公正証書遺言の費用を知らずに動くと、後悔する

公正証書遺言の費用とは、公証役場で法的効力の高い遺言書を作成する際にかかるコストの総称で、主に「公証人手数料」「証人費用」「その他雑費」の三つで構成されるとされています。

結論から言うと、公正証書遺言にかかる費用は財産額によって大きく変動する可能性があり、事前に料金体系を把握しておくことが、スムーズな遺言書作成につながる可能性があります。

「きちんとした遺言書を残したい」──その願望の裏に潜む、想像以上の「費用」という名の伏兵

人間というのは不思議なもので、自分が元気なうちは「遺言書」という三文字を、どこか他人事として処理しようとする。

しかし、ある日を境に。突然、その三文字が、目の前に巨大な岩壁として現れる。

「ちゃんとした遺言書を作っておかなきゃ」「家族に迷惑をかけたくない」──そう思い立ち、ようやく重い腰を上げて調べ始めた瞬間、遭遇するのだ。「公正証書遺言の費用」という、思いのほか複雑な料金体系に。

「え、こんなにかかるの?」という静かな驚愕。これが、人々の行動を止め、「やっぱり来月でいいか」という先延ばしの沼へと引きずり込む、もっとも凶悪な魔物の正体なのだ。

焦り顔

遺言書を作ろうとしたら、費用が複雑すぎて何から手をつければいいのかさっぱりわからない…。

で、結論から言うと──公正証書遺言の費用は「財産額」によって劇的に変わる

シンプルに言う。公正証書遺言にかかる費用は、大きく分けて「公証人手数料」「証人費用」「その他雑費」の三本柱で構成されている。

そしてこのうち最大の変数が「公証人手数料」だ。これは一律いくら、という話ではない。故人が遺す財産の総額、さらには相続人ごとに承継させる財産の金額によって、手数料がスライドしていく構造になっているのだ(公証人手数料令第9条別表に基づく)。

「じゃあ財産が多いほど高くなるのか」──そう。その理解で、だいたい正しい。

ただし、ここには「目的価額」という計算ロジックが介在する。遺言で各相続人や受遺者に承継させる財産の価額ごとに手数料を計算し、それを合算する、という仕組みだ。相続させる相手が複数いればいるほど、計算の回数も増え、合計額も積み上がっていく可能性がある。

脳内のカロリーが、じわじわと燃焼し始めるのを感じるだろう。これが公正証書遺言費用という迷宮の入口だ。

費用の「三本柱」を解剖する

ではひとつひとつ、冷静に分解していこう。

① 公証人手数料(最重要)

公証人手数料令の別表に定められた基準によると、目的価額に応じた手数料の目安はおおむね以下のような段階構造になっている可能性がある。

  • 目的価額100万円以下:5,000円程度
  • 目的価額200万円以下:7,000円程度
  • 目的価額500万円以下:11,000円程度
  • 目的価額1,000万円以下:17,000円程度
  • 目的価額3,000万円以下:23,000円程度
  • 目的価額5,000万円以下:29,000円程度
  • 目的価額1億円以下:43,000円程度

※これらは目安であり、実際の金額は公証役場や財産の内容によって異なる場合がある。必ず事前に公証役場へ確認を。

ここで重要なのが「加算ルール」だ。財産総額が1億円未満の場合、全体の手数料にさらに1万1,000円が加算される場合がある。「財産が少ないのに割高感がある」と感じる人が多いのは、この加算の存在によるところが大きい。

図解

② 証人2名の費用

公正証書遺言の作成には、証人が2名必要だ(民法969条)。これは法律の要求であり、省略できない。

知人・友人に頼めば費用はかからない場合もあるが、相続人やその配偶者など利害関係者は証人になれない(民法974条)。適切な人選が難しい場合は、公証役場や弁護士・司法書士に証人を依頼することになり、1人あたり5,000円〜1万円程度の費用が発生する可能性がある。

③ 専門家への依頼費用(任意だが、事実上の必需品)

