他の相続人へ何を渡すかが同時に問題になります。株価が高いことと、自由に売って納税資金を作れることは別です。

最初に株式と会社の現状を確定する

  • 株主名簿、申告書別表二、過去の増資・譲渡資料
  • 普通株式・種類株式、議決権制限、自己株式
  • 定款の譲渡制限、相続人への売渡請求条項
  • 代表取締役・取締役の任期、取締役会の有無
  • 個人保証、会社への貸付金、事業用不動産の名義

名義だけ先代以外になっている株式は、取得資金・配当・議決権行使・管理実態から誰の財産かを確認します。株主名簿や税務申告の記載だけで最終的な帰属が当然に決まるとは限りません。

相続税評価と遺産分割の価格は同じとは限らない

相続税申告では、取引相場のない株式を財産評価基本通達により評価し、株主区分、会社規模、業種、純資産、類似業種比準等を確認します。概要は国税庁No.4638で確認できます。

遺産分割や売買で用いる価値は、税務評価と当然に同額ではありません。収益力、配当、支配権、少数株主性、譲渡制限、会社資産等により争いが生じることがあります。LegalScapeで確認した家事実務文献も、非上場株式の鑑定では評価時点、前提条件、費用、鑑定結果の取扱いを事前に決める必要があると説明しています。

経営権と相続人間の公平を分ける

後継者へ株式を集中すると経営判断は安定しやすい一方、他の相続人の取得財産が少なくなる場合があります。預金・不動産・保険金等による代償資金、遺留分、特別受益、株式の種類・議決権を並べて設計します。

株式を共同相続したまま権利行使する場合、会社法106条の権利行使者指定等が問題になります。相続人全員が個別に株主総会で議決権を行使できるとは限りません。代表者選任と株式の遺産分割を混同しないようにします。

相続後の実務手順

  1. 会社・税理士から株主名簿、決算、申告、定款を収集する
  2. 死亡時の株式数、株主区分、会社規模を確定する
  3. 相続税評価と税額、納税資金を試算する
  4. 後継者、役員構成、株式配分、代償資産を比較する
  5. 遺産分割後に株主名簿書換え、役員・代表者変更等を行う
  6. 申告・納税、認定・届出がある制度は期限管理する

非上場株式の具体的な名義変更は非上場株式を相続したときの手続も参照してください。

納税資金は株式以外からも設計する

非上場株式は市場で直ちに売却できず、会社や他株主による買取りも資金・会社法・税務の制約があります。相続人の預金、死亡保険金、会社からの退職金、株式以外の資産売却、延納・物納、金融機関借入れを早めに比較します。

会社が自己株式として取得する場合、分配可能額、株主総会手続、みなし配当課税等を確認します。「会社が買い取れば税金を払える」と金額・手続を確認せず決めないことが重要です。

法人版事業承継税制は納税猶予

一定の非上場株式を後継者が取得した場合、法人版事業承継税制の一般措置・特例措置を検討できます。特例措置は対象株式に係る贈与税・相続税の100%納税猶予が中心ですが、計画提出、都道府県の認定、申告・担保、承継後の報告・届出・継続要件があります。

制度を使えば税金が最初から当然にゼロになるわけではありません。現行期限と一般措置との違いは法人版事業承継税制、最新の入口は中小企業庁で確認してください。

税制以外の承継課題を残さない

納税猶予を使っても、代表者選任、個人保証、許認可、主要取引先、従業員、事業用不動産、知的財産、会社への貸付金は別に引き継ぎます。株式だけを移せば経営が自動的に承継されるわけではありません。

後継者が決まらない場合は、親族内承継だけでなく、役員・従業員承継、第三者承継、M&A、廃業を比較し、株価・雇用・保証・納税の影響を工程化します。

死亡直後の会社運営を止めない

代表取締役の死亡と株式の承継は別問題です。取締役会設置会社か、取締役・代表取締役の員数を満たすか、代表者変更登記を誰が申請するかを確認します。銀行口座、電子証明書、許認可、支払承認が故人だけに集中している場合は緊急対応が必要です。

遺産分割前でも会社は給与・仕入・税金を支払う必要があります。会社印、通帳、会計データ、取引先連絡先を保全し、相続人が会社財産を遺産として持ち出さないよう、法人財産と故人個人の財産を分けます。

譲渡制限と相続人への売渡請求を確認する

多くの非上場会社の定款には株式譲渡制限があります。相続は通常の譲渡とは異なりますが、定款に相続等で株式を取得した者に対する売渡請求の定めがある場合、会社法174条以下の手続が問題になります。

会社側が当然にいつでも買い取れるわけではなく、請求期限、株主総会決議、価格協議・裁判所への申立て、分配可能額等を確認します。後継者へ株式を残す予定が、定款条項と他株主の判断で変わらないかを事前に検討します。

相続税申告に必要な会社資料

  • 直前期以前の法人税申告書・決算書・勘定科目内訳書
  • 株主名簿、別表二、増資・自己株式・組織再編の履歴
  • 土地・建物・有価証券・保険等の資産明細
  • 役員退職金、死亡退職金、生命保険金の決議・契約
  • 会社と故人・親族間の貸付金、借入金、賃貸借、保証

株式評価は死亡時点を基準にしますが、死亡後に確定する決算・退職金・保険・税額が評価資料へ影響する場合があります。会社の顧問税理士と相続人側の税理士で、評価目的・提供資料・守秘範囲を確認します。

承継後のモニタリング

株式を承継した後も、役員変更、株主名簿、配当方針、個人保証解除、後継者の経営権、少数株主との情報共有を定期確認します。納税猶予を使う場合は、代表権・株式保有・会社状態・報告書・継続届出の期限を別表で管理します。

組織再編、株式譲渡、事業売却、廃業、大型配当を行う前に、納税猶予の取消し、株価、みなし配当、譲渡所得への影響を確認します。

株主名簿と実際の取得・管理が一致しない株式がある場合は、相続税評価の前に所有者を確認します。最高裁判例、原資、贈与・譲渡、配当・議決権の確認は名義株は誰の相続財産かで整理しています。

本記事は一般的な会社法・相続税・事業承継の説明です。株式帰属、評価、会社手続、納税猶予、遺留分は個別事情で変わります。最新の公的資料と弁護士・税理士等の確認を併用してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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