非上場株式を相続したときの手続|評価・遺産分割・株主名簿

非上場株式を相続したときの手続|評価・遺産分割・株主名簿

非上場株式を相続しても、評価、分け方、株主名簿の書換えは、自動では終わらない。会社と相続の資料を集め、共同相続なら、分割まで誰が権利を使うかも確かめよう。

父の誠一が亡くなり、娘の彩は、父宛ての株主総会の通知を見つけた。弟の翔は、自分も相続人だから、総会で別々に投票できる、と考えている。

母の直子は、今は株の分け方を争わず、会社を動かしたいと話した。以下は、説明用の架空の家族だ。

非上場株式は、証券取引所に上場していない会社の株式をいう。

受け取る人を決めること、分割までの権利行使、株主名簿の書換え、役員の選任は、それぞれ別の手続だ。名簿だけを変えても、全部が整うわけではない。

定款、株主名簿、遺言、決算書、相続人を調べる。共同相続中の議決権は、会社法106条の指定と通知も確かめよう。

分割が必要なら、最終的に株を取る人を決め、名簿を書き換える。相続税評価、会社の売渡請求、役員変更は、別に、並行して調べる。

会社と相続の資料をそろえる

古い株券や、法人税申告書の別表に、株主名と株数が載っていることがある。

ただし、過去の増資、譲渡、分割が反映されていない場合もある。それだけで現在の株数と株主を決めず、会社の元の資料と照らし合わせよう。

会社の原始資料と相続資料を照らし合わせる、という順番で動く。具体的に揃えるのは次の書類だ。

  • 定款(相続人等への売渡請求の条項があるかを確認する)
  • 株主名簿(亡くなった人の株式数・種類株式・議決権制限の内容)
  • 株券発行会社かどうかの確認(定款または登記事項証明書)
  • 直近3期の決算書・法人税申告書(会社の資産・負債の把握)
  • 遺言書・遺産分割協議書・相続放棄申述受理証明書(取得原因の確認)

