相続手続代行の費用|弁護士・司法書士・税理士・行政書士の範囲

相続手続代行の費用|弁護士・司法書士・税理士・行政書士の範囲

相続手続の代行費用に、全国共通の公定価格はない。財産額の何%、一式何万円という表示だけでは、何を頼めるかが分からない。

戸籍集め、相続登記、税申告、交渉、実費の範囲を、先に確かめよう。相続登記は、不動産を相続人の名義にする手続だ。

母の相続で、由紀が「相続手続一式」の見積りを取った。兄の彰は、登記と税申告まで含むのかと気にしている。

由紀は料金を抑えたい。彰は、仕事が忙しいので、自分が何をするかを先に決めたい。以下は、説明用の架空の家族だ。

見積書に「相続手続一式 ○○万円」と書いてある。

金額は分かった。だが、その「一式」に何が入るのか。戸籍を集める作業も含むのか。税申告や登記は、別料金か。

何を聞けばよいかが分からず、そのまま決めてしまいそうになる。

一式という表示だけでは、費用を比べにくい。高いか安いかの前に、含まれる仕事を分けて見よう。

必要な手続を六つに分け、資格者が法律上扱える仕事と、見積りの範囲を合わせる。

報酬、実費、他の専門家の費用、追加条件を分け、同じ条件で二社以上を比べよう。

一式を、六つの仕事に分ける

相続手続には、性質の違う仕事が含まれる。六つに分けると、済んだことと、残っていることを見つけやすい。

  • 相続人・遺言・相続放棄の確認
  • 預貯金、不動産、有価証券、債務の調査
  • 遺産分割の協議・交渉・調停・審判
  • 遺産分割協議書等の作成
  • 不動産登記、金融機関等の名義変更
  • 相続税・所得税等の申告

窓口が一つでも、内部や外部の弁護士・司法書士・税理士等が分担することがある。

全部込みという説明は、この六つと照らし合わせよう。

資格によって、頼める仕事が違う

資格によって、仕事として扱える範囲が、法律で決まっている。

途中から別の専門家が必要になる場合や、初めから扱えない仕事が、見積りに含まれている場合もある。何を誰に頼めるかを確かめよう。

4つの資格者について、扱える範囲と確認すべき点を順に見ていく。

弁護士:争いの交渉・調停まで扱える

弁護士法72条は、弁護士等でない者が、報酬目的で、一般の法律事件について代理・和解等の法律事務を仕事として扱うこと等を、原則禁止している。他の法律等に例外があれば、別に確かめる。

遺産の範囲、使途不明金、特別受益、遺留分等で争いがあれば、交渉や家庭裁判所の手続を、弁護士に頼めるか確認しよう。遺留分は、一定の近い家族に保障された、最低限の取り分だ。

契約の時は合意していても、案を見て反対が出ることはある。

争いになったら、今の契約は終わるのか。弁護士に引き継ぐのか。別料金はいくらか。この三つを、依頼の前に確かめる。

司法書士:相続登記の申請代理が中心

司法書士法3条は、登記の代理、法務局や裁判所へ出す書類の作成等を定める。相続登記の申請や相談を頼む際の、中心的な資格者だ。

認定司法書士が、簡易裁判所等で代理できる業務にも、範囲と金額の上限がある。

その認定だけで、家庭裁判所の遺産分割調停を代理できるわけではない。調停の代理が必要なら、弁護士が受任できる範囲を確かめる。

法務省が案内する登記の期限も、日程に入れよう。基本の義務は、自分のために相続が始まり、その不動産の所有権を取得したと知った日から3年以内だ。

遺産分割後には、その成立日から3年以内という追加の義務もある。どちらの義務かを分けて、手続全体の日程を決める。

行政書士:合意の文書化と交渉は別

行政書士法は、官公署への書類や、権利義務・事実証明の書類の作成等を定める。ただし、ほかの法律で制限された仕事は扱えない。

合意した分け方を協議書にすることと、対立する相手と条件を交渉することは、違う。

本人の意思を文書にし、伝える仕事なのか。争いになった法律事件で、交渉を代理する仕事なのか。今の話合いの状態と、依頼先の資格・業務範囲を確かめよう。

税理士:申告が必要かを確かめる

税理士法2条は、税務代理、税務書類の作成、税務相談を、税理士業務とする。同法52条は、原則、税理士等でない者が扱うことを制限している。

51条の通知をした弁護士等の例外もある。担当者の資格と、相続税申告、評価、税務署対応、準確定申告等のうち、何を依頼できるかを確かめる。

基礎控除以下らしいという段階で、税の確認は不要と決めない。

難しい土地評価、非上場株式、名義だけでは持ち主が分からない財産、特例等があれば、申告要否だけを調べる依頼もできるか聞いてみよう。財産、借金、生前贈与等の調査が、判断の前提になる。

見積書は報酬と実費を分けて読む

次は、費用の読み方だ。総額だけでは、後から何が加わるか分からない。次の区分で、内訳を確かめよう。

区分 確認例
基本報酬 対象相続人・財産・作成書類・面談回数
加算報酬 相続人数、金融機関数、不動産筆数、期限の短さ
実費 戸籍、証明書、郵送、交通、登録免許税
他士業費用 誰と別契約するか、紹介料の有無、支払先
成功報酬 基準額、経済的利益、最低額、消費税
終了・追加 紛争化、財産追加、解約、原本返却

