父母が離婚しても、それだけで、子と実父・実母との親子関係はなくならない。前の婚姻の子と、今の婚姻の子を、今の家族かどうかで分けない。
離婚した元配偶者本人の立場とは違う。故人と一人ずつの、法律上の関係を確かめよう。
父の誠一が亡くなり、遥へ、父の再婚相手の由紀から連絡が来た。遥と弟の拓也は、父母の離婚後、母と暮らして成人した。由紀と父の間には、13歳の奏がいる。
遥は、もう別の家の子だから、相続には関わらないと思っていた。遠い家の話に、突然呼ばれたような気持ちになった。
由紀も、家を手放さずに奏を育てられるか、不安だった。どちらも、相手を困らせたいわけではない。
これは、離婚・再婚と子の権利を説明する、架空の家族だ。金額も仮定として考える。
離婚や疎遠だけでは、子の権利は消えない
故人の子は、相続人となる(民法887条1項)。親の離婚、どちらの親が親権者だったか、戸籍や姓の変更、長年会っていないことだけでは、実親子の関係はなくならない。
養育費の支払いの有無も、それだけで相続人かを変えるものではない。
ただし、特別養子縁組による実親側との関係の終了、相続放棄、欠格・廃除等があれば、結論は変わる。欠格・廃除は、一定の場合に相続権を失う制度だ。
戸籍で親子関係と縁組を調べてから、相続権を失う事情等がないかも確かめる。
離婚した元配偶者本人は、故人が亡くなった時の配偶者ではない。元配偶者という理由だけでは、相続人にならない。
元配偶者の権利と、その人との間の子の相続権を、混同しないようにしよう。
夫婦としての関係が終わることと、親子の関係がなくなることは違う。
親同士の選択や、どちらの家で育ったかだけで、実親の子である立場まで外れるわけではない。同居や姓より、親子関係を基に確かめよう。
遥の母は、誠一の元妻というだけでは、誠一の相続人にならない。一方、遥と拓也は、誠一の子として確かめる。
母が子に代わり、もう関係ないと言っても、それだけで、成人した子の相続権は消えない。
現在の配偶者と子3人なら、子はそれぞれ6分の1
配偶者と子が相続人なら、法定相続分は、配偶者2分の1、子全体で2分の1だ。法定相続分は、法律が定める相続の割合をいう。
子が数人いれば、子全体の分を、均等に分ける。前の婚姻の子、今の婚姻の子、認知された子、法律上の養子という違いで、現在の子の相続分に大小をつけない。
誠一の相続人が、現在の配偶者の由紀と、子の遥・拓也・奏だけなら、由紀が2分の1、子全体が2分の1だ。
子の分を三つに分けるので、一人分は、2分の1÷3=6分の1となる。
計算する遺産を6,000万円とする。遺言、借金等の債務、特別受益等の調整はない、単純な例だ。特別受益は、一定の生前贈与等の特別な利益を、取り分へ反映させる仕組みとなる。
この例では、由紀3,000万円、遥・拓也・奏は各1,000万円相当だ。同居の奏は2倍、会っていない遥は半分、という決め方はしない。
これは、割合の基準だ。全員が、必ず現金で受け取るという意味ではない。
自宅を誰が受け取るか、ほかの人へ代償金を払うか等は、遺言、財産の内容、相続人全員の合意等から具体的に決める。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。
誠一の相続人が、由紀と遥・拓也・奏だけである本文の例。
遺産全体の
2分の1
6,000万円なら、価額は3,000万円。
子全体の2分の1を、三人で分ける
↓
一人につき6分の1
一人につき1,000万円相当。母が違うことや、同居の有無だけでは差をつけない。
遺言・債務・特別受益等の調整がない法定相続分の例だ。必ず現金で受け取る額でも、遺留分を示す額でもない。
半血兄弟の規定は、別の場面で使う
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹は、双方が同じ兄弟姉妹の2分の1という規定がある。
ただし、これは、故人の兄弟姉妹が相続人となる場面の規定だ。
父の相続で、母の違う子同士が相続する場合は、どちらも父の「子」だ。互いに半血の兄弟姉妹でも、一方の法定相続分を半分にはしない。
誰が亡くなり、その人との関係が子なのか、兄弟姉妹なのかを、先に確かめよう。
連れ子・普通養子・特別養子の違い
| 関係 | 相続で確認する点 |
|---|---|
| 養子縁組のない連れ子 | 再婚相手の子としての相続権は生じない。実親との関係は別に確認する。 |
| 普通養子 | 養親の子となり、原則として実親との親族関係も残る。双方の相続人になり得る。 |
| 特別養子 | 原則として実方の父母・血族との親族関係が終了する。法律上の例外も確認する。 |
養子縁組の日から、養子と養親・その血族との親族関係が生じる(民法727条)。
実親の再婚で、子が姓を変えたり、同じ戸籍へ入ったりしても、それだけで再婚相手との養子縁組ができたとは判断できない。
特別養子縁組では、実親側の親族関係が、原則として終わる(民法817条の9)。ただし、配偶者の嫡出子を特別養子にする場合の実親側等には、例外がある。
嫡出子は、法律上、婚姻中の夫婦の子として扱われる子をいう。普通養子か特別養子か、どの親との関係が残るかを、戸籍と手続の資料で確かめる。
ここは、前の例とは別に考えよう。由紀が再婚時に連れてきた子がいたとしても、同じ家で暮らすだけでは、誠一の子として相続人になるわけではない。
誠一との養子縁組等、法律上の関係を調べる。暮らしの実感と法律上の関係が違うこともある。財産を渡したいなら、元気なうちに遺言等を考える意味がある。
子が先に亡くなったら、代襲を調べる
