タワーマンションの相続税評価では、建物と敷地の持分を分け、2024年以後の居住用区分所有財産の補正を確認する。売却価格の60%を直接申告する制度ではなく、築年数等の四要素から計算する。
架空の家族で考えよう。父を亡くした直人は、父の高層マンションを引き継ぎたい。妹の絵美は「査定が1億円なら、相続税の評価は6,000万円では」と思った。
母の昭子は、住み続けるか、生活費のために売るかで迷っていた。
税を計算する評価額、売却査定、家族で分けるための価額、使える現金は、別々に調べる。
マンションを持つというだけでは、評価額も、誰が受け取るかも決まらない。
この記事は、相続等で取得した居住用の区分所有財産について、土地と建物の評価を順に確かめるための説明だ。これから買うか迷っている場合の住まい・借入れ・手元資金の比較は、マンション購入前の家族の資金計画で分けて考えよう。
対象は、高層マンションだけではない
2024年1月1日以後に、相続・遺贈・贈与で取得した一定の居住用区分所有財産に、新しい評価の取扱いがある。
遺贈は、遺言で財産を渡すことだ。区分所有財産は、マンションの一室と、その敷地の権利等を指す。
根拠は2023年9月28日付の国税庁個別通達であり、購入日だけで対象かどうかを決めない。
居住用の専有部分と、その敷地の権利について、区分所有補正率を調べる。これは、従来の評価額へ掛ける率だ。
「タワーマンション」という名前や、二棟以上あることが条件ではない。中低層の分譲マンションも、対象になる場合がある。
対象外となるものもある。例えば、区分建物の登記がない一棟所有の賃貸マンション、地階を除く総階数が2以下のもの等だ。
居住用の専有部分が3室以下で、その全部を区分所有者や親族の住居に使うもの等も、対象外になる。
事業用テナント等の居住用以外のものや、たな卸商品等にも適用しない。たな卸商品は、販売目的で持つ物件等のことだ。
まず登記、用途、専有部分等を確かめ、それから算式を使う。補正の対象かと、相続税申告が必要かも、別に判断する。
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補正前の家屋と土地を、それぞれ評価する
一般的な自用の家屋部分は、固定資産税評価額に1.0を掛ける。自用とは、自分で使うことだ。
土地部分は、敷地全体を路線価方式・倍率方式等で評価し、登記等にある敷地権割合や共有持分を反映する。持分は、共有財産に対して、それぞれが持つ権利の割合だ。
敷地権割合は、登記にある割合を確かめる。「専有面積÷一棟の床面積」で、必ず求められるとは考えない。
住戸の専有面積、敷地面積、敷地権割合は、別々の項目だ。
路線価方式なら、敷地全体の奥行や、接する道路等も調べる。路線価×土地面積だけで、常に終わるわけではない。
家屋も、固定資産税評価額と、通知書の税額や課税標準額を取り違えない。
その後、対象の家屋と土地の両方に、区分所有補正率を反映する。片方だけを補正するのではない。
貸している場合の評価や、土地の特例は、補正後の価額を基に検討する。
四つの要素で、二つの計算値を求める
評価乖離率は、下のA〜Dを使い「A+B+C+D+3.220」で求める。評価水準は、その逆数の「1÷評価乖離率」だ。
名前は難しいが、所定の要素から出す計算値である。実際の売却査定を、従来の税評価で割って使う数字ではない。
- A:一棟の築年数×マイナス0.033。
- B:一棟の総階数指数×0.239。
- C:住戸の所在階×0.018。
- D:敷地持分狭小度×マイナス1.195。
総階数指数は、地階を除いた総階数÷33で、上限を1にする。
敷地持分狭小度は、敷地面積に敷地権割合等を反映した面積を、専有部分の床面積で割る。住戸の広さに対し、土地の持分がどれほどかを表す。
築年数の端数、総階数指数、B・D、敷地利用権の面積等には、決められた端数処理がある。
メゾネットは低い所在階、地下の住戸は零階とする等の細部も確かめる。途中で自己流に四捨五入すれば、結果が変わることがある。
絵美は、査定額を使わずに補正することが意外だった。直人も、階数だけでなく、築年数や土地の持分が必要だと分かった。
販売当時のパンフレットだけでなく、現在の登記と評価資料も集めることにした。
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評価水準の三つの区分で、補正率が決まる
| 評価水準 | 基本の区分所有補正率 |
|---|---|
| 0.6未満 | 評価乖離率×0.6。 |
| 0.6以上1以下 | この取扱いによる補正なし。 |
| 1を超える | 評価乖離率。 |
全部の対象マンションで、評価額が上がるわけではない。
評価水準が0.6以上1以下なら補正せず、1を超えれば評価乖離率を使う。評価乖離率が零か負数なら、評価しない取扱いもある。
一棟の全専有部分と敷地を、いずれも単独で所有する場合は、土地の補正率を1未満にしない取扱いがある。
家屋側には、この下限がない。土地と家屋で、例外の扱いも同じとは限らない。
評価水準0.6は、その住戸の実売価格の60%を保証する意味ではない。
「査定の6割を申告すればよい」「購入額の4割には必ず税金がかからない」とは結論できない。
国税庁の計算例で、補正の段階を確認する
国税庁No.4667には、家屋400万円、土地持分1,050万円を補正する例がある。
11階建ての3階の例であり、超高層だけの取扱いではないと分かる。
その例は、築27年、総階数11階、所在階3階、専有部分60平方メートル、敷地3,500平方メートルだ。
敷地権割合は1,050,000分の6,300で、敷地利用権の面積は21平方メートルになる。
所定の端数処理後の値は、Aがマイナス0.891、Bが0.079、Cが0.054、Dがマイナス0.419だ。
合計に3.220を足すと、評価乖離率は2.043。その逆数の評価水準は約0.4895で、0.6未満になる。
そこで補正率は、2.043×0.6=1.2258となる。
- 家屋部分:400万円×1.2258=490万3,200円。
