数次相続の手続き。遺産分割・申告・放棄を分けて整理

数次相続とは|遺産分割・申告期限の特則・相続放棄の整理

数次相続は、遺産分割が済まないうちに、その相続人も亡くなり、次の相続が重なる場面をいう。

先の遺産について、その相続人が持っていた権利義務は、その人の相続関係を通じて引き継がれる。

父の遺産分割を話し合っていた敦と妹の真奈は、母の光子も亡くなり、二人分の手続を抱えることになった。

敦は、父の財産も、全部まとめて半分ずつにすればよいのかと考える。真奈は、母の借入れと申告期限を、先に確かめたい。

ここからは、架空の家族で考えよう。人物・金額は、説明用だ。

先に亡くなった人の相続と、後で亡くなった相続人からの引継ぎを、分けて調べる。誰が関わるか、財産・借金等の債務、申告・放棄の期限を、一つの表に並べても、各相続の区別を残そう。

死亡のたびに、権利と義務の引継ぎが起きる。このため、母が父の相続で得た地位も、母の相続で引き継ぐことになる。

敦と真奈は、父の相続を最初からなかったことにせず、二段階に分けて整理することにした。

父の相続で母が得た地位を引き継ぐ

父が亡くなった時の相続人は、光子、敦、真奈だったとする。

光子も後で亡くなれば、父の遺産について光子が持っていた地位を、誰が引き継ぐかを調べる。光子の相続人も、戸籍等で確かめる必要がある。

父の相続人と、母の相続人が、いつも同じとは限らない。

再婚、養子、前の婚姻中の子、放棄、さらに相続が重なる事情があれば、参加者が変わる。遺言も、父母それぞれについて調べよう。

死亡の順序と、承認・放棄を調べる

父より先に子が亡くなっていた場合に、その子である孫等が代わって相続するのが、代襲相続の典型だ。

この例では、父の死亡時には母が生きていて、その後に亡くなった。母の代襲相続と呼ぶわけではない。配偶者には、子と同じような代襲の仕組みはない。

相続人が承認・放棄を決めずに亡くなった場合は、再転相続として、選択の問題も生じる。

民法916条の熟慮期間も調べよう。熟慮期間は、相続を受けるか、放棄するか等を決めるための期間だ。

既に単純承認をしたか、放棄を申し出たか、財産を処分したかも調べる。事情を確かめず、二つの相続を同じようには扱わない。

敦は、父の死亡日、光子の死亡日、各人が知った日、既にした選択と処分を並べる。

真奈は、父の借金と光子自身の借入れを分ける。同じ書類に父母の名前があっても、どの相続の権利や債務かを確認する。比較は代襲相続の解説でも確認できる。

二つの相続分を、金額で追ってみる

父の遺産6,000万円、光子自身の財産1,000万円とする。父の相続人は光子と子二人、光子の相続人は子二人だ。

遺言、債務、贈与・寄与等の調整はなく、すべて法定相続分で整理する、説明用の仮定としよう。法定相続分は、法律が定める相続の割合だ。

段階 この条件での法定相続分相当
父の相続 光子3,000万円、敦1,500万円、真奈1,500万円。
光子の相続 父の相続に由来する3,000万円と自身の1,000万円、合計4,000万円を子二人が各2,000万円。
二段階の合計 子各人は父からの1,500万円と母からの2,000万円、計3,500万円に相当。

これは、権利関係を単純に追う例だ。未分割の遺産を、誰が具体的に受け取るかまで、自動で決まるものではない。

分割結果、費用、債務等で、実際の取得額は変わる。父の家が含まれるなら、同額の現金が口座にあるわけでもない。

各人の3,500万円は、相続税額ではない。税は、父と母それぞれの課税価格、法定相続人、控除や特例等から計算する。

法定相続人は、法律で相続人となる人だ。同じ財産が関係しても、どちらかの相続の調査を、省けるわけではない。

協議書に、相続と参加者の立場を書く

父の遺産分割には、光子の立場を引き継いだ人も、その立場で関わる。

父母の財産を混ぜ、すべて二人で分けると書くだけでは、対象と引継ぎの経緯が分からなくなる。誰の相続か、どの財産か、誰がどの資格で参加するかを、明らかにしよう。

協議書を別々に作るか、一通の中で分けて書けるかは、相続関係、財産、必要な登記と提出先から確かめる。必ず二通、必ず一通と、一律には決めない。

不動産の名義を変える相続登記の順序や、中間の登記を省略できるかも、具体的な経緯で変わる。

真奈は、父名義の不動産、母名義の預金、父の未分割預金を別に表示する。署名後は銀行の払戻し・送金、登記後の名義と持分、精算の完了まで確認する。

父母いずれかに認知した子等がいる可能性も、戸籍と手続の経緯から確認する。

税の期限は、誰の申告かで調べる

申告が必要な相続税は、原則として、その相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告する。

父と母の相続で、それぞれ申告が必要か、期限はいつかを調べる。未分割というだけで、自動で延びるわけではない。

ただし、申告すべき人が、提出期限前に未申告のまま亡くなった場合は、相続税法27条2項の特則を調べる。

その人の相続人が引き継いで行う申告では、後の相続開始があったことを知った日の翌日から、10か月以内という扱いが問題となる。ほかの人の、父の相続税の期限まで、全部延びる意味ではない。

