山林の相続税評価|純山林・中間山林・市街地山林の計算

山林の相続税評価|純山林・中間山林・市街地山林の計算

冒頭の場面は、相続で起こり得る問題を説明するための仮想例だ。

相続財産の一覧に「山林」と書いてある。固定資産税の課税明細書にも「山林」とある。登記簿の地目欄にも「山林」とある。三枚の書類が同じ言葉を指している。では、固定資産税評価額に評価倍率を掛ければいい——そう動き出す前に、一度止まってほしい。

山林の相続税評価で最初に問われるのは、書類に書いてある地目ではなく、課税時期の現況だ。そして現況が山林と確認できたとしても、純山林・中間山林・市街地山林のどれかによって計算方式が変わる。さらに、土地の評価が終わっても立木が残っている。保安林の指定や貸付けの契約があれば、また別の確認が必要になる。書類の表記を信じて計算式を選ぶという動き方が、最初の判断を狂わせる。

山林の相続税評価は、課税時期の現況と評価倍率表から純山林・中間山林・市街地山林の区分を確認し、倍率方式または宅地比準方式で計算する。登記上の地目だけで決めず、山林の土地と立木を分けて評価する。

市街地山林の造成費、保安林等の伐採制限、貸付け・分収林などの権利関係も確認が必要。評価通達6項は実勢価格との差だけで自動適用されない。

登記地目より先に、現況を確かめる

登記簿の地目は、過去のある時点に記録されたものだ。その後、現地の使われ方が変わっても、登記は自動で書き換わらない。

財産評価基本通達7は、土地の地目を課税時期の現況によって判定するとしている。登記簿が山林でも、現況が宅地や雑種地であれば、その現況に応じた評価が問題になる。逆に、登記地目が宅地でも現況が山林として使われていれば、山林として評価を検討することになる。

現況の確認には、現地の写真、公図、固定資産税の課税明細書、森林簿などを使う。「登記がそうなっているから」という前提で計算式を選ぶと、そもそも評価の土台が違っていたという事態になる。

区分は評価倍率表で確認する。「純」「中」「比準」の読み方

現況が山林と確認できたら、次は区分だ。純山林・中間山林・市街地山林のどれかによって、計算方式が変わる。

国税庁の評価倍率表では、山林欄に「純」「中」「比準」「市比準」などの表示がある。所在地を確認して、その土地がどの区分に当たるかを読む。この表示が、計算方式の選択を決める。

評価倍率表を引く前に手元にそろえておくものは、所在地(市区町村・地番)、固定資産税評価額、地積、現況写真、公図、森林簿、伐採制限の有無だ。これらが確認できていない段階で計算を始めると、途中で止まることになる。

純山林・中間山林・市街地山林、それぞれの計算方式

財産評価基本通達45・47〜49は、次の方式を定めている。

区分 基本方式 計算の骨格
純山林 倍率方式 固定資産税評価額 × 評価倍率
中間山林 倍率方式 固定資産税評価額 × 評価倍率
市街地山林 宅地比準方式または倍率方式 宅地とした価額から通常必要な造成費を控除して地積を乗じる。倍率が定められた地域は倍率方式

純山林と中間山林は、倍率方式という点で同じ構造だ。適用する倍率は評価倍率表で区分ごとに定められており、所在地によって異なる。

市街地山林は、評価倍率表に倍率が定められていれば倍率方式になる。倍率がない地域では、宅地比準方式を使う。どちらかを自分で選ぶのではなく、評価倍率表を確認してから方式を決める。ただし、宅地比準の結果が近隣の純山林価額を下回る場合や、急傾斜などで宅地造成できない場合には、近隣の純山林価額に比準する扱いがある。

市街地山林の造成費は、現地の状況から積み上げる

宅地比準方式の計算式を見ると、「造成費を控除する」という部分がある。ここで「市街地山林なら大きく引けるはずだ」という方向に動きたくなるが、それは早い。

造成費の金額は、その土地の実際の状況から判断する。標高差、傾斜の度合い、道路との高低関係、擁壁が必要かどうか、土盛りや土止めの工事が必要かどうか。これらを現地資料から確認したうえで、その年・地域の造成費金額を使う。

傾斜がなく道路と同じ高さにある山林と、急傾斜で大規模な擁壁が必要な山林では、控除できる造成費の金額が変わる。「市街地山林だから」という区分だけで造成費の大きさを決めることはできない。現地の状況を確認せずに計算した数字は、後から修正が必要になることがある。