故人の子が、相続開始以前に亡くなった場合や、欠格・廃除で相続権を失った場合は、その子の子等が、代襲相続人となることがある。
代襲では、その子等が受け取るはずだった割合を引き継ぐ。代襲する人が複数いれば、その範囲で分ける。
相続放棄は、代襲の原因ではない。子が放棄しただけで、その子の子が、代わりに相続人になるわけではない。
子が故人より後に亡くなった場合も、代襲とは違う。いったん取得した相続上の立場を、次の相続で引き継ぐ問題となる。
養子の子は、出生と縁組の順序も調べる。縁組前に生まれていた子は、その縁組だけでは、養親の直系卑属にならず、通常は代襲しない。
直系卑属は、子や孫等、自分より後の世代の直系の親族をいう。縁組後の出生や、別の法律上の親族関係がある場合と区別し、出生・縁組・死亡の日を並べよう。
未成年の子は、代理の方法を確かめる
未成年の子も、相続人だ。子だから協議に参加させなくてよい、ということにはならない。
親権者と子が、共に相続人として遺産分割の協議をする場合は、二人の利益がぶつかる。そのため、原則として、家庭裁判所が選ぶ特別代理人が、子を代理する必要がある。
相続人ではない親権者が複数の未成年の子を代理する場合にも、子同士の利益相反を確認する。親がまとめて署名すればよいとは限らない。申立てには遺産分割協議書案等を用意する。裁判所の特別代理人選任の案内を参照できる。
奏は13歳なので、由紀が奏の分まで、すべて決められるわけではない。由紀の取り分が増えれば、奏の分が減る等、同じ遺産を分け合う立場だからだ。
特別代理人は、由紀を悪い親だと決めつけるための制度ではない。由紀自身の立場と、奏の立場を分け、子の利益を独立して扱うための手続だ。
遺言と子の遺留分は別に確認する
有効な遺言で、現在の配偶者等へ財産を集めることはできる。ただし、子には原則として、遺留分がある。遺留分は、一定の近い家族に保障された最低限の取り分だ。
配偶者と子三人の例では、遺留分全体は、計算の基となる財産の2分の1。各子は、2分の1×6分の1=12分の1となる。
遺留分を計算する財産額には、一定の生前贈与や借金等も関わる。死亡時の預金残高だけでは、計算しないようにしよう。
現在の遺留分侵害額請求は、原則として、お金の請求だ。期限は、相続開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、死亡から10年となる。遺贈は、遺言で財産を渡すことをいう。
ここからは、別の仮定だ。計算の基を同じ6,000万円とし、誠一が全財産を由紀へ渡す有効な遺言を残し、子はほかに何も受け取っていないとする。
各子の遺留分は、6,000万円×12分の1=500万円相当となる。法定相続分で考えた1,000万円とは、違う数字だ。
お金を請求できることと、遥が自動的に家の一部を取得し、すぐ売れることは違う。
由紀の住まいと支払資金も、遺言の内容と実際の財産から考える。遺留分には贈与・債務等の調整があるため、この金額を、ほかの家族へそのまま使わないようにしよう。
古い相続は、当時の法律も確かめる
以前の法律には、婚姻外の子の法定相続分を、婚姻内の子の半分にする規定があった。この区別は、本人が選べない親の婚姻関係を理由とするものとして、違憲と判断された。
ただし、同時期の別の相続で、裁判や合意等によって、既に確定した法律関係まで影響するものではない。
これは、婚姻外の子の相続分の差別に関する判断だ。離婚後の子は半分だった、という意味ではない。
古い相続は、死亡日、遺言、協議・裁判の内容を調べ、当時の条文や、確定済みの関係も含めて確かめる。
協議の前に、家族関係をまとめる
故人の出生から死亡までの、戸籍・除籍・改製原戸籍を集め、実子、認知した子、養子を、すべて調べる。改製原戸籍は、戸籍の作り直し前の記録だ。
出生・縁組・死亡と、現在の法律上の配偶者を、相続関係図にまとめる。必要に応じ、代襲する人の戸籍も追加しよう。
連絡を取りにくい相続人も、除外して協議を進めてよいわけではない。財産一覧と根拠資料をそろえ、連絡方法を整える。全体の順位は相続人と法定相続分の案内を基に確認できる。
遥は、由紀の家を奪うために参加するのではない。由紀も、自分と奏の暮らしを守るために、資料を見たい。
二人は、前の家族と今の家族という呼び分けより、誠一との法律上の関係、遺言、財産の一覧を、先に共有することにした。
連絡したくない事情や、まだ話せない気持ちがあっても、それだけで相続人を外して、協議を終えることはできない。
権利の確認と、話合いの方法を分けて整える。それが、異なる家で暮らしてきた家族の相続を進める土台となる。
ほかにも確認する手続がある場合は、相続人・家族関係の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
離婚して戸籍や姓が変わった子も相続人か
それだけでは実親子関係は消えず、原則として相続人になる。特別養子縁組、放棄、欠格、廃除等は別に確認する。
前の婚姻の子は、現在の婚姻の子の半分か
違う。どちらも亡くなった人の子であれば同順位・均等であり、半血兄弟の規定を使う場面ではない。
再婚相手の連れ子も相続人になるか
再婚だけではその再婚相手の相続人にならない。法律上の養子縁組が成立しているかを確認する。
普通養子になった子は実親を相続できるか
原則として実親との親族関係も残るため、実親と養親の双方の相続人になり得る。特別養子とは区別する。
親が相続放棄したら孫が代わりに相続するか
相続放棄は代襲の原因ではない。死亡、欠格、廃除による代襲と区別する。
本記事は一般的な情報を示すものである。具体的な手続や税務は、亡くなった日、財産、資料などを確認して判断する必要がある。