足りない資料は、会社等へ確認する。全部そろうまで、総会や税の期限への対応を待ってよい、という意味ではない。

分割前の株は、準共有として扱う

複数の相続人が共同で引き継ぐと、分割が終わるまで、株式は準共有となる。一つの株式について、権利を共同で持つ状態だ。

会社法106条は、共有者が権利行使者を1人定めて会社へ通知することを原則としている。

この手続を踏まずに、相続人の一人が単独で議決権を行使しようとしても、自動的には認められない。

会社が同意すれば、指定・通知の例外が認められる場合もある。

ただし、共有者の持分に応じた意思決定に反する議決権行使は、会社の同意だけでは適法にならない。共有者の間で議案をどう決めるかと、会社への通知を、両方確かめよう。

「会社が認めてくれれば大丈夫」という前提で動く前に、権利行使者の指定と通知が済んでいるかを確かめる必要がある。株主総会の招集が近い場合は、この確認が先になる。

準共有中の争いや手続の詳細は、非上場株式の準共有も参照してほしい。

父の普通株式600株は、すべて同じ権利とする。遺言等はなく、相続人は妻と子二人だけ、という例だ。

法律上の相続割合が妻2分の1、子各4分の1でも、分割前から、妻の300株、子の各150株という別々の束に、自動で分かれるわけではない。

彩と翔が、自分の相続分だけ自由に投票できる、と考えると、総会の決議を争う原因になりうる。

権利行使者を誰にするか、議案をどう決めるかを整理し、会社へ通知する。600株は例で、税額や最終的な取得株数を決めるものではない。

相続分と、別々に投票できる株数は違う

本文の600株の例。遺言等はなく、妻と子二人が、同じ権利の普通株式を共同で相続した仮定だ。

分割前:600株を準共有

妻の相続分は1/2、子は各1/4。

自動で、妻300株・子各150株の別々の束となり、各自が自由に投票できるわけではない。

総会:指定と意思決定を確かめる

原則、権利行使者一人を指定し、会社へ通知する。議案の決め方も共有の決まりで確かめる。

会社の同意だけで、共有者間の意思決定への違反が直るわけではない。

連絡窓口を決めること、権利を使う人を指定すること、最終的に株を分けることは別だ。600株は、税額や最終配分を決める数字でもない。

遺産分割で「誰が株を持つか」を決める

共同相続で、遺言等によって取得者が決まっていなければ、相続人全員の話合いや、調停・審判による遺産分割で、最終的に取る人を決める。

後継者一人が株を取り、ほかの相続人が、調整のお金である代償金や、別の財産を取る案もある。

ただし、代償金の資金、一定の近い家族の最低限の取り分である遺留分、相続税の負担も、同時に確かめよう。一つの配分を決めると、ほかの支払も変わる場合がある。

経営上の議決権、遺産分割の評価額、相続税評価額、売買価格は、目的や決め方が違う。

相続税評価額が、そのまま会社の買取価格になるとは限らない。いくらかを尋ねる前に、何のための評価かを確かめよう。

少数株式を相続した場合の権利行使については、少数株式を相続した場合で整理している。

相続の取得と、会社の売渡請求

譲渡制限株式を相続によって取得することは、売買等の譲渡に対する承認手続とは区別される。相続は一般承継であり、譲渡承認を得なければ取得できないわけではない。

ただし、ここで定款を確認する必要がある。

定款に定めがある会社は、相続人等へ株式の売渡しを請求できる場合がある。会社が相続等を知った日から1年以内に、株主総会の決議等を経て請求する制度だ。

価格を裁判所に決めてもらう申立ては、請求の日から20日以内となる。期間内に申立ても価格の合意もなければ、売渡請求は効力を失う。

定款、請求を受けた日、会社の決議、分配可能額を確かめよう。分配可能額は、会社が株主へ交付できる金額についての、会社法上の限度だ。

相続税評価は、株主区分から調べる

非上場株式には市場価格がない。では何を基準に相続税を計算するか。

国税庁No.4638は、取引相場のない株式を、取得者が同族株主等かそれ以外かによって、原則的評価方式または配当還元方式のいずれかで評価すると説明している。額面、資本金、直近の売買価格だけで評価額が決まるわけではない。

原則的評価方式では、会社規模、純資産、利益、配当、類似業種の株価、株主構成などを取引相場のない株式の評価明細書を用いて確認する。

持株比率を見た瞬間に「自分はこの方式だ」と計算式を探しに行く前に、取得者がどの株主グループに属するかの判定が先になる。

評価の方式区分と計算手順の詳細は、非上場株式の相続税評価の記事で別に整理している。

株主名簿は、会社が誰を株主として扱い、通知するかを明確にするために重要だ。

ただし、書換えだけで、誰が株を取るかという争いまで解決するわけではない。彩たちは、遺言や分割による取得の内容と、会社への届出をそろえることにした。

取得の内容に沿って、名簿を書き換える

遺言等で取得者が決まる場合は、その内容に沿って、会社へ届け出る。分割が必要なら、最終取得者が決まったら名義を書き換える。

提出書類は、会社と取得の原因によって変わる。次は、その基本となる資料だ。

  • 会社が定める届出書
  • 戸籍謄本または法定相続情報一覧図
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 印鑑証明書

株券発行会社で実際に株券が発行されている場合は、株券の確認と提出等も必要になる。株券が見当たらない場合は、その対応も含めて整理しなければならない。

株主名簿の書き換えが終わったとき、冒頭の「名簿に親の名前が残ったまま」という状態がようやく解消される。

株を取ることと、取締役や代表取締役の地位を継ぐことは別だ。

役員変更が必要なら、定款、株主総会、取締役会等での選任と、法務局への登記を、別に確かめよう。

どの手続まで終わったかを確かめる

非上場株式の相続では、「何が終わっていて、何がまだ終わっていないか」が見えにくい。遺産分割の話し合いが進んでいても、株主名簿は書き換わっていない。相続税の申告期限は、遺産分割の完了を待たずに進む。

まず紙に書き出してほしいのは、次の四つだ。

  • 定款と株主名簿の確認は済んでいるか
  • 共同相続中なら、会社法106条の権利行使者指定と通知は済んでいるか
  • 遺産分割は終わっているか。終わっていなければ、相続税の申告期限はいつか
  • 株主名簿の書き換えは済んでいるか

四つのどこで止まっているかが分かれば、次にすることを決めやすい。

評価、遺産分割、名簿、役員変更は、別の手続で、関わる専門家も場合によって違う。手元の資料と未処理の項目を示すと、必要な判断を絞りやすい。

直子は、会社との当面の連絡をまとめ、彩と翔は、取得案と必要書類を調べることにした。

ただし、連絡窓口、権利行使者、最終取得者は、同じ意味ではない。総会に必要な手続と、分割・税の期限を並べ、決まった範囲を家族と会社で共有しよう。

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よくある質問

相続に会社の譲渡承認が要るか

通常の譲渡承認と相続による取得は区別する。ただし定款の相続人への売渡請求条項は別に確認する。

名義書換えまで相続税期限は延びるか

延びない。評価・税申告と会社側の名簿手続を並行して進める。

遺言があっても必ず遺産分割するか

遺言等の内容で取得者が確定する場合がある。取得原因に合った会社提出書類を確認する。

会社の売渡請求を受けたら何を記録するか

請求日、定款、決議資料、価格協議を記録する。裁判所への価格決定申立ては請求から20日以内だ。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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