土地の評価が終わっても、立木が残っている

山林の評価で見落としやすいのが、この分離だ。

森林の立木は、原則として土地と別に評価する。財産評価基本通達111以下は、樹種・樹齢を同じくする1団地ごとに評価し、杉・ひのき等の主要樹種については標準価額、地味級、立木度、地利級を使う方法を定めている。

土地の評価額と立木の評価額は別に計算する。山林の固定資産税評価額が分かっても、立木まで相続税評価が終わったとはいえない。樹種・樹齢・面積と所有関係を確認し、土地と立木を分けて財産目録へ記載する。売買資料に土地と立木の合計額がある場合も、内訳を確かめる。

どちらかを決め打ちせず、国税庁の山林・森林の立木の評価明細書を使って土地と立木を区分して確認する。森林簿や現況資料を使い、立木の樹種・樹齢、伐採制限と分収契約も照合する。

保安林・貸付け・分収林がある場合は、別の確認が必要

山林の評価で「自由に使える土地」と同じ計算ができない場合がある。

保安林など法令上の利用制限・伐採制限がある山林は、通達50・123に基づく控除が問題になる。賃借権や地上権の目的となっている山林、分収林契約がある山林も、所有者が自由に利用できる山林と同じ計算方式をそのまま当てはめることはできない。

確認する資料は、森林簿、保安林指定の有無、賃貸借契約書や分収林契約書だ。これらの権利関係は、登記簿や固定資産税の課税明細書だけでは把握できないことがある。山林を相続した場合は、土地の物理的な状況と並行して、こうした制限・契約の有無を調べる必要がある。

「通達評価より鑑定評価が低い」だけでは、通達6項は動かない

山林の時価と通達による評価額に差がある場合、「鑑定評価額で課税されるのではないか」という疑問が生じることがある。

財産評価基本通達6項は、通達によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価するという規定だ。ただし、この規定は「通達評価より実勢価格が高い(または低い)」という差の存在だけで自動的に適用されるものではない。

多額の購入・借入れによって相続税負担が著しく軽減された不動産の事案では、具体的な取得経緯と租税負担の公平から、通達以外の評価による課税が適法とされた。ただし、山林を直接評価した事案ではない。価格の差だけで、あらゆる山林を別評価にできるとする説明ではない。

まず山林の現況と通達の適用条件を確認する。転用が見込めない場合や保安林などには個別の評価規定があるため、通達6項だけを理由に任意の低い価額へ置き換えない。

書類の「山林」という文字を確認したところから、始める

冒頭で止まった場所に戻る。課税明細書と登記簿と財産一覧に「山林」と書いてある。その三枚の書類を前にして、今日できる確認は何か。

まず現況写真と公図を用意し、現地の利用状況を確認する。次に評価倍率表を引いて区分と方式を確定する。市街地山林であれば現地の傾斜・道路との関係を記録する。土地の固定資産税評価額と、別に評価する立木の資料を揃える。森林簿と保安林指定の有無、賃貸借・分収林の契約書の有無を確認する。

この順番で一つずつ確認していくと、計算式を選ぶ前に何が分かっていないかが見えてくる。山林の評価は、書類の表記を信じて計算式を選ぶのではなく、現況と権利関係を確認してから計算式を決める、という順番で動く。

一般的な土地の評価については不動産の相続税評価、山林と雑種地の区別については雑種地の評価も参照してほしい。

よくある質問

登記が山林なら倍率方式か

課税時期の現況と、純・中間・市街地山林の区分を確認する。市街地山林では宅地比準や倍率、転用が見込めない場合の別の扱いがある。

立木は土地に含めてよいか

土地と立木は別に評価する。樹種・樹齢・面積、所有者や分収契約を確認する。

市街地山林なら造成費を大きく引けるか

現況と通常必要な工事に基づく。年度・地域の造成費を使い、宅地転用が見込めない場合の評価も確認する。

保安林は同じ倍率を掛けるか

利用・伐採制限を反映する規定がある。固定資産税の非課税だけから相続税評価も零とは決めない。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

確認日

最終更新:

相続の全体整理が必要な方へ

相続税申告・相続登記・不動産処分まで、ひとつの窓口で相談できます。

税理士、司法書士、不動産会社、金融機関に別々に説明する前に、まずは相続全体の地図を作ることが大切です。ATBでは、遺産分割、相続税申告、登記の段取り、不動産や非上場株式の処分までまとめて整理します。

相続ワンストップサービスを見る

TOP

電話でお問い合わせ LINEで簡単お問い合わせ