おひとりさまの相続対策。遺言・任意後見・死後事務を準備

おひとりさまの相続対策|遺言・任意後見・死後事務の準備

おひとりさまの相続対策は、まず法律上の相続人を確かめる。そのうえで、生前の支援と財産管理、死亡後の財産の引継ぎ、葬儀や契約の整理を分け、誰へ何を頼むか決める。

一人暮らしでも、子、父母、兄弟姉妹等が相続人となる場合がある。「おひとりさま」は、法律上の相続人の区分ではない。

一人暮らしの佳代は、亡くなった後の手続を、友人の沙織に頼みたい。弟の和也とは疎遠だが、連絡先は分かる。

沙織は相談には乗りたい。だが、財産整理や葬儀まで引き受けられるかは、分からないと答えた。以下は説明用の架空の人物だ。

一人暮らしでも、まず法定相続人を確認する

法律上の配偶者、子やその代襲者、父母等の直系尊属、兄弟姉妹等を、順位に沿って確かめる。直系尊属は、父母や祖父母等、自分より前の世代の直系の親族だ。

離婚した元配偶者は、その関係だけでは相続人にならない。一方、法律上の子との親子関係は、離婚だけではなくならない。

未婚、子がいないという言葉だけで、相続人がいないとは決めない。

子・その代襲者がおらず、父母等の直系尊属もいない場合等に、兄弟姉妹が相続人になる。

先に亡くなった兄弟姉妹の子である甥・姪が、代わって相続することもある。ただし、その甥・姪の子へは、さらに代襲しない。

今連絡を取っているかと、法律上の権利があるかは、別に調べよう。

佳代は、和也と疎遠だから相続人ではないと思っていた。

だが、配偶者、子・代襲者、直系尊属がおらず、兄弟は和也だけという仮定なら、弟が法定相続人になる。

沙織は、友人というだけでは相続人にならない。戸籍、家族関係、本人の意思をそろえて考える。

内縁や婚姻していないパートナーへ残したい場合も、婚姻している配偶者と同じ法定相続の扱いになるとは限らない。遺言による遺贈(遺言で財産を渡すこと)、贈与、保険等を条件に応じて検討する。準備の全体像は生前の相続対策を参照してほしい。

