住宅ローンを完済しても、登記簿の抵当権は自動的には消えない。所有者が亡くなっている場合は、完済等の原因がいつ生じたかによって、相続登記との順序や申請する人を確認する。
父の自宅を相続した文也は、団信でローンが返済されたと聞き安心した。ところが登記を調べると、銀行の抵当権がまだ記録されている。「借金が残っているのか」と姉の沙織に聞かれ、返済の精算と登記が別だと気付いた。
残高ゼロの確認と、登記の確認を別々に行う
抵当権は、ローン等を払わない場合に不動産から優先的に回収するための担保の権利である。返済によって実体上の担保が消えても、登記簿の記録を消す申請は別に必要となる。
まず金融機関に完済・解除等の状況を確認し、登記事項証明書等で、対象の土地・建物、抵当権者、受付番号、担保の種類を照らす。抵当権と根抵当権は仕組みが違うので、同じ説明をそのまま当てはめない。
団信の支払、家族がした一括返済、生前に済んでいた返済でも、登記が残ることはある。文也は、銀行の精算資料と登記簿を別々に用意した。登記が残っているだけで、同額のローンが現在も残るとは判断しない。
死亡日と、抹消の原因の日を並べる
故人が生前に完済していた場合と、死亡後に団信等で返済された場合では、誰の権限でどの順序の申請をするかが異なり得る。死亡後に原因が生じた場合は、相続登記を先に行ってから抹消するのが通常の流れとなる。
生前に抹消の原因が生じていた場合には、相続登記の前に相続人から申請できる場合がある。相続人の範囲と、原因・日付を示す書類を確認する。「親の名前が残っていたら必ず先に相続登記」とも、「誰でも一人で消せる」とも決めつけない。
法務局の完済後の案内も、現在の所有者の氏名・住所が登記と一致しない場合には、住所・氏名の変更や相続等の手続を確認するよう案内している。複数の名義変更や古い相続がある場合は、書類をそろえて管轄法務局や司法書士へ確認したい。
銀行からの書類と、相続関係の書類をそろえる
金融機関から受け取る、弁済や解除等を示す書面、登記識別情報または登記済証(不動産の権利に関する重要な情報・書類)、委任状などを確認する。紛失した場合や、金融機関の合併・名称変更がある場合は、自己流で代用品を作らず再発行や追加手続を相談する。
相続人として申請するなら、戸籍等の相続関係を示す資料や、相続登記の資料を確認する。申請方法によって、書類の提出・原本還付、本人確認等も異なる。ネットの一般的な様式だけで故人の案件へ当てはめない。
文也は銀行から届いた封筒を、返済終了のお知らせだけと思って捨てずに保管した。家と敷地の両方に担保が付いている場合や、土地が数筆ある場合は、対象漏れがないか確認する。
費用と完了後の登記まで確かめる
通常の抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円が基本となる。土地1筆と建物1個なら2,000円が目安だが、対象の数や登記の種類を確認する。相続登記の税額、証明書取得費、専門家報酬は別の費用である。
抹消を申請したら、補正の連絡等に対応し、完了後の登記で対象の抵当権が消えているかを確かめる。抵当権の記録が消えることと、所有権が希望する相続人へ移っていることを、別々に確認する。
文也と沙織は、返済、相続による取得、担保の抹消の三つを一覧にした。売却が近い場合は、抹消を決済日まで放置せず必要な書類を先に確認する。相続登記の義務の期限も、抹消の作業と一緒に後回しにしない。
関連する手続は、不動産の相続手続き|登記・評価・売却までの進め方からも確認できる。
よくある質問
団信で返済されたら抵当権も自動で消えるか
返済と抹消登記は別の手続だ。金融機関から必要な書類を受け取り、申請を進める。
相続登記より先に抹消できるか
完済等の原因が死亡前か死亡後かなどで異なる。故人の死亡日と原因証書の日付を確認して手順を確かめる。
土地と家で登録免許税は1,000円か
通常の抹消は不動産1個につき1,000円が基本だ。土地1筆と建物1個なら通常2,000円となり、他の費用は別に必要となる。
確認に使える資料
2026年10月21日時点の一般的な説明である。登場人物と金額は説明用の架空の例で、実際の相談事例ではない。具体的な判断は資料と事情を確認して行う。



