不動産評価の資料:通知書・査定額・申告を整理

相続税の不動産評価は何から?固定資産税通知書・査定額・申告の判断

固定資産税の数字、売却の査定、相続税の評価は、目的が違う数字だ。どの書類のどの欄を、何の計算に使うかを分けよう。

不動産の評価が100万円増えても、税金がそのまま100万円増えるわけではない。まず、評価額と税額の違いを確かめる。

父の固定資産税の通知書を見つけ、理恵は弟の航太へ写真を送った。「これを足せば、相続税がかかるか分かるよね」。ところが、後日届いた不動産会社の査定書には、別の金額が書いてある。父が亡くなり、二人で実家の書類を探しているだけなのに、家の値段が増えたり減ったりして見えた。

母はすでに亡くなり、相続人は子二人。理恵は父と同居しており、できれば家を残したい。別居する航太は、まず税金と自分の取り分を知りたい。これは架空の家族だ。

なぜ、家の値段をもう一度計算するのか

預金900万円なら、残高という数字がある。一方、家と土地は、まだ売っていなければ受け取った現金の額はない。それでも相続税を考えるには、ほかの財産と同じように金額へ置き直す必要がある。

その際、家族ごとに「父が大事にしていたから高い」「古いからゼロ」と自由な値段を付ければ、似た財産を受け継いだ人どうしで税負担がばらばらになる。そこで、相続した時の財産の状態を踏まえ、共通の基準によって公平に、また迅速・簡便に評価するため、財産評価基本通達などの方法が用いられる。

原則は相続時の時価による評価だが、土地なら主に路線価方式・倍率方式、家屋なら固定資産税評価額を用いる方法など、財産に応じた計算がある。売却する契約を結ばなければ税の評価ができないという意味ではない。

手元の書類は、まず四つの役割に分ける

書類 主に確認すること それだけでは決まらないこと
固定資産税の通知書・課税明細書 所在地、土地・家屋の価格など 土地の相続税評価額や実際の売却価格
登記事項証明書 地番・地積、所有者・持分、担保など 土地の現況や、使える税の特例
公図・地積測量図、現地の資料 土地の形、隣接地、測量等の情報 境界や実際の面積がすべて確定しているか
不動産会社の査定書 ある条件での売却見込み 相続税評価額や、必ず売れる値段

通知書の「価格・評価額」と「課税標準額」は区別する。住宅用地の特例等で下がった課税標準額を、そのまま相続税の土地評価額にしない。

家屋の評価も、原則として使うのは固定資産税評価額だ。固定資産税の税額や、課税標準額とは違う。

ほかの不動産を探す手がかりには、自治体の名寄帳等もある。名寄帳は、その自治体にある固定資産の課税情報をまとめた資料だ。

全国の財産が一枚で必ず分かるわけではない。父の郵便、購入資料、登記の情報等も照らし合わせよう。

固定資産税の通知書だけでは、申告不要と決められない

理恵は、通知書にある土地の価格2,500万円、建物の価格500万円、預金900万円を足し、合計3,900万円とした。相続人二人の基礎控除4,200万円より少ないので、相続税の心配はないと思っていた。

相続税のために土地を評価した結果、3,000万円だったと仮定しよう。借金、加算する贈与、ほかの財産・非課税財産等がなく、特例を使う前の例だ。

通知書の2,500万円が必ず3,000万円になる、という換算の比率ではない。

財産 相続税のために確認した額
土地 3,000万円
建物 500万円
預金 900万円
合計 4,400万円

子二人の基礎控除は、3,000万円+600万円×2人=4,200万円。上の合計4,400万円は、200万円超えている。

この200万円は、税額ではなく、次の計算に使う課税遺産総額だ。申告の要否や税額を調べるために、土地を正しい基準で評価し直す。

反対に、不動産会社が土地建物を合わせて5,000万円と査定しても、その5,000万円を必ず相続税の評価額として足すわけではない。航太が知りたい売却時の手取りと、理恵が心配する相続税の計算は、関連していても別の表にする。

入口の判断は相続税がかかる目安、計算の流れは相続税の計算手順でも説明している。

土地・家屋・マンションで、見る計算が違う

土地は、所在する地域に路線価が定められているかで、主な計算方法が分かれる。

  • 路線価方式。道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額を出発点に、形状などの補正をし、面積を掛ける。奥に長い、形がいびつ、複数の道路に接するなどの事情で計算が変わる。
  • 倍率方式。路線価がない地域では、土地の固定資産税評価額へ、地域・地目等に応じた評価倍率を掛ける。税額へ倍率を掛けるわけではない。
  • 家屋。原則として固定資産税評価額に1.0を掛ける。土地と同じ路線価の計算を建物にもするのではない。