- 土地持分部分:1,050万円×1.2258=1,287万900円。
- 合計:1,777万4,100円。
補正前の合計1,450万円との差は、327万4,100円だ。財産価額の差であり、相続税が同額増える計算ではない。
直人家の高層住戸へ、この1.2258をそのまま使うこともできない。自分の資料の四要素で計算する。
小規模宅地等の特例は、土地だけ判定
一定の自宅等の敷地を引き継ぐ時は、特定居住用宅地等の特例も検討する。
330平方メートルまで80%減額するが、区分所有補正後の対象土地について判定する。家屋まで、一律80%減らす制度ではない。
配偶者には、取得者本人の居住・保有継続条件がない。一方、所定の同居親族には、申告期限までの居住・保有等の条件がある。
別居親族にも、別の複数条件がある。亡くなった人や相続人が住んだことだけでは、確定しない。
国税庁の例の土地持分1,287万900円について、全体が特例の対象で、全部の条件を満たすと仮定しよう。
80%減額後は、257万4,180円だ。家屋490万3,200円は、この減額の対象ではない。
実際には、面積、用途、持分、ほかの宅地との選択も確かめる。
昭子が取得する案と、直人が取得する案では、特例の条件も、住まいと資金の計画も違う。
税額だけで名義を決めず、母が売りたいか、住みたいかも確かめよう。
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納税資金と、分割で使う価額を整理
税の計算と並べ、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険、借入れ等の支出を調べる。
資産価額が高くても、持っている間に現金が入るとは限らない。売るなら、時期、費用、税を含めて手取りを試算する。
直人が取得して、絵美へ代償金を払う案もある。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。
その額を税評価へ自動的に合わせず、家族で使う価額と支払方法を話す。同じ預金を、納税と代償金の両方へ二重に見込んでいないかも調べよう。
直人がマンションを取得する案で、支払に使える預金を1,000万円と置く。直人が払う相続税は全財産・控除等を含め別に計算して200万円、絵美へ払う代償金は合意案で900万円とする、説明用の仮定だ。
相続税:200万円
代償金:900万円
↓
必要な現金は1,100万円
200万円は、このマンションの価格へ一定率を掛けた計算ではない。
必要額:1,100万円
預金:1,000万円
↓
不足は100万円
ほかの入金や支出はない仮定だ。税の評価額が分かっても、この不足は埋まらない。
支払の時期や分割案を、確保できる現金と一緒に考えよう。管理・修繕費や生活費等も、実際には別に確認する。
相続税の申告・納付は、原則、相続開始を知った日の翌日から10か月以内だ。分割が済まなくても、自動的には延びない。
未分割での申告・納付、後から土地の特例を使うための分割見込書や、更正の請求等を管理する。更正の請求は、多く申告した税額等を直すよう税務署へ求める手続だ。
特例で初めて税額がゼロになる場合も、申告が必要だ。
申告後なら、自由に取得者を変えたり売ったりできるとは考えない。特例の継続条件や、権利と税への影響を確かめる。
評価に疑問がある時は、計算と手続を確認
自分の試算に疑問があれば、対象の判定、資料、四要素と端数処理を、税理士等に確かめる。
自己申告の計算と、税務署の更正処分等への不服申立ては、別の問題だ。
税務署の処分を争う時は、通知と理由を読み、再調査の請求や審査請求等を検討する。
再調査の請求、または再調査を経ない審査請求は、原則、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内だ。再調査後の審査請求は、原則、決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内となる。
話合いを続けるだけでは、延びない。自分が出した修正申告は、税務署の処分とは区別する。
最高裁2022年4月19日判決も、査定を示せば、好きな価額へ変えられるとしたものではない。
通達評価と鑑定評価の差だけでなく、その事案の購入・借入れや、税負担が軽くなる効果等を踏まえた判断として読もう。
資料をそろえ、家族の希望を確かめる
- 登記事項証明書で家屋と敷地権・持分を確認する。
- 固定資産税評価資料と死亡年の路線価図等を集める。
- 築年数、階数、面積を確認し補正率を計算する。
- 補正後の土地について特例の条件を受け取る人別に確認する。
- 他の財産等を含む税額、生活費、納税と代償金の資金を比較する。
直人と絵美は、計算の根拠を共有し、昭子の住まいの希望を聞くことにした。
税評価だけが、住戸を取る人を決める基準ではない。家族の権利と支払額を確かめ、実行できる分割案へつなげる材料だ。
全体は不動産評価の補正・特例、国外は海外不動産の相続税評価も参照したい。算式と計算例は国税庁No.4667にある。
ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
新しいマンション評価はいつからか
2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した一定の居住用区分所有財産について確認する。購入年だけで決めない。
すべてのマンションで評価額が上がるか
対象外のものや、補正しない場合、下がる場合もある。対象判定と四要素から求めた評価水準により確認する。
小規模宅地等の特例も使えるか
補正後の土地部分を基に用途・取得者・面積、分割と申告等を確認する。建物を含む全体へ80%減額する制度ではない。
分割が終わらないと申告を待てるか
通常の10か月期限は自動的には延びない。未分割申告と納付、後の特例を使うための決められた手続を確認する。
評価に納得できないときはどうするか
自己計算の確認と税務署の処分に対する不服申立てを区別する。資料と計算を確認し、処分があれば通知・理由と手続の期限を確認する。



