法人版事業承継税制とは|2027年の期限・要件・認定後の手続

法人版事業承継税制とは|2027年の期限・要件・認定後の手続

法人版事業承継税制(特例措置)の要点

  1. 特例承継計画は2027年9月30日までに都道府県へ提出
  2. 贈与・相続による株式取得は2027年12月31日まで
  3. 対象株式に係る贈与税・相続税の100%が「納税猶予」の対象
  4. 認定後も年次報告・継続届出と要件管理が続く
  5. 計画提出だけで適用・免除が確定するわけではない

法人版事業承継税制は、後継者が非上場会社の株式等を贈与または相続で取得したとき、一定の要件の下で贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡など所定の場合に免除する制度です。税額が最初から消える制度ではありません。

特例措置の入口と期限は、中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」、税務上の概要は国税庁No.4148で確認できます。

最初に確認する2つの期限

手続 期限 意味
特例承継計画の提出 2027年9月30日 都道府県へ提出し、確認を受ける
対象となる贈与・相続 2027年12月31日まで この期間内に株式等を取得する

計画には後継者、承継予定時期、承継までの経営見通し、承継後5年間の事業計画等を記載し、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けます。提出しただけでは税制の適用は確定せず、実際の贈与・相続時に会社、先代経営者、後継者、株式、申告・担保等の要件を確認します。

特例措置と一般措置の違い

項目 特例措置 一般措置
事前計画 特例承継計画が必要 不要
対象株数 議決権に制限のない全株式 総株式数の最大3分の2
相続税の猶予割合 100% 80%
贈与税の猶予割合 100% 100%
後継者 最大3人 1人
雇用確保 弾力化 承継後5年間平均8割

一般措置の贈与税まで80%と説明するのは誤りです。また、特例措置でも「雇用要件が完全にない」とは説明できません。平均8割を下回った場合、理由を記載した報告書を都道府県知事へ提出し、確認を受ける手続があります。

適用までの実務手順

  1. 会社と株式を確認する:中小企業者・非上場会社の該当性、議決権株式、株主構成、資産管理会社等の除外要件を確認します。
  2. 株価を試算する:特例を使う場合も株式評価と猶予税額の計算が必要です。決算内容や組織再編で評価は動きます。
  3. 後継者と承継日を決める:代表権、議決権割合、同族内筆頭株主要件などを、承継前後の時点ごとに確認します。
  4. 特例承継計画を作成する:認定支援機関の指導・助言を受け、都道府県へ提出します。
  5. 贈与または相続後の認定・申告を行う:認定書、株式評価、担保関係書類等を準備し、期限内に申告します。

認定後も届出と要件管理が続く

税務申告後5年以内は、都道府県への年次報告書と税務署への継続届出書を原則として毎年提出します。6年目以後も、税務署へ継続届出書を3年に1度提出する取扱いがあります。提出漏れだけでなく、後継者が代表者でなくなる、対象株式を譲渡する、会社が解散・上場するなどの事由により、猶予税額と利子税の納付が問題になることがあります。

一方、後継者の死亡、次の後継者への一定の承継、事業継続が困難な一定の場合など、猶予税額の免除・再計算が認められる仕組みもあります。どの免除事由が使えるかは、承継方法と発生事実に応じて個別に確認します。

贈与と相続を分けて設計する

生前贈与では承継時期を選べますが、先代が死亡したときの相続税への切替え、相続時精算課税、遺留分、経営権移転を同時に検討します。贈与税側の制度は国税庁No.4439で確認できます。

相続による承継では死亡時点の要件、相続税申告期限、遺産分割、他の相続人の遺留分、納税資金が同時進行になります。「相続が起きてから計画を提出する」という進め方では、2027年9月30日の入口期限に間に合わない可能性があります。

着手前にそろえる資料

  • 直近3期程度の決算書・申告書、株主名簿、定款、登記事項証明書
  • 先代・後継者・同族関係者の議決権一覧
  • 株価評価の基礎資料、土地・有価証券・保険等の明細
  • 代表者変更、贈与・相続、納税申告までの工程表
  • 承継後5年間の事業計画と報告担当者

制度を使うかどうかだけでなく、使わない場合の相続税、持株会社・売買・従業員承継等の代替案、後継者の資金負担も並べて比較します。

制度全体を設計する段階では事業承継と相続対策、株式を実際に移す段階では非上場株式の相続手続も併せて確認してください。

計画確認・認定・税務申告は別の手続

特例承継計画の「確認」、経営承継円滑化法上の「認定」、税務署への「納税猶予の申告」は同じ手続ではありません。計画確認は将来の承継方針を記載する入口であり、贈与・相続後には、期限内に認定申請を行い、その認定書の写し等を添えて贈与税・相続税申告を行います。

税額に見合う担保提供が必要になる場合もあります。対象株式を担保とする方法、既に担保権がある場合、複数後継者の場合の株式配分を申告前に確認します。「都道府県から確認書が届いたので、税務署への手続は終わった」と誤解しないことが重要です。

会社法・遺留分・経営の課題も残る

納税猶予は税の制度であり、後継者への株式集中を他の相続人が当然に受け入れる制度ではありません。遺留分算定に係る合意、議決権・種類株式、役員構成、個人保証、相続人への代償資産を別に設計します。経営承継円滑化法には遺留分に関する民法特例がありますが、納税猶予の認定だけでその合意が成立するわけではありません。

また、株式を後継者へ移しても、事業用不動産、貸付金、知的財産、許認可、取引先契約が先代個人に残る場合があります。自社株だけでなく、会社運営に必要な資産・契約・保証を一覧にし、誰がいつ引き継ぐかを工程表へ入れます。

取消しリスクを継続管理する

  • 後継者の代表権・議決権割合・筆頭株主の状態
  • 対象株式の譲渡、贈与、担保実行等の有無
  • 会社の解散、上場、資産保有型会社等の判定
  • 年次報告書・継続届出書の期限
  • 組織再編、事業売却、廃業時の事前相談

取消事由が発生した後に届出だけで修復できるとは限りません。資本政策、代表者変更、大型配当、事業譲渡を行う前に、認定・納税猶予への影響を確認します。

よくある質問

計画を提出すれば税金はゼロになりますか?

いいえ。計画提出は入口の一つです。認定、贈与・相続、申告、担保、承継後の要件・届出を満たした場合に納税が猶予され、所定の免除事由が生じたときに免除されます。

特例承継計画の提出期限はいつですか?

中小企業庁の現行案内では2027年9月30日です。古い資料には2026年3月31日と記載されたものがあるため、最新ページと都道府県の窓口で確認します。

後継者は親族でなければなりませんか?

特例措置は親族外の後継者も対象になり得ます。ただし、代表権や議決権割合等の要件を満たす必要があります。

雇用を8割維持できなければ直ちに取消しですか?

特例措置では雇用確保要件が弾力化されています。8割を下回った理由等の報告と都道府県知事の確認が必要になるため、報告不要という意味ではありません。

認定後の届出はいつまで続きますか?

申告後5年間は年次報告・継続届出が中心となり、6年目以後も所轄税務署に継続届出書を提出する取扱いがあります。提出日程は、適用した制度と申告書類に合わせて管理します。

本記事は2026年8月27日時点の一般的な制度説明です。特例の期限・要件・様式は改正されることがあります。実行前に中小企業庁、都道府県、国税庁の最新資料と税理士等の確認を併用してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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