含む仕事だけでなく、含まない仕事にも、見積書で印を付けてもらう。

登録免許税等の預り実費は、専門家の報酬と分ける。税申告の報酬が財産額で変わるなら、評価後にいくら変わるかも確認する。

比べるのは、同じ仕事を終えるための総額だ。安い見積りでも、後から税申告、登記、交渉費用が加われば、比較は変わる。

説明用に、Aの見積り30万円に、別の登記報酬10万円と税申告報酬40万円を足すと、三つの合計は80万円だ。

Bの70万円に同じ三業務が含まれるなら、最初の30万円だけを見た比較とは逆になる。

相場や当事務所の料金ではない。消費税、実費、税金、ほかの追加条件を除いた、仮の比較だ。

最初の金額と、同じ仕事の合計を分ける

由紀と彰が、三つの同じ業務を頼む仮見積りだ。相場や当事務所の料金を示すものではない。

A:最初の表示は30万円

基本分:30万円
別の登記報酬:10万円
別の税申告報酬:40万円
↓
三業務の合計は
80万円

B:表示は70万円

同じ三業務を含む契約なら、
その合計は
70万円

実際に含む作業と担当者を、契約書で確かめる。

消費税、実費、税金、ほかの追加条件は除いた例だ。実際は、それらも加えて比べる。「30万円の方が安い」と、表示だけで決めない。

由紀と彰は、登録免許税や相続税そのものを、専門家の報酬とは別の欄にした。

一つの窓口に頼むと、連絡をまとめられる。ただし、誰が、どの資格と契約で、どこまで終えるかを確かめて、依頼の範囲を決めよう。

銀行等のサービスも内訳を確認

銀行や信託会社が窓口になる場合も、調査、残高証明、売却等の換価、名義変更、分配、専門家紹介の組合せを確かめる。

窓口が一つでも、登記、税申告、争いの代理は、資格者との別契約・別報酬になる場合がある。

報酬が財産額で決まるなら、最低報酬と、計算に含む財産を調べる。自宅、保険金、非課税財産、借金等をどう扱うかも確かめよう。

仕事の完了は、金融資産を配るまでか。登記・申告まで含むのか。契約書で照らし合わせる。

同じ条件で、二社以上を比べる

比較の前提は、同じにしよう。相続関係図、財産の概算、期限、必要な成果物を、各窓口へ同じように渡す。

別料金の仕事に印を付けてもらい、後から足す費用も含めて比べる。

自分で進める仕事も確認する

すべてを依頼する前に、自分で進められる仕事も確かめる。

戸籍の請求、金融機関への照会、法定相続情報一覧図の申出、一定の登記申請、家庭裁判所への相続放棄の申述等は、相続人本人でも行える。

法務局の法定相続情報証明制度を使うと、戸籍一式を繰り返し提出する負担を減らせる場合がある。

ただし、期限が迫る、相続人が多い、外国・代襲・数次相続がある、土地評価が複雑、対立がある場合は、自力処理の時間と誤りの修正費用も比較する。自分で行う相続税申告の確認項目は相続税申告を自分で行う手順も参照してほしい。

依頼前に一枚の紙を作る

最初に渡す情報を、一枚にまとめておこう。資料を二度集める手間を減らし、同じ条件で見積りを頼む基準にもできる。

  • 死亡日、申告・放棄・登記の期限
  • 相続人候補と連絡・対立の有無
  • 財産・債務の概算と資料の所在
  • 既に行った手続と未処理の手続
  • 希望する成果物、連絡方法、期限

誰が原本を保管し、どの専門家へ共有するかを決めておく。相続登記だけの費用構造は相続登記の費用も参照してほしい。

彰は銀行への照会を頼み、由紀は手元資料を整理する案にした。

二人の間で争いになった時、書類を作る受任者が、そのまま一方の交渉を代理できるとは限らない。引継ぎと費用の精算も、先に確かめる。

契約前に確認する項目

広告上の肩書や最安額だけで選ばず、必要業務を適法に最後まで処理できる構成かを比べる。契約前に確認しておく項目を並べる。

  • 担当資格者の氏名・登録・直接面談の有無
  • 受任業務と対象外業務
  • 紛争化・税務調査・追加財産時の扱い
  • 報酬、実費、他士業費用、解約精算
  • 原本・データの返却、保管期間、個人情報共有
  • 進捗報告の頻度と最終成果物

頼む範囲、受け取る成果物、原本の返却を、契約書で確認する。

口頭の説明と書面が違うなら、契約前に尋ね、合意した内容を契約書に残してもらう。

まず一式を六つの仕事に分ける。次に、各資格者の業務範囲と合わせ、報酬、実費、他の専門家の費用を分けよう。

死亡日と財産の概算を持って相談すると、何を聞くかを具体的にできる。

由紀と彰は、六分野の作業表へ担当と報酬・実費・税を対応させることにした。「一式」の中にある仕事と、残る申告・登記・交渉を明らかにし、引き継ぐ原本や最終成果物も確認して契約を判断する。

ほかにも確認する手続がある場合は、手続き全体・期限・専門家費用の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

代行費用には全国共通の価格があるか

一律の公定価格はない。作業範囲、相続人数、財産、実費、追加条件を揃えて総額を比べる。

一つの窓口なら全手続が料金に含まれるか

登記、税務、紛争代理を別の資格者へ依頼し、別契約や別料金となる場合がある。対象外の作業を見積書へ明記してもらう。

行政書士に紛争交渉も頼めるか

合意内容の書類作成と、紛争となった法律事件の交渉は区別する。対立がある場合は弁護士の受任範囲を確認する。

本人が進められる手続はあるか

戸籍収集や金融機関照会など本人で進められる作業はある。期限、調査の難しさ、紛争と修正に要する時間も踏まえて分担を決める。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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