日常の礼拝に使う墓地・墓石・仏壇・仏具などは、原則として相続税の非課税財産となる。ただし、商品や骨董品、投資の対象として所有しているものは別に判断する。純金製や高額という理由だけで、自動的に課税・非課税を決めることはできない。
架空の家族で考えよう。父の清志は、生前に墓と仏壇を整えたい。長男の大輔は、「節税になるなら立派なものを買おう」と言い、長女の美穂は、母の介護費を残す方が先ではと心配した。
母の和子は、日常のお参りと管理を、自分が続けられる形を望んでいた。
課税される財産をどれだけ減らすかだけでなく、実際にどんなお参りをするのか、生活資金を残せるか、誰が管理するかも一緒に考える。
墓・仏壇が非課税になる理由
相続税法では、墓所、霊びょう、祭具等を非課税としている。墓所は墓地等、祭具は仏壇等の道具を指す。
墓や日常のお参りに使うものを、生活費に換える財産と同じように扱わないための、国民感情や社会的な配慮に基づく制度だ。
国税庁の案内では、墓地・墓石のほか、日常のお参りに使う神棚、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具等が挙げられている。
ただし、売るための商品、骨董品や投資の対象として持つものは含まれない。
「その財産に相続税がかからない」ことと、「かかった費用を遺産総額から引ける」ことは違う。
墓や仏壇の購入費を、後から葬式費用として全部引けるという意味ではない。
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金製でも、用途と使い方を確かめる
金製や高額という理由だけで、一律に非課税の対象から外す規定ではない。
誰が何のために買い、どこに置き、どう使っていたかを確かめる。
同じ仏像でも、仏壇に置いて日常のお参りに使う場合と、金相場の値上がりを期待して買い、保管庫に投資資産として置く場合では、判断の前提が違う。
形が仏像であることや、店が「節税向け」と表示することだけでは決められない。
取得時の契約書・領収書、商品説明、保管場所や使用状況を整理する。判断が難しい高額品や美術品等は、課税対象から外す前に、資料を示して税理士や税務署へ確認したい。
大輔が提案した高額な金製仏具について、美穂は「父母が使う必要があるのか」を確認した。税の分類を先に決めず、清志と和子が実際に望む礼拝の形から考えることにした。
生前の購入と、死後の購入を分ける
故人が生前に取得していた墓・仏壇等で、非課税の条件を満たすものは、相続税を計算する財産の価格に入れない。
一方、死後に家族が買っても、死亡日にあった預金等をさかのぼって非課税の財産に変えられるわけではない。
日常のお参りに使い、非課税の条件を満たす墓・仏壇等を考える説明用の例だ。相場や、勧める購入額ではない。
預金300万円を使って購入。亡くなった時に、その墓・仏壇等を持っている。
条件を満たす財産は、相続税の計算に入れない。
亡くなった時には、預金300万円が残っている。
後で購入しても、その日の預金の評価額を購入額だけ減らすことはできない。
購入額300万円=節税額ではない。墓地・墓石等の購入費を、葬式費用として差し引くこともできない。手元の生活・介護資金が減ることも含めて考える。
図の300万円は、仕組みを示す仮定だ。相場や勧める額ではない。
そもそも財産の価格が、相続税の計算で差し引く「基礎控除」の範囲内なら、税を減らす効果がない場合もある。不要な高額品を税のために買えば、その額だけ生活に使える現金が減る。
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非課税の財産の未払代金は、控除できない
生前に買った墓・仏壇等の代金やローンが死亡時に残っていても、非課税財産に関する借金等は、相続税の計算で遺産総額から引けない。
財産そのものに税をかけず、その取得のための借金等まで、ほかの課税財産から引く扱いにはならないためだ。
例えば、非課税の条件を満たす仏壇等300万円を生前に買い、死亡時に未払代金100万円が残ったとする。
仏壇等が非課税でも、この100万円を自動的に債務控除へ入れることはできない。債務控除は、借金等を遺産総額から差し引くことだ。
税金の計算で引けなくても、契約上の支払義務はなくならない。誰がどう払うかを確認しよう。
契約書で、購入日、引渡し、支払いと、残っている代金を確かめる。
生前に注文しただけで、取得と支払いが全部終わったとは扱わない。予約金を払った場合や未完成の場合等は、死亡時にどんな権利と義務があったかから判断する。
お墓等を引き継ぐ人と、管理費を確認
家系の記録である系譜、祭具、墓などを引き継ぐ人は、通常の遺産分割とは別のルールで決まる。
故人の指定、慣習、必要な場合の家庭裁判所の判断等を確かめる。長男が必ず墓を引き継ぐとも、相続分の割合で墓を分けるとも限らない。
墓地の使用規則と、管理する人を引き継ぐ手続も調べる。「永代使用」は、土地を自由に転売できる所有権と同じとは限らない。
施設ごとに、使える人の条件、届出や管理料がある。墓が相続税の非課税財産であることと、今後の管理費がいらないことは別だ。
清志たちは、遠方に住む大輔だけに任せる案と、和子が通える場所で家族が協力する案を比べた。
購入費だけでなく、管理を続けられるか、移動の負担、将来のお墓の引越しである「改葬」への希望も話し合おう。
資料を集め、申告が必要か調べる
まず、墓・仏壇・仏具等の一覧を作り、購入資料、使っている状況、残る代金の資料をまとめる。
投資品や骨董品としての課税財産と、日常のお参りに使う非課税財産を分けて確かめる。
非課税の墓等を持っていただけで、必ず相続税の申告が必要になるわけではない。
課税される全財産、保険金等のみなし相続財産、借金や葬式費用、加算する贈与等を調べる。その上で、基礎控除の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と比べる。法定相続人は、法律で相続人になると決まる人だ。
申告が必要なら、最新の申告書と手引で、書き方と資料を確かめる。
全ての墓や仏壇を非課税財産の欄に書かなければ非課税にならない、という一律の条件はない。課税されるか迷う財産を、資料を調べずに一覧から消さないことが大切だ。
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清志と和子は、生活・介護に残す資金を先に確認し、実際に使い、管理できる範囲で墓と仏壇を検討することにした。大輔と美穂も、支払額と税額の差を区別して考えたい。非課税の範囲は国税庁No.4108、未払代金の扱いはNo.4126で確認できる。
ほかにも確認する手続がある場合は、相続税の申告・納付・調査の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
墓地や墓石は相続税の非課税対象か
墓地・墓石や日常礼拝に使う仏壇・仏具等は原則として非課税となる。商品、骨董品や投資の対象として所有するものは除かれる。
相続後に仏壇を買えば預金の相続税評価を減らせるか
亡くなった時の預金を遡って非課税財産に置き換えることはできない。相続後の仏壇購入費は、通常の葬式費用控除とも区別する。
生前購入した仏壇の未払代金は控除できるか
非課税財産に関する未払代金等は、相続税の遺産総額から差し引けない。税の控除がないことと、契約上の支払義務が残ることは別である。
純金製の仏像は税金がかかるか
素材や価格だけでは決まらない。日常礼拝に使うものか、商品・骨董品や投資対象として所有しているものか、取得目的と使用実態等から確認する。
非課税の祭祀財産があれば必ず申告が必要か
それだけでは申告義務は生じない。課税財産全体から申告が必要かどうかを確認し、申告する場合は現行の様式と手引に沿って扱う。資料と判断の根拠は整理しておく。