賃貸している土地・建物は、借りている人の権利や利用状況などに応じた評価も確認する。マンションでは土地の敷地利用権と家屋部分を分け、2024年以後の一定の居住用区分所有財産の評価方法にも注意する。

一つの土地を計算する入門は路線価・倍率方式と補正の考え方、評価単位や権利関係、家屋等の詳しい確認は不動産評価の計算と確認事項へ分けている。

土地の評価を確かめた後、小規模宅地等の特例を判定する

家が大きな財産でも、その一部を切り取って税金として払うことはできない。住まいや事業の土地に一定の条件で減額を認める小規模宅地等の特例は、残された人の生活・事業の基盤を守るための仕組みだ。

自宅の土地に使う特定居住用宅地等なら、条件を満たす場合、330㎡まで80%を減額する。事業用の特定事業用宅地等なら、400㎡まで80%など、区分で限度が違う。

誰が取得するか、相続前後の利用、保有・居住・事業の継続、分割と申告等を、区分ごとに確認する。

理恵が取得する自宅の土地3,000万円の全部に、80%減額の条件を満たすと仮定しよう。土地は600万円になり、建物500万円と預金900万円を足すと2,000万円だ。この例では基礎控除以下になる。

ただし、特例を使って初めて税額が0円になる場合は、相続税の申告が必要だ。最初から通知書の数字を足して3,900万円だったと考える場合とは、手続が違う。

同居していたという一言だけで使えるとは決まらないし、土地だけでなく建物や預金まで80%下がるわけでもない。具体的な条件は小規模宅地等の特例の条件で確認したい。分割前の受け取る人の選び方も、不動産の相続対策に関係する。

評価は分割の後回しにせず、期限と一緒に確認する

相続税の申告・納税は、原則として相続の開始があったと知った日の翌日から10か月以内だ。土地の評価や分割が終わらないというだけで、自動的に延びるわけではない。

遺言、相続人、財産と債務(借金など、支払い等をしなければならない義務)を確認しながら、不動産の評価と使える特例も調べる。分け方が特例や納税資金へ影響するため、「分割してから税金を考える」と一方向に進めないことが大切だ。全体の期限は相続手続の流れで整理している。

評価を多く見積もれば払い過ぎ、少なく申告すれば追加納税や、条件によって加算税・延滞税が問題になる。

不足を直す修正申告と、払い過ぎ等を直してもらう更正の請求には、それぞれ条件と期限がある。誤りに気づいたら、どの時点のどの前提が違ったかを資料で確かめよう。

理恵は、通知書と査定書を一つの「家の値段」の束にしていた。航太と整理し直すと、申告に必要な評価と、家を残す案・売る案で使う数字が分かれた。まだ家の行き先は決まっていない。それでも、違う数字を見て不安をぶつけ合うより、何を確認すればよいかを二人で話せるようになった。

ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

固定資産税の通知書の金額をそのまま相続税に使うか

土地ではそのままとは限らない。路線価方式か倍率方式かを確認する。家屋は原則として固定資産税評価額を用いるが、税額や課税標準額と混同しない。

不動産会社の査定額が相続税評価額になるか

自動的にはならない。売却の見込み、相続税の評価、遺産分割で合意する価額を分けて考える。

不動産評価が増えた分だけ税金も増えるか

同じ額だけ増えるわけではない。遺産全体、基礎控除、法定相続分(法律で決められた相続の割合)による計算、各人の取得と税額控除などを踏まえて税額を計算する。

小規模宅地等の特例で税額がゼロなら申告不要か

特例を使って初めて税額がゼロになる場合は申告が必要だ。適用条件と必要書類を確認する。

マンションも土地と家屋を単純に足せばよいか

敷地利用権と家屋部分を分け、2024年以後の一定の居住用区分所有財産の補正方法なども確認する。

申告後に評価の間違いが分かっても直せないか

修正申告(少なく申告した税額などを、自分で直す手続き)や更正の請求などを検討できる場合がある。間違いの内容、条件と期限を確認して対応する。

制度・計算の確認先

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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