非上場株式の相続手続では、株式数と権利内容を確認し、遺産分割前の権利行使、相続税評価、最終取得、会社の株主名簿を順に処理します。
相続開始だけで税務評価・遺産分割・株主名簿の全手続が自動完了するわけではありません。定款、株主名簿、遺言、決算書、相続人を確認し、共同相続なら会社法106条にも対応します。
最初に株式と会社の資料を確定する
- 定款、株主名簿、株券発行会社かどうか
- 被相続人の株式数、種類株式、議決権制限
- 直近3期の決算書・法人税申告書、会社資産・負債
- 遺言書、遺産分割協議、相続放棄の有無
- 定款に相続人等への売渡請求の定めがあるか
申告書の別表や古い株券だけで現在の株主・株数を決めず、会社の原始資料と相続資料を照合します。
共同相続中は会社法106条を確認する
複数の相続人が株式を共同相続すると、遺産分割まで株式は準共有となります。会社法106条により、共有者は権利行使者1人を定め、会社へ通知するのが原則です。
最高裁平成27年2月19日判決(平成25年(受)650号)は、指定・通知がなく、民法上の共有規律にも従わない議決権行使は、会社が同意しただけでは適法にならないと判断しました。裁判所公開判決で射程を確認できます。
遺産分割で最終取得者を決める
遺言で取得者が定まる場合を除き、相続人全員の遺産分割協議、調停・審判等で最終取得者を決めます。株式を後継者に集中させ、他の相続人が代償金や別財産を取得する方法もありますが、代償金の資金、遺留分、相続税を同時に検討します。
会社経営上の議決権、遺産分割上の帰属、相続税評価額、当事者間の売買価格は別の論点です。相続税評価額がそのまま会社の買取価格になるとは限りません。
相続取得と譲渡承認・売渡請求を混同しない
譲渡制限株式を相続で取得することは、売買等の譲渡に対する承認手続と同じではありません。ただし、定款に定めがある会社は、会社法174条以下により相続人等へ株式の売渡しを請求できる場合があります。
会社側には株主総会決議、請求期限、価格協議、価格決定申立て等の手続があります。「会社が自由に没収できる」「相続人は必ず株主として残れる」と断定せず、定款と手続を確認します。
会社へ書類を出して株主名簿を整える
最終取得が決まったら、会社所定の届出、戸籍または法定相続情報一覧図、遺言書・遺産分割協議書、印鑑証明書等を提出し、株主名簿の名義を書き換えます。必要書類は会社と取得原因で変わります。
株券発行会社で実際に株券が発行されている場合は、株券の確認・提出等も必要です。代表取締役や取締役の地位は株式とは別なので、役員変更登記を別途判断します。
相続税は死亡日時点の非上場株式を評価する
国税庁No.4638は、取引相場のない株式を、取得者が同族株主等か、それ以外かによって、原則的評価方式又は配当還元方式で評価すると説明しています。額面、資本金、直近売買価格だけで決まりません。
取引相場のない株式の評価明細書を用い、会社規模、純資産、利益、配当、類似業種、株主構成等を確認します。共同相続株式の争いは非上場株式の準共有、少数株主権は少数株式を相続した場合も参照してください。
よくある質問
相続した非上場株式は会社の承認が必要ですか
通常の譲渡承認と相続による一般承継は区別します。ただし定款に定めがあれば、会社法174条以下の売渡請求を受ける場合があります。
遺産分割前に議決権を使えますか
共同相続なら会社法106条の権利行使者指定と会社への通知、共有持分による決定を確認します。相続人1人だけの判断で当然に行使できるとは限りません。
相続税評価額が会社の買取価格ですか
同じとは限りません。相続税評価、遺産分割上の評価、会社法上の売買価格は目的と手続が異なります。
株式を相続すれば代表取締役にもなれますか
株主と取締役・代表取締役は別の地位です。定款、株主総会・取締役会等の選任手続と役員変更登記を別に確認します。
※本記事は一般的な情報提供です。株式の帰属、会社手続、定款、売渡請求、役員変更、相続税評価は会社と相続の状況で変わるため、弁護士・税理士等へ確認してください。