父の相続税を申告すべき光子が、期限前に未申告で亡くなったとする。

敦たちが光子から引き継ぐ、父の相続税の申告と、敦・真奈自身に係る父の申告、母自身の相続税の申告を分けよう。誰の義務を、どの条文で申告するか、税理士等へ確かめる。

敦は、誰が亡くなったかに加え、誰の納税義務かも、表の欄に入れた。

母が亡くなっても、父に関するすべての期限を、後へ書き換えてよいわけではない。既に申告済み、期限経過、税務署の決定等がある場合も、それぞれの状態を調べよう。

誰の申告かで、期限を分ける

本文の父・光子・子二人の例。各申告が必要となる場合を比べる。

子自身の、父の申告

敦・真奈に、元からある申告義務。

父の相続開始を知った日の翌日から、原則10か月。

光子から引き継ぐ、父の申告

光子に申告義務があり、期限前に未申告で亡くなった場合。

母の相続開始を知った日の翌日から10か月以内という、27条2項の特則を調べる。

子が行う、母の申告

母自身の相続について、子に生じる申告義務。

母の相続開始を知った日の翌日から、原則10か月。

母の死亡で、父について全員の期限が延びるわけではない。既に申告済み、期限を過ぎた場合、税務署の決定等がある場合は、その状態も別に調べる。税額や申告義務の有無を、この図だけで決めないようにしよう。

未分割の税と、控除の条件を調べる

分割前でも、必要な申告・納税を進める。未分割の税は、民法の相続分や、遺産の全部または一定割合を遺言で渡す、包括遺贈の割合に基づいて計算する。

後で分割したら、税額の増減に応じて、修正申告や更正の請求を考えよう。更正の請求は、多く申告した税額等を減らすよう、税務署へ求める手続だ。

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、未分割のまま、当初の申告で自動で使えるものではない。

分割見込書、後日の分割、更正の請求、例外的な承認等の条件を調べる。光子が分割前に亡くなった場合は、財産の取得や特例を、配偶者が生きている通常例と同じには考えない。

10年以内に相続が重なり、後で亡くなった人に、前の相続で相続税が課されていた等の条件を満たす場合は、相次相続控除も調べる。

数次相続なら必ず使える制度ではない。前の税額、期間、財産等から計算する。母に前の相続税が課されていなければ、当然に控除できるとは考えない。

放棄の判断前に、二つの相続を分ける

母の相続は放棄するが、父の財産は残したい。この場合も、父の相続で直接得た地位と、母を通じて引き継ぐ地位を分ける。

承認の状況や、再転相続での選択によって、問題は変わる。家族のメモだけで、放棄の効果を決めないようにしよう。

相続放棄は、家庭裁判所へ申し出る申述が必要だ。熟慮期間は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月となる。

民法916条等の適用も調べる。調査が終わらない場合は、期間内に、期間を延ばす申立ても考えよう。

預金を自分のために使ったり、財産を売ったりすると、相続を受け入れたと扱う、法定単純承認等の問題が生じることがある。

誰が、どの財産を、何のために処分したかを記録し、判断前に確かめよう。調査、財産を守る行為、支払、処分を、同じものとして扱わない。

各相続の確認表を作る

  1. 父母それぞれの死亡日、知った日、遺言、戸籍上の相続人を確認する。
  2. 相続開始時の財産・債務と、その後の承継・処分を分けて記録する。
  3. 放棄等の選択、税の申告義務者と期限、登記の状態を並べる。
  4. 協議書、申告書、銀行・登記の実行結果を照らし合わせる。

敦と真奈は、光子の地位を引き継いだことと、光子自身の財産を受けることを区別し、未確認の借入れを調べることにした。

全体の順序は相続手続の流れを参照し、各相続の期限は個別に確認する。

確認に使える公的資料

ほかにも確認する手続がある場合は、相続人・家族関係の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

数次相続と代襲相続は同じか

異なる。相続開始の前後どちらで亡くなったかを確認し、先に得た地位の承継と、代わりに相続人となる場合を区別する。

協議書は必ず二通必要か

相続ごとの関係と財産を明確にする必要がある。別紙に分けるか一通内で整理できるかは、登記等の手続と提出先に沿って確認する。

相続税の期限は全員分まとめて延びるか

延びない。期限前に未申告で亡くなった人の申告を相続人が引き継ぐ場合の特則と、他の人自身の申告期限を区別する。

未分割でも申告できるか

申告が必要なら期限対応を行う。未分割の計算と使えない特例、後日分割したときの修正・更正を確認する。

相次相続控除は必ず使えるか

前の相続で亡くなった人に相続税が課されていたことや10年以内などの条件がある。数次相続という名前だけで適用は決まらない。

本記事は一般的な情報である。具体的な承継・放棄・税務・登記は、死亡順序、各選択、財産、資料を確認して判断する。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

TOP

電話でお問い合わせ LINEで簡単お問い合わせ