財産・借金と、生活用の現金を一覧に

預金、不動産、証券、保険、貸付金等と、借入れ、保証、未払金を分けて記録する。

所在地、名義、金融機関、契約番号、資料の保管先、確認日も書こう。税の評価額、売却見込額、口座にある現金は、同じ数字ではない。

デジタルの記録も、ネット銀行・証券・暗号資産と、有料サービス・通信契約等を分ける。全部が同じ方法で、遺産として引き継がれるわけではない。

アカウントの存在と、正式な請求手続が分かる記録を残そう。暗証番号を、必要以上に多くの人へ知らせない。

説明用に、佳代の預金を2,500万円とする。生活・介護等の予備に1,500万円を残すなら、予備を除く分は1,000万円だ。

ここから生前に500万円を寄付する案なら、使い道が未定の分は500万円になる。

税金や今後の収支を省いた仮定であり、1,500万円で一生足りるという試算でもない。先に自分の生活と、不測の出費を確かめよう。

寄付の前に、自分の生活費を分ける

佳代の預金が2,500万円という仮定で、生活・介護用の予備を先に分けて考える。

先に残すお金

預金:2,500万円
生活・介護用の予備:1,500万円
↓
予備を除くと1,000万円

予備は、まだ支払っていない。自分の生活のために、預金で残す額だ。

今、500万円を寄付する案

予備を除いた分:1,000万円
生前の寄付:500万円
↓
使い道が未定の分は500万円

寄付後の預金そのものは、予備を含む2,000万円となる。

税金や今後の収入・支出を省いた仮の計算だ。1,500万円で一生足りるという試算ではない。死後の遺贈とは分け、先に生活と不測の出費を確かめよう。

死後に遺贈する希望なら、今の預金額を固定して、約束したとは考えない。亡くなった時の財産、借金等の債務、費用から調べる。

誰に残すかを考えることと、今使える現金を他人へ渡すことは、違う。

遺言で、死後の財産の行き先を決める

法律どおりの相続だけでは、希望する友人や団体へ財産が渡らない場合がある。遺言は、死亡後の財産の引継ぎ先等を決める制度だ。

誰へ何を渡すか、受取人が先に亡くなったらどうするか、最後に残る財産や遺言執行者等を考える。遺言執行者は、遺言を実行するための手続をする人だ。

団体へ遺贈するなら、受入れの可否、正式名称、不動産等の扱いも確かめよう。

自筆証書遺言は、本文・日付・氏名を自分で書き、押印する等の方式が必要だ。

添付する財産目録は、自筆以外も認められる。ただし、各ページの署名押印等の条件がある。

法務局の保管制度を使えば、紛失等に備えられ、保管された遺言は検認が不要になる。だが、内容の有効性が、すべて保証されるわけではない。

公正証書遺言は、公証人が関わり、原則、証人二人等の方式で作る。原本等が保管され、検認は不要だ。

費用は財産額だけでは決まらない。受取人ごとの計算、加算、書面等でも変わるので、見積りを確かめる。

どちらの方式でも、本人の判断能力、内容、実行する人を確かめたい。

佳代は、沙織を遺言執行者にする案も考えた。だが、友人が必ず引き受けられるとは決めない。

専門家へ頼む案も、仕事の範囲、報酬、連絡、辞退や交代への備えを比べる。

兄弟姉妹に遺留分はない。遺留分は、一定の近い家族に保障された最低限の取り分だ。子や父母等が相続人になる事情があれば、遺留分も調べる。

準備の順序は相続対策を何から始めるかで確認できる。遺言の作成だけで、生前の支払やすべての亡くなった後の実務を任せられるわけではない。

任意後見で、判断能力の低下に備える

入院や判断能力の低下で、預金管理や施設の契約等を、自分で進めにくくなることがある。

任意後見は、十分な判断能力があるうちに、将来任せる人と仕事を、公正証書の契約で決める制度だ。

本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から、効力が生じる。

契約しただけで、任意後見人がすぐ全部の事務を代理できるわけではない。

何を任せるか。誰が状態の変化に気付き、申立てにつなぐか。受任者と監督人の報酬、記録、報告も確かめよう。

日常の支援、財産管理の委任、法定後見が必要になる場合等との関係も、整理する。

認知症という診断名だけで、契約や遺言の可否が、一律に決まるわけではない。だが、その行為を理解し、判断する能力は必要だ。

沙織が友人として手伝うことと、法律上の代理権を持つことも分ける。佳代は、無理に引受けを頼む前に、必要な支援を書き出すことにした。

死後事務は、内容・費用・残金を確認

葬儀・納骨、関係者への連絡、住居・施設の退去、公共料金や契約の整理等を、死後事務委任契約で頼む場合がある。

遺言執行とは、同じ仕事ではない。任意後見とも、対象の時期が違う。

契約があっても、届出できる人の資格や、事業者の手続条件を超えて、何でもできるわけではない。

頼む仕事、頼まない仕事、連絡方法、緊急時の対応を確かめる。実費、報酬、預けるお金、精算、残金の返還先、報告先も決めよう。

依頼先が続けられなくなった場合や、自分が解約する場合の扱いも大切だ。

財産を残す相手が、費用を管理し事務を実行する人でもあるなら、利益がぶつかるおそれも考える。

例えば、費用として100万円を預け、実際の対象費用が80万円だったら、残る20万円をどう精算し返すかまで確かめる。100万円は相場ではなく、説明用だ。

費用の支払を、寄付や遺贈と混ぜない。使途と残高が分かる仕組みにしよう。

自分の全財産を依頼先が自由に処分できる契約を、内容が分からないまま結ばない。

消費者庁は、サービス内容と支払えるだけのお金があるか等を確認するよう案内している。契約の比較には高齢者サポートサービスの注意点とチェックリストも参照できる。沙織は緊急連絡先を担えるかを考え、財産管理や費用の預託は別に専門家へ相談することにした。

相続人がいない時も、清算等が必要

相続人がいるかどうか明らかでない場合は、利害関係人等の請求で、家庭裁判所が相続財産清算人を選ぶ手続がある。

借金の支払等の清算や、相続人を捜す公告等を進める。債権者は支払等を求める権利がある人、受遺者は遺言で財産を受け取る人だ。

親族と疎遠なだけで、相続人が明らかでないことにはならない。

相続人がいないと確定し、清算後にも財産が残る場合等は、特別縁故者が家庭裁判所へ分与を求められる。生計を共にした人、療養看護に努めた人等が対象だ。

申立ては、相続人を捜す公告の期間満了後3か月以内等の条件がある。

自動的な相続権ではなく、希望額が必ず認められる制度でもない。残る財産の国庫帰属等は、その後の問題になる。

佳代は「友人が面倒を見たら自動的に受け取れる」とは考えず、希望する引き継ぐ人を遺言で検討することにした。現在の預金2,500万円だけで計画を固定せず、生前の支援、亡くなった後の引継ぎ、費用の精算を分けて相談する。準備に使える時間の意味は相続対策を早めに始める理由も参考になる。

ほかにも確認する手続がある場合は、生前の全体計画の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

一人暮らしなら法定相続人はいませんか?

子、父母等、兄弟姉妹や代襲者が相続人となる場合がある。一人暮らしかという事実と、法律上の家族関係・順位を分けて確認する。

友人へ財産を残すには何を検討しますか?

遺言による遺贈、生前贈与、保険等を、本人の生活、契約、税、遺留分と合わせて比較する。友人はその関係だけで法定相続人にはならない。

遺言で葬儀や退去まですべて任せられますか?

財産承継の執行と死後事務は区別する。依頼する範囲、必要な権限、費用の預託・精算、報告先等を別に確認する。

任意後見契約を結べば直ちに代理してもらえますか?

任意後見は、本人の判断能力が不十分となり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じる。開始前の支援や管理は別に確認する。

相続人がいない人の財産はすぐ国庫へ帰属しますか?

清算、相続人捜索、特別縁故者への分与等の手続を経て最後に残った財産の扱いを判断する。特別縁故者への分与も当然の権利ではなく、申立てと裁判所の判断が必要だ。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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