「自分で公証役場に行けばいいんでしょ」──その発想、半分正解で半分罠だ。

公正証書遺言は、公証人が作成する。しかし、その「原案」は依頼者自身が用意しなければならない。この原案の精度が低ければ、遺言書全体の品質が揺らぐ。「この表現では意図が曖昧だ」「この書き方では後で揉める可能性がある」──そういった事態を事前に防ぐために、弁護士や司法書士に原案作成を依頼するケースが多い。費用の目安は10万円〜20万円程度となる場合があるが、財産の内容や複雑さによって上下する可能性がある。

「自分のケースがどれに当たるか判断したい」という人は、まず公証役場か弁護士・司法書士に費用の見積もりを問い合わせてみるのが、もっとも手っ取り早い一手だ。

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「費用がかかるなら、自筆証書遺言でいいじゃないか」──その判断の、知っておきたいリスク

ここで必ず浮上するのが、この反論だ。

確かに、自筆証書遺言は費用がほぼかからない。自分で書いて、封をするだけだ(民法968条)。

しかし。その「お手軽さ」の代償として、事前に把握しておきたいポイントがいくつかある。

まず、自筆証書遺言は死後に家庭裁判所の「検認」手続きが必要だ(民法1004条。ただし法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要)。この検認、相続人全員に通知が届き、全員が顔を揃える形になる。全員が。これだけで、どれだけのドラマが生まれるか、察していただけるだろうか。

さらに見落とせないのが「無効リスク」だ。一字でも自筆でない部分があれば、日付が欠けていれば、そして財産目録がパソコン作成の場合に各ページへの署名押印がなければ(民法968条2項)──その遺言書は、法的な効力を持たない可能性がある。

費用を抑えようとした結果、遺言書そのものが「ただの紙切れ」になるという、究極の本末転倒劇。これが待ち受けているのだ。

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絶望するな。費用の「最適化」は、できる

「結局、いくらかかるんだ」と頭を抱えているあなたに、少し息を整えてもらおう。

公正証書遺言の総費用は、ケースにもよるが、財産が一般的な規模(不動産+預貯金で数千万円程度)の場合、専門家費用込みで15万円〜30万円程度に収まるケースが多いとされる。これは「一生に一度」の出費として考えれば、家族の争族(争族:相続争いのこと)リスクや、遺された家族の精神的疲弊と引き比べると、決して高くはない投資である可能性がある。

そして、見逃せない視点がもう一つある。

遺言書の有無は、相続税にも影響を与え得る。

例えば、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)や小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)は、申告期限後3年以内の分割見込書を提出することで後から適用することも可能だ。ただし、明確な遺言書があれば遺産分割協議そのものが不要になり得るため、手続きをよりスムーズに進めやすくなるという利点は大きい。遺言書作成コストを遥かに超えた節税効果が生まれる可能性もある、という視点で費用対効果を考えてみてほしい。

費用対効果という視点で、改めて公正証書遺言を見直してほしい。

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今すぐ動け。「来月でいいか」は、最悪の選択だ

公正証書遺言に関して言えば、作成時期に法的な期限は存在しない。だからこそ、人は先延ばしにする。

しかし現実は残酷で、健康状態が急変した後では、公証人に出向く体力がなくなる場合がある。入院後に公証人に出張してもらうことは可能な場合もあるが、手続きの難度と費用は上がる可能性がある。

「元気なうちに書く」──これが、公正証書遺言において唯一無二の鉄則だ。

そして繰り返すが、すべてを一人で抱え込む必要はない。費用の見積もりから原案の作成まで、弁護士や司法書士がサポートできる領域は広い。まず公証役場か専門家に問い合わせて「自分のケースではいくらかかるか」を把握することが、行動の第一歩になる。

早めに動き出した人間だけが、落ち着いて備えられる。伝わりましたかね。

ホッとした顔

費用の見通しを先に把握しておけば、家族への備えもしっかり整えられるんだな。早めに動いてよかった。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

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