被相続人が自宅などで保管していた現金は、預金口座に入っていなくても相続財産です。ただし、相続税申告が必要かは現金だけでなく課税対象財産全体と基礎控除などで判断します。
タンス預金を見つけたら、金額・発見場所・発見日時・立会人・紙幣等を記録し、他の相続人と共有して財産目録と遺産分割へ反映します。申告後に見つかった場合は修正申告等の要否を確認し、申告漏れと重加算税を同一視しません。
自宅保管の現金も相続財産になる
国税庁は、相続税がかかる財産として、現金、預貯金、有価証券、土地、家屋など金銭に見積もることのできる経済的価値のある財産を挙げています。現金は、銀行へ預けているか、自宅の金庫・引出し・封筒などで保管しているかによって相続財産でなくなるものではありません。
もっとも、現金が見つかっただけで直ちに相続税申告が必要になるとは限りません。相続や遺贈等により取得した課税対象財産の合計額が基礎控除を超えるか、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うため申告が必要かなど、財産全体で判定します。
誰の現金かを証拠から確認する
被相続人の住居で見つかった事情は重要ですが、それだけで所有者が確定しない場合もあります。同居家族の現金、相続人が葬式費用として預かった現金、事業用の現金、他人からの預り金が混在していないか確認します。
裁判例・公表裁決で財産の帰属が争われる場面では、名義や保管場所だけでなく、原資、取得経緯、管理、利用、当事者間の合意など具体的事実が重視されています。現金についても、被相続人の口座からの出金、メモ、封筒の記載、家族の説明、使用目的などを結び付け、推測と確認済み事実を分けて記録します。
発見直後に残す記録
- 現金を動かす前に、発見場所と保管状態を撮影する
- 発見日、金額、金種、封筒・メモの記載、立会人を記録する
- 通帳の出金、収入、売却代金など原資候補を時系列で確認する
- 相続人全員へ存在と保管方法を共有する
- 財産目録、遺産分割協議、相続税申告へ反映する
発見者の個人口座へ理由なく入金したり、家族間で先に分配したりすると、発見時の状態や保管経緯を説明しにくくなります。保全方法、支出が必要な場合の記録、代表保管者を相続人間で決めます。
申告前・申告後で対応を分ける
相続税申告前に見つかった場合
被相続人の財産と判断した現金を財産一覧へ加え、未分割なら未分割財産として期限内申告の要否を検討します。遺産分割が終わらなくても相続税の申告期限は原則10か月であり、未分割を理由に自動延長されるわけではありません。
相続税申告後に見つかった場合
追加財産により税額が増えるなら修正申告を検討します。税額が減る場合の更正の請求とは方向が異なります。税務署からの連絡前後で加算税の取扱いが変わり得るため、発見日、連絡日、修正の検討・提出日を記録します。
申告漏れと重加算税は別の要件
相続財産である現金を申告から漏らせば、相続税本税、延滞税、過少申告加算税・無申告加算税等が問題になることがあります。しかし、申告漏れがあったことだけで重加算税が自動的に課されるわけではありません。重加算税には、財産や取引に関する事実の隠蔽・仮装と、それに基づく申告という別の要件があります。
税務調査の選定ロジックを推測して「必ず見つかる」「最初に調べられる」と断定することもできません。申告では、死亡時点で所有していた財産を資料から網羅し、不明な出金や現金は使途・帰属を確認します。税務調査統計の読み方は相続税の税務調査は8割超?、重加算税の要件は相続税の重加算税とはで解説しています。
公的資料・根拠
- 国税庁「相続税がかかる財産」
- 国税庁「相続税の申告と納税」
- 国税庁「第11表の付表3 現金・預貯金等用」記載例
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ」
- e-Gov法令検索「国税通則法」
- e-Gov法令検索「相続税法」
よくある質問
タンス預金は相続税の対象ですか
被相続人が死亡時に所有していた現金は相続財産です。申告要否は現金を含む課税対象財産全体と基礎控除、適用する特例などで判断します。
自宅で見つかった現金は必ず被相続人のものですか
保管場所は判断材料ですが、それだけで確定しない場合があります。原資、取得経緯、管理、使用目的、同居家族の資料を確認します。
見つけた現金を代表相続人の口座へ入れてもよいですか
先に発見状況を記録し、相続人間で保管方法と支出記録を決めます。理由の分からない入金にすると後の説明が難しくなります。
申告後に現金が見つかったらどうしますか
追加財産で税額が増える場合は修正申告の要否を確認します。発見時点と税務署からの連絡時点を記録して早めに検討します。
タンス預金の申告漏れは必ず重加算税ですか
必ずではありません。重加算税には、隠蔽・仮装と、それに基づく過少申告・無申告という別の要件があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。現金の所有者、相続財産全体、遺産分割、申告時期、税務署との連絡状況により対応は異なります。個別の手続は税理士・弁護士へ資料を示して確認してください。



